1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.324】Roland RD-300(/RD-300S) ~MIDIコントローラーが充実した80年代製・RD [1986年]
2018/11/28
今回ご紹介するキーボードは、ローランドが1986年末頃に発表したデジタル・ピアノ「RD-300」です。現在でも続くローランドのデジタルピアノ・シリーズ「RD」の最初期のモデルの一つですね。なお2010年代でもRD-300NXというデジタルピアノがリリースされたのですが、今回取り上げるのは30年以上前のモデル・RD-300の方です。あしからずです。
RD-300/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
RD-300の前には、高級機であるRD-1000(定価55万円)が、プロユースのコンボ・デジタルピアノとして既にヒットしていたのですが、RD-300は価格をぐっと抑えたハイコスパモデルといった感じといいましょうか。もちろん88鍵を備えており、音源もRD-1000譲りのSA音源方式を採用しています。またMIDI機能も充実していますね。追い追い説明していきます。
音源部
当時、アコースティックピアノ特有の音の表情をリアルに再現できるという触れ込みだった「SA音源」を搭載。前述したようにRD-1000のサウンド・コンセプトをそのまま受け継いだ格好となっています。もちろんダイナミクス(タッチの強弱による音量変化)対応。
内蔵音色は以下8種類。音色ボタン(本機ではボイス・セレクターと言う)は各々パネル上に配置されているため、瞬時の音色変更が可能です。
●ピアノ1●ピアノ2●ピアノ3●ハープシコード●クラビ●ビブラホン●エレクトリック・ピアノ1●エレクトリック・ピアノ2
最大同時発音数は基本的に16音(ポリフォニック)ですが、ハープシコード、クラビ、エレクトリック・ピアノは10音ポリになります。まあこの辺りもRD-1000と近いですね(RD-1000では16音ポリ、ハープシコードのみ10音ポリだった)。
エフェクターはコーラスとトレモロを内蔵しており、本機のみで広がりのあるステレオサウンドを得ることができました。トレモロではレイト(→モジュレーションの速さ)、デプス(→モジュレーションの深さ)を変化させることも可。
ボイス・プリザーブ機能
本機では、鍵盤が弾かれている状態(またはダンパーペダルが踏まれている状態)で音色を切り替えた場合、新しい選ばれた音色のインジケーターが点滅しますが音色は切り替わりません。その後、演奏されていない(ダンパーペダル・オフ)状態になった時点でインジケーターが点滅から点灯に変わり、はじめて音色が切り替わります。
これをうまいこと活用すれば、演奏中の音色チェンジによる不自然な音切れをなくす(減らす)ことができるため、ライブ時に特に有効な機能と言えるでしょう。
MIDIコントローラーとして
本機では鍵盤を任意のキー(→スプリット・ポイント)でUPPERとLOWERに分け、それぞれ設定されたMIDIチャンネルで同時に演奏情報(音量、プログラム・チェンジの指定等)を外部に送るなど、MIDIマスター・キーボードとしての機能も備わっています。エクスターナル(外部)用のボリューム・スライダーも、UPPER/LOWERそれぞれパネル上に配置されていますね。
他にも、コーラス、トレモロのON/OFF、ホールド情報などを送信可能。また付属のペダルスイッチ(DP-2)を接続することにより、キートランスポーズ、スプリット、MIDIアウト、MIDIロワー、MIDIアッパー、コーラス、トレモロ等のリモート・スイッチとして使用することもできます。
なおアフタータッチには対応していません。
RD-300Sについて
1988年に同社からリリースされた同じくデジタルピアノ。発売当初の価格はRD-300と同じく235,000円でした(※1)
RD-300S, P-330/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
RD-300とRD-300Sですが、当時のカタログ・取扱説明書を見る限り、内部仕様、外寸、各種ボタンやスライダー、ジャック穴の配置までまるで一致しています。もちろん「300S」の方だけスピーカー付きということではないです。唯一違いが見られるのが本体重量で、RD-300が27.2kg、RD-300Sが33kgとなっています。
うーん、、RD-300とRD-300Sの違いについては調べてもこれ以上分からなかったんですよね。。ただしRD-300Sのカタログには、RD-300には見られない以下の記述がありました。
鍵盤部には、コンサート・グランド・ピアノのタッチと質感を徹底追求したNEW鍵盤をマウント。ロータリー・オイル・ダンパー構造によってリバウンドを押さえ、スムースな打鍵と適度な重みを与え、一般的なアップライト・ピアノを上廻る連続打鍵性を実現。 出典・Roland RD-300S商品カタログ
この5.8kgの差重(33kg-27.2kg)は、上記の “ロータリー・オイル・ダンパー構造”によるものと考えていいのでしょうか。。ちょっと謎ですね(ロータリー・オイル・ダンパーって何だ!?)
ちなみにピアノにおけるリバウンドとは、一般的に “(ハンマーの)2度打ち”を意味しており、古いアップライトなどにたまに見られる現象(症状)のことです。
つぶやき的な
複数の音源モジュールなどを本機でコントロールすることを想定し設計された、MIDIマスター・キーボード寄りのRDといったところでしょうか。リアルで高品位な音源を積んだ近年のステージ・ピアノ路線のRDシリーズ(RD-2000)からすると、『時代は変わったよね』的な一台です。
本機は、デジタルピアノ黎明期だったRD-1000(1986年)と、デジタル全開のRD-500(1994年)をつなぐ、橋渡し的な役割を担ったデジタルピアノといったところでしょうか。何だ橋渡しって。。
関連記事(ローランドRDシリーズ):
「Roland RD-1000 ~ローランドのデジタルピアノ・RDの源流[1986年]」
「Roland RD-500 ~1994年発売のステージ向けデジタル・ピアノ[1994年]」
「Roland RD-600 ~ピアノサウンド・操作性が向上した90年代製ステージピアノ」
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※1 1989年4月1日より消費税(3%)が導入されたため、それ以降に販売されたRD-300Sの定価は218,000円(税別)に改定された。
仕様(RD-300)
■鍵盤数:88鍵
■音源:SA方式
■最大同時発音数:16
■プリセット音色:ピアノ1/2/3、ハープシコード、クラビ、ビブラホン、エレクトリック・ピアノ1/2
■エフェクト:コーラス(オン/オフ)、トレモロ(オン/オフ、レイト、デプス)
■外形寸法:1405(W)× 461(D)× 133(H)mm
■重量:27.2kg ※RD-300Sでは33kg
■発売当時の価格:235,000円
■発売開始年:1986年末頃