【Vol.191】KAWAI　MAV-8　～80年代のMIDIパッチベイ、その名も“マブハチ” [1988年]

　今回ご紹介する機材はKAWAIの「MAV-8」というMIDIパッチベイです。発売は1988年で、価格は12,500円。「マブハチ」と呼ばれ、10年近くもの長期にわたって製造されました。
 

 
　さて「MIDIパッチベイってそもそも何？」という人も多いと思いますので追い追い説明してみたいと思います。システムアップに伴いMIDIハードウェア音源が増えていった際、このMIDIパッチベイがあれば非常に便利だった時代もあったのです。否、一部の現場では今でも現役と言えるでしょう。
 
 
 

MIDIパッチベイとは？

　一つのMIDI入力信号を複数に分岐して送ったり、逆に複数の入力信号を一つにまとめることができるという機器のこと。
 
 
　何台もの音源をMIDIで演奏（操作）させる際、スルーで直列つなぎをしていると後方の機器になるにつれ演奏情報が遅れてきます。ケーブルはカスケードすればするほど遅延するので、発音タイミング命と言えるシーケンサーに致命的な遅延が生じることにもなりかねないということですね。また長く取り回すことにより信号自体も劣化するので、ひどいケースになると音が止まらない（鳴りっぱなし）になるなどのMIDIエラーを起こす可能性もありました。
 
 
　MIDIパッチベイを導入することにより、ケーブルのチェーンがなくなり信号劣化の可能性が大幅に減ります。またMIDI信号の流れが分かりやすくなり、ちょっとしたMIDIシステム変更においても、大量のMIDIケーブルをつなぎ替えるといったことなく行えるようになりますね。

そこでMAV-8

　入出力は4イン／8アウト。そのうち1イン／1アウトはフロントパネルに装備されているので、一時的に（実験的に）接続したり、臨時でつなげる際などに非常に重宝します。
 
 
　パッチングにはスライド・レバーを採用（パネルには8本のスライダーが装備されている）。本機はLEDなどのディスプレイを搭載していないのでセッティングの確認は目視ということになりますが、使い勝手は悪くないです。電源を入れてなくてもセッティングを視認できるという単純明快な操作性は、ある意味非常に便利だと思います。
 
 
　MAV-8は当時廉価なMIDIパッチベイとして発売されたため、上記のような非常にシンプルな構成になっています。他機種に見られるようなメモリー機能（→パッチング・パターンを記憶する機能）はありませんし、MIDIマージ（ミックス）もできません。
 

MAV-8,EQ-8／(株)河合楽器製作所 雑誌広告より画像引用
 
 
 

つぶやき的な

　そういえば僕が90年代に勤めていた鍵盤専門店にもこいつがありまして、当時は本機とRoland A-880の2台体制で、十数台の展示音源に対応していたことを思い出しました。さすがに今の時代に本機を使っている人はそう居まい、と思っていたら、なんと先日（2017年4月）行った原宿のFive Gさんでも発見しましたよ！（販売ではなく店内MIDI音源管理用として）
 

　STUDIO ELECTRONICSの名機「MIDIMINI」の下にMAV-8が確認できます。ちなみにMAV-8の下には以前本ブログでも紹介した1Uミキサー、「BEHRINGER　EURORACK PRO　RX1602」がちらっと見えますね。
 
 

PROPHET-6の上にも「MAV-8」+「BEHRINGER RX1602」のセットが確認できます。
 
 
　MIDIハードウェアを数多く管理するケースでは、こういったMIDIパッチベイが現役でまだまだ活躍しているという感じですね。楽器店だと特に、お客の「ちょっと音出してみたい」というケースも往々にしてあると思われます。そんな時でもパネル前面の端子にささっと挿して、とっさに対応できるのがMAV-8最大の強みと言えるでしょう。
 
 
 
　関連記事：「Roland　A-880／EDIROL　UM-880　～マージも可能なかつての定番MIDIパッチベイ」
 

-KAWAI, 楽器・機材【Vol.〇〇】