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1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.402】YAMAHA DX21 ~デュアル/スプリット演奏もできるコスパFMシンセ[1985年]

2018/11/28

 

 

 さて今回紹介するシンセサイザーは、1985年にヤマハから発売された「DX21」です。同社のDXシリーズといえば、世界的大ベストセラー機・DX7を始めとして、(80年代に)非常に多くのモデルがリリースされたことでも知られています。

 

YAMAHA DX21

 

 今回の主役であるDX21は、DX7のちょうど2年後に発売されたローコスト・モデルといったところですね。もちろんFM音源を搭載しています。
 
 
 

DX21概要

 4オペレータ・8アルゴリズム×2チャンネルのFM音源搭載61鍵シンセサイザー。「スプリットモード」(4音+4音)、「デュアルモード」(4音×2)を装備し、最大同時発音数は8ボイス。プリセット128音色、ユーザ32音色、パフォーマンスメモリー×32を内蔵していました。
 
 
 発売時のメーカー希望小売価格は133,000円となっており、これはDX7(定価248,000円)に手が届かなかった、当時のアマチュア向けのプライスゾーンに落とし込んだ価格設定と言えるでしょう。簡単に言えば廉価モデルということで、上位機種から見るともちろんいくつかの機能は省略されていますが、DX7には見られないいくつかの機能も搭載しています。
 
 
 

内蔵音源/音色メモリー

 搭載されているFM音源部は「4オペレータ・8アルゴリズム」となっており、DX7のそれ(6オペレータ・32アルゴリズム)と比べれば若干音作りの制約はあったというところ。とはいえDX21では、DX1同様に2チャンネル(系列)となっており、これは後述するデュアル/スプリット演奏にて生きてきます。
 
 
 音色メモリーとしては、プリセット(ROM)ボイス×128音色、ユーザー(RAM)ボイス×32音色を内蔵。なおそれら「ボイス」に様々な設定を加えた音色を本機では「パフォーマンス」と言い、RAMに32種類ファクトリー・プリセットされています。凝った音作りにも対応しますが、とりあえずすぐに使える音も一通り入っているといったところですね。
 
 
 

音色メモリーの補足

 本機においては、128(ROM)+32(RAM)=160音色がすぐに呼び出せるわけではなく、ROMであろうと一旦はRAMに呼び出さなければならなくて、A/B16ずつの各キーに割り当てることになります。つまりRAM領域は、ユーザー音色のセーブ用の他に、プリセット音色のロード用としての役割も持っているということですね。
 
 
 

DX21のEGパラメーター

 以下は、本機におけるFM音源のEGパラメーター図です。この図は本体パネルの右上部にも印刷されています。
 

 
各ポイントはレイトとレベルであり、タイムはありませんね。以下のように全5ポイントからなります。

 AR …アタック・レイト(※スタート・レベルは0固定)
 D1R …1stディケイ・レイト(※アタック・レベルは最大値固定)
 D1L …1stディケイ・レベル
 D2R …2ndディケイ・レイト
 RR …リリース・レイト(※リリース・レベルは0固定)
 
 
 このEGはアナログシンセにおけるADSR方式とほぼ同じ感覚で使えるのですが、D2R(2ndディケイ・レイト)を0に設定すると、D1L(1stディケイ・レベル)がいわゆるサスティン・レベルになります(=D2Rに0が入るとD1Lが保持され続ける)。サスティン・レベルが0にならない持続系音色では、D2Lを必ず0にする必要があります

 

 

 

DX21のプレイ・モードについて

本機には以下3種のプレイ・モードが搭載されています。

●シングルモード

 全鍵が単音色の8音ポリフォニックとなる “単音色演奏モード”。また、音色選びもこのシングルモードから入って行います。
 
●デュアルモード
 鍵盤に異なる2つの音色を割り当てることができるモード。この場合、最大同時発音数は4音+4音(計8音)となります。
 
●スプリットモード
 鍵盤を任意のポイントで左右に分割して、それぞれに異なる音色を割り当てることができるモード。同時発音数はデュアルモードと同じく4音+4音。

 

 デュアルモードでは、同じような音色をデチューン(→音程をわずかにずらす)ことにより厚みのあるアンサンブル・サウンドを得ることができます。
 
 
 またスプリットモードでは、当時の売れっ子キーボーディストであるハワード・ジョーンズなどに代表される、“曲中でも頻繁に音色セットが変わる”演奏スタイルにおいて有効的だったと言えるでしょう(→ちなみに本機では、細かな演奏情報を、使用順にメモリーできる「パフォーマンス・メモリー」機能も搭載されていた)
 
 
 

その他

 エフェクトとしてコーラスが内蔵されており、ステレオ・アウトすることにより広がりのあるサウンドを出力することが可能。ちなみにこの内蔵コーラスですがDX7にはないものであり、Wikipedia情報ではアナログコーラスとのことです(真偽のほどは未確認)。
 
 
 なおDX21には、DX7のようにカートリッジ・スロットは設けられていません。外部メディアに音色を保存する際には、付属のカセット・インターフェイスからカセットレコーダーに接続し、外部テープにストアすることになります。
 

YAMAHA DX21(advertisement)
DX21/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

個人的つぶやき

 4オペ/8アルゴリズム、そして8ボイスという内容からすると、本機は以前本ブログでも紹介した「YAMAHA CX5」のオプション・カートリッジとして触れた「SFG-01」の音源をベースに発展させ、さらにキーボードも付けたものと捉えることができるかもしれません。
 
 
 関連記事:「YAMAHA MUSIC COMPUTER 「CX5」 ~元祖・ミュージックコンピューター[1983年]
 
 
 廉価モデルではありますが、FMっぽいちょっとした金属音、ベル系音などを作るには十分な一台といったところであり、FM音源の音作りの面白さを感じるには十分と言えるかもしれませんね。
 
 

仕様
■鍵盤:61鍵
■音源方式:FM音源 ※4オペレータ・8アルゴリズム ×[A/B]
■同時発音数
 シングルモード時:8音ポリ
 デュアル/スプリットモード時:4音+4音ポリ or モノ+7音ポリ
■メモリー:
 32ボイス(RAM)、128ボイス(ROM)、32パフォーマンス
■外形寸法:909(W)×82(H)×270(D)mm
■重量:8kg
■発売当時の価格:133,000円
■発売年月:1985年5月

 

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