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1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.310】YAMAHA CS15D ~プリセット+シンセサイザーのライブ向けキーボード[1979年]

2018/11/28

 

 

 今回ご紹介するシンセサイザーは、1979年にヤマハから発売された「CS15D」です。37鍵盤であり当時の定価は148,000円。モノフォニック(同時発音数1)ではありましたが、【DUAL CHANNEL SYNTHESIZER】と銘打たれていました。

 

YAMAHA CS15D

 

 前年(1978年)に発売されたCS15に「D」がくっついたモデル名であり、単なるCS15のマイナーチェンジ版かと思いきや、実は大胆な仕様変更が施されています。
 
 
 

【はじめに】「CS15D」、CSシリーズとしての位置付け

 CS10の記事でも触れましたが改めて記してみましょう。アナログシンセのCSシリーズは、以下大きく4つの世代に分類することができます。

第1世代:CS80、CS60、CS50(※1977年上期)
第2世代:CS10、CS30、CS30L(※1977年下期)
第3世代:CS5、CS15(※1978年)
第4世代:CS15D、CS20M、CS40M、CS70M(※1979~81年)
番外編:CS01(※1982年。ミニ鍵盤、小型スピーカー内蔵)
    CS01II(※1983年。基本仕様はCS01に類似。日本未発売)

 
 CS15Dはいわゆる第4世代ですね。ちなみに15Dと20Mと40Mは同時に発売されました。
 
 
 

CS15D概要

 「プリセット音源」と「モノフォニック・シンセサイザー」が合体した “デュアル・シンセサイザー”。
 
 プリセット・セクションは2系統(2チャンネル)に分かれていて、合計29のプリセット・トーンをボタン一つで選択・演奏することが可能。このプリセット音色を備えている点がCS15との大きな違いです。
 
 
 上記プリセット音色が基本的に “選んで鳴らすだけ”というのに対し、シンセサイザー・モードではマニュアルでの音作りが可能。基本構成は2VCO、2VCF、2VCA、2EG、LFOとなっており、モノ・シンセとして使用することができます。
 
 
 

プリセット・セクション

 木管、金管、弦楽器系などを中心に29種類の音色を内蔵。これらはチャンネル1(15種類)、チャンネル2(14種類)に分かれており、それぞれを組み合わせることによってサウンド・バリエーションが得られるようになっています。以下、パネル上の音色ボタンを手書きの図で補足してみたいと思いますよ。
 

YAMAHA CS15D(VOICE SELECTOR)

 

 上段がチャンネル1、下段がチャンネル2ですね。VOICE SELECTORの各ボタンには音色名が書かれています。

上段(チャンネル1) ※左から

●CLARINET●OBOE●FLUTE●TUBA●TROMBONE●HORN●TRUMPET●WOOD BASS●CELLO●VIOLIN●CLAV●HARPSICHORD●XYLOPHONE●COSMIC1●COSMIC2

下段(チャンネル2) ※左から

●WOOD WIND 1/2/3●BRASS 1/2/3/4●STRING 1/2/3●PERCUSSIVE 1/2/3●COSMIC3

 
 生楽器の音色名に混じって “COSMIC”というのがあるのがちょっと違和感ですね(笑)。これはいわゆる効果音系です。
 
 
 左側にはチャンネル間の音量バランスが調節できるスライダー(ミキサー)が装備されており、これにより様々なサウンド・バリエーションにも対応します。

 

 

 

マニュアル(シンセサイザー)・セクション

 上図における一番右下の黒いボタンには「MANUAL」と書かれていて、このボタンを押すことにより、パネル上の各種ファンクションを駆使したシンセサイジングに対応します。
 

VCOブロック

 2つの音源オシレーター(矩形波、ノコギリ波)とノイズジェネレーターの計3種の音源を搭載。ピッチは32'、16'、8'、4'、2'の5段階で切替えができ、矩形波とノコギリ波のミキシング・バランスはツマミ一つで調整可能です。
 
 

VCFブロックおよびVCAブロック

 VCF、VCAいずれにおいても独立したエンベロープ・ジェネレーター(ADSR方式)を搭載。なおVCF(フィルター)ではカットオフ周波数、レゾナンスが独立したツマミによりコントロール可能。ちなみにフィルタータイプはローパスのみです。
 
 
 

コントローラーについて

 鍵盤左部には、ピッチホイールモジュレーション・ホイール(→LFO)、サスティンポルタメントブリリアンス(→フィルターのカットオフ周波数)といったマニュアル・コントローラーを搭載。あとコントローラーではありませんがヘッドフォン端子がパネル手前(左下)にあったりして、これは地味に便利ですね。
 
 
 

つぶやき的な

 『ありきたりな音色(→プリセット)だけではつまらないし、アナログっぽいシンセ音を作り出したりリアルタイム・コントロールもしたい。でもライブでのセッティングを考えたらやっぱりプリセットが用意されていると便利。』
 
 
 という、当時のライブ・キーボーディストにとって1台で2度おいしいみたいなうってつけのモデルだったと思われます。本機のプリセットは2系統だったということもあり、組み合わせによりある程度バリエーション音色が組めたというのもよかったと思います。
 
 
 なおこの手のデュアル・エンジン?のシンセは、Roland SH-1000(※国産初のシンセ)というのが先に世に出ていて、実はCS15Dが初出ではないのですね。とはいえCS15Dでは数多くのプリセット音色を内蔵し、シンセサイズ部も(若干の制限は見られるものの)既出のCSシリーズを継承した作りとなっており、リアルタイム演奏において多くのサウンド・バリエーションが欲しいというライブ向けプレイヤーに受け入れられたそうです。
 
 
 
 関連記事(ヤマハCSシリーズ):
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 「YAMAHA CS1x  ~グルーヴィにつまみを回せ![1996年]」  →平成のCS
 
 「Roland SH-1000 ~1973年発売の「国産初のシンセサイザー」
 

仕様
■鍵盤:37鍵
■最大同時発音数:1音
■ボイスセレクター
 CH1:15種  CH2:14種
■構成:2VCO、2VCF、2VCA、VCF EG(A/D/S/R)、VCA EG(A/D/S/R)、LFO
■外形寸法:854(W)×134.3(H)×346(D)mm
■重量:12kg
■発売当時の価格:148,000円
■発売年:1979年

 

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