【Vol.396】QUASIMIDI QUASAR(クアザール) ~独フランクフルト生まれの個性派音源[1994年]
2018/11/28
今回ご紹介する機材は、QUASIMIDIというドイツのメーカーが1994年に発売した「QUASAR(クアザール)」という2Uラックサイズのシンセサイザーです。デジタルシンセであり当然MIDIも装備。国内定価は220,000円(税別)でした。
QUASIMIDIといえば90年代にちょっとだけ存在した幻?のメーカーということで、本ブログでも「Rave-O-Lution 309」という個性派マシンを取り上げたことがありますが、このQUASARもなかなかの個性を持ったシンセサイザーと言えるでしょう。
関連記事:「QUASIMIDI Rave-O-Lution 309 ~“革命的”・RAVEマシン!?[1997年]」
内蔵音源
「M.A.S.S.(マルチ・アルゴリズム・サウンド・シンセサイズ)」という、次世代の新方式音源を採用。
これは何かと言うと、従来のPCM方式の音源(+デジタルフィルター)に加え、FM波形、加算方式(アディティブ・シンセシス・アルゴリズム)を装備した(組み合わせた)ものだそう。なお加算方式は要するにオルガンのドローバーをシミュレートしたものだそうです。
最大同時発音数は24音で、16マルチ・ティンバー機として動作させることができます。
QUASIMIDI QUASAR/(株)ソニックインターナショナル 雑誌広告より画像引用
内蔵音色
64MBのROM(※当時としては大容量)に内蔵されているプリセット音色は全1,024音。音色は生楽器系からピアノ、オルガン、エレピ、アナログシンセ、謎のSE?など実に様々。
どちらかというと70~80年代のヴィンテージ・アナログ・サウンドが特に充実しているといった印象でしょうか。しかもプリセット名はMOOGやらPROPHETやらOBERHEIMやらARP、あるいはJUPITER、JUNOなど、他社メーカー(あるいは他社製品)の名前が堂々と採用されているところが特徴的ですね。商標的な問題は大丈夫だったのでしょうか。そして何といっても本機プリセットの “変なSE音”は有名だったみたいですね。。
これらプリセット・サウンドは、パネル上のボタン/ダイヤルなどにより簡単にパラメーター変更ができるようになっています。ただしフィルターなどの音色エディットはあまり細かく行う(行える)といった感じではなく、どちらかというとプレイバック・サンプラーに近い作りの印象です。まあ当時1,000プリセットを超すシンセも珍しかったですし、プリセットだけでも十分だったのかもしれません。
実はGM対応なんすよ
見落としがちですが本機はGMにも対応していました。まあ要するにRolandのSC(サウンドキャンバス)シリーズやYAMAHAのMUシリーズなどと同様に、DTM音源用としての使用もできたということですね。GM用128プログラム+10種類以上のドラム・セットを内蔵していました。出音の方は… すみません未確認です(汗)
アルペジエーター搭載
あと、この頃のデジタルシンセ(特にラックもの)としては珍しくアルペジエーターが搭載されています。 「アルペジエーター」といえば、簡単に言うと “コードを押さえた際、設定しておいたテンポとパターンに乗って分散和音(=アルペジオ)にしてくれる機能”のことですね。元々は70~80年代の一部アナログシンセに搭載されていた機能で、シーケンサーの発展と共に廃れ、しばらくシンセサイザーには搭載されなくなったという経緯があります。
このアルペジエーターはMIDIクロックで同期も可能なので使い勝手は悪くないと思います。このアルペジエーターを使ったミニマルっぽい音もプリセットに入っていますね。本機の開発担当者の中には、昔のアルペジエーター搭載シンセに強い思い入れを持っていたスタッフが居たのではと想像できます(笑)。まあ単純に、いわゆるテクノやミニマルミュージックが一部で流行っていたというのもあったかもしれませんが。。
内蔵エフェクター
本機は全50アルゴリズムを持つ独立した2系統のデジタル・エフェクターを内蔵。リバーブ等はもちろんのこと、ボコーダー、ワウワウ、リング・モジュレーターなど、アナログ的アプローチで活用できるエフェクターが揃っています。あとオルガン向けなのかロータリー・エフェクターも含まれていますね。
QUASIMIDI QUASAR/(株)ソニックインターナショナル 雑誌広告より画像引用
つぶやき的な
僕の記憶が正しければ、本機はQUASIMIDI社初の本格シンセサイザーだったと思います。まじめで堅実な国民性の(というイメージが強い)ドイツから放たれた一台ということで作りもまじめかと思いきや、(特にSEは)かなりぶっ飛んだ出音になっており、これはこれで意外性の高いシンセの代表といえるかもです(笑)
ジャーマンテクノポップの雄・クラフトワークを広告イメージに起用し、実際クラフトワークも本機を使用していたとのことですが、日本ではほぼ全くお目にかからなかったですねー。見た目の堅実さを裏切るかなり変態的な音が出る(らしい)ので、当時の国産のおとなしいシンセに飽きていたユーザーにとっては新鮮な一台に映ったのかもしれません。
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仕様
■音源方式:M.A.S.S.(Multi-Allgorithm-Sound-Synthesis)
■同時発音数:24音
■ティンバー数:16マルチティンバー
■波形メモリー数:1024
■エフェクト:50アルゴリズム、独立2系統デジタル・エフェクト・プロセッサ
■外形寸法:483(W)×88(H)×245(D)mm
■重量:2.8kg
■発売当時の価格:220,000円(税抜)
■発売開始年:1994年