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その他メーカー 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.237】MAM MB33 ~90年代半ばの廉価TB-303クローン機[1996年頃]

2018/11/26

 

 

 今回ご紹介する機材は、MUSIC AND MORE(以下MAM)というドイツのシンセメーカーが1995~96年頃に発売した「MB33」というアナログシンセ・モジュールです。日本での定価は54,800円(税別)でした。

 

MAM MB33

 

 1UサイズのMIDIモノフォニック・シンセであり、90年代中頃に数多く世に出たいわゆるTB-303クローンの一つといったところですね。【analog-bass-synthesizer】と銘打たれていました。TB-303を明らかに意識したその作りは、他のクローン機との差別化がうまく図れているのでしょうか。早速見てみますよ。
 
 
 

外観

 奥行はわずか6cmあまり(ノブ類の突起除く)であり、操作つまみはフロントパネルに全8つ(VOLUME含む)といたってシンプルな構成。LEDやLCDといった表示ディスプレイもありません。
 
 
 電源スイッチは見当たらず、どうやらACアダプターを接続すると即電源が入るようですね。機能とコストをギリギリまで削ぎ落した、まるで自作キットのような作りの印象です。
 
 
 

VCOセクション

 まず目を引くのが、本機で唯一のプッシュ・ボタンである赤い「Auto-Tune」スイッチ。こいつを押すと自動的にチューニングしてくれるという便利スイッチらしいです。まあ本機はアナログ・シンセなので、このように簡単にチューニングが行えるというのはいいことでしょう。
 
 
 なおVCOセクションには別途「Tune」というつまみも用意されていて、こちらはいわゆるファイン・チューン(※1)の調節用。本機ではつまみ12時付近がほぼフラットとなっており、右に振り切ると+50セント(=半音のさらに半分)、左に振り切るとー50セント、ピッチが変化します。このつまみを端から端まで回すと1半音階のピッチ変化がリアルタイムでできるといった感じですね。上記のAuto-Tuneとは違い、音楽的な使い方ができるのがミソです。
 
 
 WAVE(波形)は矩形波とノコギリ波が用意されており、無段階つまみにより両者をミックスできるようになっています。
 
 
 

VCFセクション

 24dBのローパス・フィルターを搭載。つまみとしては「Cutoff」「Resonance」「Env Mod」の3つがパネル上に配されています。
 
 
 レゾナンスはそれほどきつくない感じですね。発振するほどではありません。なお「Env Mod」は、エンベロープ・ジェネレーター(ENV)がカットオフ・フリケンシーのモジュレーションに与える効きの強さを調節できます。
 
 
 

その他のパラメーターつまみ

 「Accent」つまみは、個々の音符を強調することによって演奏のダイナミクスを出すためのもの。またエンベロープの「Decay」つまみは、フィルター・エンベロープに作用します(→アンプ・エンベロープは固定)。これにより、キー・オンからキー・オフまでの間で、どのくらい速くフィルター・エンベロープ電圧が落ちるかをつまみにより調節可能といったところです。

 

 

 

VCF IN(Ex オーディオ・イン)について

 本機のリア・パネルには「VCF IN」と書かれた標準フォーン端子が1基装備されていて、ここに外部からの音声を入力すると、その外部信号がVCFセクションに送られます(なお本端子にプラグを差し込むと、内部のVCOからVCFへの信号は遮断される設計になっている)。まあちょっとした外部入力信号のフィルター機としても使えるといった感じでしょうか。
 
 
 

オートスライド機能について

 MB33にはスライド(ポルタメント)も用意されており、これによりTB-303ならではのサウンドにより近付けることもできるかもしれません。ただしポルタメントを調節するパラメーターは存在せず、自動でポルタメントがかかるという仕様になっているのです(!)
 
 
 トリガーはいわゆる「シングル・トリガー」のみ。これは、鍵盤を離さないで次の音を弾いた時、ポルタメント付きで音が移行するという動きをします。本機の場合、ポルタメントで音をどんどん鳴らしていくと徐々に音量が減衰していくので、作りたいトラックによっては若干制約が出てくるかもしれないですね。
 
 
 

つぶやき的な

 以前本ブログでも紹介した「NOVATION BassStation」と比較すると、本機MB33は「MIDI周りや他の機能も充実させよう! ベース音色以外でも使える仕様にしよう!」というよりは「TB-303に近付けよう!(ローコストで)」といった印象を受けます。
 
 
 本機の操作系やMIDIは必要最小限といった感じですが、お安くTB-303サウンドを手に入れたい人にとっては向いていたのかもしれません。こう見えてアナログですしねー
 
 
 
 関連記事(ローランドTB-303 近似コンセプト機):
 「WILL SYSTEM MAB-303 ~MIDI対応のハーフラックTB-303クローン[1994年頃]
 「NOVATION BassStation (Keyboard) ~ベース・シンセサイザー[1994年]
 「DOEPFER MS-404 ~コンパクトな1Uラック・TB-303クローン[1995年]
 「Roland MC-303 ~大ヒットを記録したグルーヴ・ボックス[1996年]
 「QUASIMIDI Rave-O-Lution 309 ~“革命的”・RAVEマシン!?[1997年]
 
 
 

余談的な

 MB33から約20年を経た2015年には、MAMから同じく「MB33 Retro」という復刻機が登場しました。こちらは搭載パラメーター等に変化は見られず、より扱いやすくした超小型のボックス型となっていますね。価格ももちろん落ちてます。
 

MAM MB33 retro

 

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※1 ファイン・チューン …ピッチ(音程)の微調整(→数セント単位)を行うためのパラメーターのこと。一方、比較的大きな音の高さの調整(→半音単位)をするためのパラメータは「コース・チューン」という。

仕様
■同時発音数:1(モノフォニック)
■オシレーター部:オート・チューン、チューン、オート・スライド、ウェーブ(矩形波~ノコギリ波)
■フィルター部:カットオフ(24dBローパス)、レゾナンス、ENV MOD
■アンプ部:アクセント
■エンベロープ部:ディケイ
■入出力端子:AUDIO OUT、VCF IN(Ex AUDIO IN)、MIDI IN
■外形寸法:482.6(W)×44(H)×87(D)mm
■重量:1.2kg
■発売当時の価格:54,800円(税抜)
■発売開始年:1995~96年

 

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