【Vol.386】Roland VP-9000 ~【後半】2000年にリリースされた新時代・サンプラー
2018/11/28
さて前回の記事「Roland VP-9000 ~【前半】サンプラー?、否、“バリフレーズ・プロセッサー”です[2000年]」に引き続き、今回もローランドのバリフレーズ・プロセッサー(サンプラー)「VP-9000」についての記事を展開してみたいと思います。後半記事、さっそく書いてみましょう~
最大同時発音数は6音
本サンプラーは6音ポリフォニック。これは、当時のAKAIサンプラーの言ってみれば標準仕様「32ボイス」(※機種にもよるが)から見ると非常に少ないといった印象。リアルタイムで高速演算をこなすために多くのエンジン・パワーをそちらに奪われる仕様となったのでしょうか。。まあマルチティンバーとしてよりも、最初からシングル使いと考えておけばよいでしょう。
外部メディアについて
VP-9000では、当時電子楽器において “ポスト・フロッピーディスク”の筆頭だったとも言える「ZIP™ドライブ」を標準搭載。長年シンセやサンプラーの外部メディアとして支えてきた3.5インチFDですが、その頃の時代だとさすがに心もとない容量となっていました。
本機のZIP™ドライブでは100Mバイトと250Mバイトの両タイプに対応(※PC用としては750Mバイトというのもあった)。フロッピーディスクの実に70~170倍ですね!。余談ですが、当時のZIP™メディアって結構高価だったんだよね。。
ちなみにVP-9000にはUSB端子を備えていなかったため、PCとのデータのやり取りについてはこのZIP™ドライブを介して行うというのが一般でした。
内蔵エフェクトについて
リバーブ(3種)、コーラス(8種)、マルチ(40種)の3系統が別々に用意されており、アウトプットのルーティングも自在。本機の「マルチ」にはCOSMギター・アンプ・シミュレーターや、テープエコー・シミュレーターなど、結構面白いものが揃っていますね。
関連記事:「BOSS RT-20 ~COSM技術を採用した“光る回る”ロータリー・シミュレーター」
VP-9000, V-Producer/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
入出力端子について
出力は6マルチ・アウトとなっており、6パートを独立して出力させたり3系統のステレオ出力もできたりします。デジタルはオプティカル/コアキシャルのイン/アウトがそれぞれ用意されていますね。
さらにSCSI端子も標準で2つ装備。このSCSIにより、AKAIのS1000シリーズなどの波形も読み込むことができます。
関連記事:
「AKAI S1000(/S1000HD/S1000PB) ~ステレオサンプリングに対応した当時の…」
「AKAI S1000KB ~S1000のキーボード版(S1000 Ver2.0の補足もあり)」
その他
LCDは大型かつグラフィカルであり、直感的なオペレーションに対応。もちろんサンプル波形もこのLCDから視認でき、本体のみでの波形エディットも可能です。
またVP-9000で即戦力となる、エンコード済の専用サウンド・ライブラリー(フレーズ集)もいくつか発売されました。供給媒体はZIP™メディア、価格は各12,000円でした(VP-Z-01~06)。
ソフトウェア「V-Producer」(型名:VPD-1W)について
VP-9000の数か月後に発売された専用ソフト(Windows/Macintosh)。発売時の定価は39,800円でした。VP-9000をPCから機能的にコントロールできる統合ソフトウェアといったところです。
パソコンの広い画面上でピッチ、タイム、フォルマント、エフェクト等がマウスで軽快に操作でき、より直感的なトラック作りができるようになりました。また付属のエンコード・ソフト「V-Trainer」を使えば、あらかじめPC側で編集処理しておいたサウンドをVP-9000用のデータに一括変換することも可能。
まとめ的な
80年代中頃から各社様々な製品が投入され盛り上がったハードウェア・サンプラー市場ですが、2000年代に入り技術が進化して容量・機能的には円熟期を迎えようとしていました。まあサンプリング性能や内蔵メモリーが必要十分な水準に達してしまい、かえって他社製品との差別化が難しくなった時代とでもいいましょうか。今回のVP-9000はまさにハード単体のサンプラーとしては末期の部類といったところです。
ローランドさんも、従来の枠を超えた次世代のサンプラーということであえて “サンプラー”の語を使わなかった点において、音楽制作における新世代の到来を告げる製品だったのかもしれません。
なおその後のサンプラーはソフトウェアにその機能を持たせたり、あるいは統合型ワークステーションの一機能として組み込まれていき、AKAIやE-muに代表されるラック型ハード単体としては消えていったという感じですね。
VP-9000はのちに「V-Producer」がリリースされたことにより、よりPCとの連携が図られ、時代が単体ハード・サンプラーを必要としなくなったことを端的に表しているような気がしますね(後継モデルである「VariOS」ではさらにその傾向が進んだ)
つぶやきます
型名には同社の往年のボコーダー「VP-330」と同様に “VP”が冠せられています。というわけで僕は当初本機を『あー単体のボコーダーね。決して安くないし、今どき流行るのかい?』と勝手に思い込んでました(汗)。当時のメーカー広告やカタログには “サンプラー”なんてほぼ書かれてなかったし、フォルマント調整うんぬんなんて言われれば勘違いしちゃいますよね。。ローランドさん、紛らわしいっす(笑)
関連記事:「Roland VP-330 Vocoder Plus ~“TOKIO”な名機ボコーダー[1979年]」
仕様
■最大同時発音数:6音
■パート:1~6
■データフォーマット:16ビット・リニア(インポート時は16、8ビット対応)
■サンプリング周波数:
32/44.1/48kHz(サンプリングおよび再生時)
8/11/15/16/22.05/24/30/32/44.1/48kHz(インポート時)
44.1kHz(内部)
■インターナル・メモリー:パフォーマンス×1、フレーズ・マップ(各パートごとに12サンプル)、1,024サンプル、標準8MBウェーブ・メモリー(最大136MB)
■エフェクト:リバーブ(3種)、コーラス(8種)、マルチ(40種)
■信号処理:20ビット(AD/DA変換)、24ビット・リニア(内部処理)
■外形寸法:482(W)×87.8(H)×302(D)mm
■重量:5.4kg
■発売当時の価格:249,000円
■発売開始年:2000年3月