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2000年代~' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.385】Roland VP-9000 ~【前半】サンプラー?、否、“バリフレーズ・プロセッサー”です[2000年]

2018/11/28

 

 

 さて! 今回はローランドの “バリフレーズ・プロセッサー”「VP-9000」を取り上げてみたいと思います。発売当初の価格は249,000円。発売は2000年3月でした。知らない人にすればこの “バリフレーズ・プロセッサー”というのは何ぞや?といったところですが、早い話がサンプラーの一種ですね(電源を入れただけでは音は出ません)

 

Roland VP-9000

 

 当時の新テクノロジー・“バリフレーズ”を搭載し、サンプリングしたオーディオ・フレーズの「ピッチ(音程)」、「タイム(テンポ)」、「フォルマント」などをリアルタイムでコントロールできるということで、それまでのサンプラーに革命を起こしたと言ってもいいかもしれません。
 
 
 そんなVP-9000を、本ブログでは前後半2回の記事に分けて執筆してみたいと思います。では行ってみましょう~
 
 
 

“バリフレーズ”とは?

 同社独自のエンコーディング・テクノロジーにより、取り込んだオーディオ・フレーズから「ピッチ」「タイム」「フォルマント」という3要素を解析・抽出し、独立してリアルタイム・コントロールできる(ローランド独自の)技術のこと。
 
 
 これら抽出した3要素はパネル右上の3つのつまみで直接(かつリアルタイム)でコントロールが可能となっています。ではその “3本の柱”を個別に見て行きましょう。
 
 

①ピッチ/②タイム(テンポ)

 例えばサンプリングしたボーカルのピッチ(音程)を変えるとふつうは再生速度も変わってしまいます。本機VP-9000では、ピッチを上げ下げしても再生速度は一定にすることができました。
 
 
 昔からのサンプラー・ユーザーにしてみれば、『そんなの出来て当たり前じゃん!』という感じでしょうか。。だって普通サンプラーには「タイム・ストレッチ機能」が付いていましたからね。でもこのタイム・ストレッチ処理には結構な演算時間が掛かかりました。さらにタイム・ストレッチを行うと少なからず元データが破壊されニュアンスが損なわれるのが普通でした。
 
 
 その点、本機VP-9000では独自の非破壊技術および、ツマミによる(比較的自然な変化内での)リアルタイム・コントロールができるというのが強みでした。もちろんオリジナル波形から極端に離れるとある程度の音質変化は起こるので、100%追従するわけではないのですが。。
 
 

③フォルマント

 フォルマントとは、声のキャラクターを決定付けるスペクトル分布のこと。うーん…説明は難しいですが、要するに人声(ボーカル)のキャラクターをスムーズかつ音楽的に変化させることができるといったところです。まあ人声に限らず、音色の質やキャラクターを変化させることができるということで、普通に楽器音を取り込むのもありですね。なおコントロールは、パネル右上にある「FORMANT/GROOVE」つまみにて行います。
 
 
 音程も音の長さも変化させない状態で、男性のボイスを女性に変えたり、ロボットボイス風に変えることなどを可能にします。
 
 
 
ここまでをまとめると、、

・テンポを変えても音程は変わらない
・音程を変えてもテンポは変わらない
・音質(フォルマント)を変えてもテンポや音程は変わらない
・上記のコントロールがパネル上のツマミにてリアルタイムで行える

 といったところでしょうか。全く逆の発想で、元のサンプルからかけ離れた、想像もつかないフレーズを生み出すことも可能といったところです(→フォルマントのみを調整するとか)

 

 

 

バリフレーズの補足

 本機は前述した通り、タイムラグなしでリアルタイムに(かつ非破壊で)サンプルの伸長・縮小ができるのですが、これは最初に本体内でサンプルを “エンコード”することにより可能にしています。
 
 
 “エンコード”の作業自体はごくイージーで、基本的に、サンプルに適した3つのエンコード・タイプ(SOLO、BACKING、ENSEMBLE)の中から選ぶだけ。SOLOはボーカルなどの単音向け、BACKINGはドラムなどアタックの明確な楽器、ENSEMBLEはストリング・アンサンブルなどのサスティン系楽器に向いています。
 
 
 

サンプリング・スペック

サンプリングに関する仕様は以下のようになっています(標準状態)。

■データ・フォーマット:16ビット・リニア
■サンプリングレート:48kHz、44.1kHz、24kHz、22.05kHz、16kHz、15kHz、11kHz、8kHz
■サンプリングタイム:標準モノラル50秒(ステレオ25秒。最大拡張時14分10秒)
■メモリ:標準8MB(最大136MB)

 
 メモリは標準で8MB、また当時出回っていた汎用SIMMで136MBまで拡張可能ですが、64MBのSIMMは使えなかったみたいですね(32MBと16MBのSIMMは使用可。混在も可)。なおSIMMスロットは全4つで、取り付けは自分で行えます。
 
 

Roland VP-9000(advertisement)
VP-9000/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

ここまでのつぶやき

 90年代末までのサンプラー市場といえばほぼAKAI独壇場の時代ですよ。RolandもS-760(1993年)などで奮闘してはいましたが、ちょっと地味なイメージだった感は否めません。。でもでも、そこに来て新時代のこのサンプラーということで、本機発表当時は非常にインパクトが強かったことを回想します。
 
 
 関連記事:「Roland S-760 ~1Uサイズに凝縮された90年代の高性能サンプラー
 
 
 とはいえPCが一般家庭に急速に普及し、『これからはソフトウェアで何でもできるようになるんじゃね?』的な時代の空気感もあって、前評判通りのセールスには至らなかったのではと思われます。定価249,000円(後半の記事で触れる専用ソフトも含めれば約30万円)というのも、2000年代にしてはちょっと高いなーといった感じ。
 
 
 結果的には、後継モデルの「VariOS」にあっさりポジションを譲って消えていったというイメージです。。あと2年リリースが早ければ時代を作れたかもしれないのにね。
 
 
後半の記事→ 「Roland VP-9000 ~【後半】2000年にリリースされた新時代・サンプラー
 

仕様
■最大同時発音数:6音
■パート:1~6
■データフォーマット:16ビット・リニア(インポート時は16、8ビット対応)
■サンプリング周波数:
 32/44.1/48kHz(サンプリングおよび再生時)
 8/11/15/16/22.05/24/30/32/44.1/48kHz(インポート時)
 44.1kHz(内部)

■インターナル・メモリー:パフォーマンス×1、フレーズ・マップ(各パートごとに12サンプル)、1,024サンプル、標準8MBウェーブ・メモリー(最大136MB)
■エフェクト/リバーブ(3種)、コーラス(8種)、マルチ(40種)
■信号処理:20ビット(AD/DA変換)、24ビット・リニア(内部処理)
■外形寸法:482(W)×87.8(H)×302(D)mm
■重量:5.4kg
■発売当時の価格:249,000円
■発売開始年:2000年3月

 

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