1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.365】YAMAHA CS70M ~アナログCSシリーズ後期のトップエンド・モデル[1981年]
2018/11/28
今回取り上げるシンセサイザーは、1981年にヤマハから発表された「CS70M」という機種です。当時の定価は890,000円。
その頃の(8ビット)パソコンなどにもしばしば搭載されていたCPU(マイクロプロセッサ)を採用し、音色メモリーやリアルタイム・シーケンサー制御などが可能になりました。
【はじめに】「CS70M」、CSシリーズとしての位置付け
CS10などの記事でも触れましたが改めて記してみましょう。アナログシンセのCSシリーズは、以下大きく4つの世代に分類することができます。
第1世代:CS80、CS60、CS50(※1977年上期)
第2世代:CS10、CS30、CS30L(※1977年下期)
第3世代:CS5、CS15(※1978年)
第4世代:CS15D、CS20M、CS40M、CS70M(※1979~81年)
番外編:CS01(※1982年。ミニ鍵盤、小型スピーカー内蔵)
CS01II(※1983年。基本仕様はCS01に類似。日本未発売)
CS70Mはいわゆる第4世代であり、その中でも最も遅い1981年に発売。それまでのCSシリーズの技術を集約した集大成ともいえる後期モデルです。ちなみに末尾に「M」が付いているものは “音色メモリーができる”の意味ですね。
CS70M概要
6音ポリフォニックのアナログ・シンセサイザー。プログラマブルであり、本体内にオリジナル音色を30までメモリー可能。デジタルポリフォニックシーケンサーも内蔵した、CSシリーズの後期モデルであり当時の最高機種。ユニゾン・モードやキーボード・スプリットにも対応。
シンセサイザー部構成
1ボイスにつきVCO、VCF、VCAを2基搭載。本機は6ボイスなので、×2でVCO、VCF、VCAは各12系統となっています。EG(エンベロープ・ジェネレーター)も24系統。LFOは2基持っています。
ユニゾン・モードにすると、一つのキーに対して12のVCOが全て発音します。当時としては相当厚みのある音作りができたといったところですね。
音色メモリーについて
パネル上で作ったオリジナル・サウンドを30種類(15×2系列)メモリー可能。演奏する際もワンタッチでサウンドを呼び出しできるようになっています。またバックアップ電池を内蔵しているので、電源を切ってもサウンド・データは保持されます。
※CS70M(写真上段)/Wurly'sさんにて撮影
スプリット・モード
鍵盤の高音域と低音域に別々の音色をセットできる演奏モード。
本機でのキーボード・スプリット機能は、「高域側2音/低域側4音」と、「高域側4音/低域側2音」とに自由に切り替えられる方式を採用しています。さかい目となる “スプリット・ポイント”は任意に設定することができ、高域側/低域側の音量バランスも個別にとることが可能。
磁気カードリーダー搭載
本機の前面右側には磁気カードリーダーがあり、一度プログラムした音はサウンド・ライブラリーとして外部に保存が可能となっています。これは現代で言うところのUSBメモリーみたいな感じですね。カード1枚につき、2種類の音色をストア(保存)することができました。
CS70M, CS15D, CS01/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
デジタル・ポリフォニックシーケンサー装備!
演奏したメロディを即座に記憶・再生する機能。6音までのコード演奏がメモリー可能であり、152ステップ(※単音換算)×4バンク=608音のシーケンスを自動演奏させることができます。再生の際には微妙なテンポの調整やリピートなんかも可能。
この辺りは、当時のパソコン(CPU)にもよく使われていた内蔵のマイクロプロセッサ「Z-80」が頑張って制御してる感じですね。ただし本シーケンサーのテンポは外部機器に同期させることはできません。
謎の端子・「KEYCODE」について
本機のKEYCODE端子とは、リアパネルに装備されている24ピン仕様のコネクタのこと(※入力専用)。これは別のKEYCODE対応機種(具体的には同社のCP35とGS2など)とを専用ケーブルでつなぎ、出力側からの演奏情報を受け取って2台の楽器音を同時に鳴らすことができるというもの。
まあ言ってみればMIDIのはしりですね。出力側(CP35など)でドミソを弾くと、受信したCS70Mでもドミソが鳴るといった感じです。ただしMIDIのように細かな仕様として作り込まれていたわけではなく、基本的に “どのキーが押されたのか?”を受け取って符号化した簡単なものです。そして限られた機種間のみの接続にとどまりました。
CPはエレピ系であり、ポリシンセである本機CS70Mの音を重ねることにより、キャラクターの異なるサウンドをより厚く鳴らせたといったところでしょうか。MIDI以前の当時としたら、1台の鍵盤で他の楽器音も同時に鳴らせるということは画期的でした。
個人的つぶやき
まあ上記の他にも、豊富な内蔵エフェクト群とか充実した入出力端子の装備などなど、当時としては非常に贅を尽くした仕様の一台といった印象ですね。内部制御の核となったマイクロプロセッサ「Z-80」はPROPHET-5などでも採用されており、特に初期ポリフォニックシンセの発展・低価格化に大きく貢献しました。
CS70Mの定価89万円はアマチュアが気軽に手を出せる価格帯ではありませんでしたが、数年後のデジタルシンセの台頭により、80年代末にもなると結構手に入れやすくなっていたと回想します。特にDX7の登場(1983年)以降は、大柄で高価なアナログシンセは本機に限らず急激に陰に追いやられたという感じでしたね。。
音のキャラクターとしては、初期~中期CSに比べると若干洗練された印象でしょうか。荒々しさ・分厚さなどは第2世代のそれの方が強かったという話は聞きますね。CS70Mは音作りもちょっと複雑で、ややとっつきにくいというイメージがあります。
なおCS80ほどではありませんが本機も結構重量級の一台となっております(→本体28.8kg)。腰を痛める原因となるので、運搬する際は誰かに手伝ってもらいましょう(笑)
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「YAMAHA CS1x ~グルーヴィにつまみを回せ![1996年]」 →平成のCS
仕様
■鍵盤:61鍵
■最大同時発音数:6音
■オシレーター部:12VCO(※1音当たり2VCO)
■音色メモリー数:30メモリー(2系統)
■録音機能:ポリフォニック デジタルシーケンサー
■外形寸法:1120(W)×180(H)×500(D)mm
■重量:28.8kg
■発売当時の価格:890,000円
■発売年:1981年