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AKAI 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.411】AKAI MPC60II ~MPC60をローコストにした普及モデル[1991年]

2018/11/28

 

 

 今回取り上げる機材は、赤井電機(AKAI professional)が1991年に発売したMIDIプロダクション・センター「MPC60II」です。発売当時の定価は295,000円(税別)。

 

AKAI MPC60II

 

 これは以前本ブログでも紹介した「AKAI MPC60 ~MPC初号機![1987年]」の、低コスト版といった趣きのモデルですね。MPC60の基本設計を踏襲した、「シーケンサー+サンプラー+リズムマシン」一体型という1台で3度おいしい優れものマシンといったところでしょうか。AKAI MPCシリーズ全体に共通しているかもしれませんが、特にヒップホップ系トラックメーカー/DJから熱烈に支持されました。
 
 
 なお基本仕様はMPC60とほぼ同じであり、本記事もMPC60の時の文章と重なる箇所もあるかもしれませんが、各セクションごとに改めて記述してみたいと思います。
 
 
 

サンプラー・セクション

 サンプリング・レートは40kHz、サンプリング・フォーマットは12ビット。標準メモリの状態においてはサンプリング・タイムは最大約13.1秒。専用メモリー[EXM003]を増設することにより、倍の約26.2秒まで拡張可能となっています。
 
 
 この12ビットというのは、MPCで言えばMPC60および今回のMPC60IIの仕様の特徴でもあるのですが、独特の荒い音質が得られたため、当時の著名なヒップホップDJなどがこぞって愛用していたそうです。E-muのSP-1200とともに “ヒップホップらしいロービットで荒々しい”音というのが、本機によって確立されたと言っていいかもしれません。あとMPC特有の “リズムの揺れ”もあったそうで、独特のグルーヴ感が出たそうです。
 
 
 取り込んだサンプルは、各種機能(→ピッチ、アタック、ディケイ、リバース、フェードアウト等)により一通りのエディットができたという感じですね。チューニングは-1~+1/2オクターブの範囲で可能。なおパネル上の4×4=16のパッドは、もちろん各々ベロシティ/プレッシャー対応となっていて、打楽器を叩く感覚で入力できるMPCならではのインターフェイスといった印象です。
 
 
 

シーケンサー・セクション

 本機の内蔵シーケンサーは、容量60,000ノート、99シーケンス、各シーケンス毎99トラックまで使用可。このシーケンサー部のスペックもMPC60とほぼ同じですね。
 
 
 編集機能も、ループ機能(→シーケンスの一部を繰り返し再生しながらオーバーダブが行える)や、オート・パンチ・イン/アウト機能、コピー、マージ、インサート、デリートなどなど、従来のシーケンサーでも見られる一般的な機能が一通りそろっています。
 
 
 分解能は♩=96となっており、クオンタイズ(→演奏タイミングのバラつきの補正)の細かさもいくつかの種類から選択することが可能。なお本機のクオンタイズはジャストにしても若干の揺れがあったそうで、これは本機の特性として結構知られていますね。
 
 
 なお、本機ではMPC60同様に3.5インチFDDを搭載していますが、SMF(スタンダードMIDIファイル)には対応していませんでした。

 

 

 

先代機との相違点

MPC60から変更されている主な箇所を挙げてみましょう。

●ちょっとだけ小型化
 非常に大柄だったことでも印象深いMPC60ですが、IIでは若干コンパクトなサイズになりました。重量も若干軽くなっています(10.5kg→9kg)。

●パームレストの簡略化
 フロントパネル手前にあったクッション性のあるパームレストが、通常のプラスチックに変更されています。

●LCDパネル角度の固定
 MPC60ではLCDパネルを自分の見やすい角度に調整することができましたが、IIでは固定となっています。

●結果的に低価格化
 480,000円→295,000円という大幅なコストダウンを果たしました。

 
 逆に、中身(サンプリングセクションやMIDIシーケンサーの仕様)はMPC60とほぼ同じなんですよね。パネル上のボタンレイアウトやLCDの表示文字数まで同じとなっています。
 
 
 あとMPC60になかった機能としては、IIではMIDIサンプルダンプ・スタンダードが送受信できるようになっています。これにより、他社のサンプラーなどで作った波形を本機に取り込むこともできました。
 

AKAI MPC60II(advertisement)
MPC60II/赤井電機(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

つぶやきとして

 ロジャー・リン氏(※ドラムマシンの名機と言われたLINNドラムの開発者)と、当時のアカイがタッグを組んだサンプリング・ドラムマシン&シーケンサー一体型マシンの2代目モデルですね。当時のオールインワン・シンセやDTM音源機では、総じて内蔵ドラムの出来(音質・操作性)が今より良くなかったため、本機を「ドラム音源専用機」と捉えればかなり強力な一台だったのではないのかと。
 
 
 MPC60に引き続き、プロのレコーディング現場でよく用いられていたSMPTEやMIDIタイムコードにも対応しており、コンバーターやシンクロナイザーなどの単体機なしで機器間のシンクが取れるなど、同期に強いドラム専用サンプラーとしても知られました。
 
 
 今見ると、低価格になったとはいえ約30万円というのは一般人にとってはまだちょっと高価だったかな~、という印象でしょうか。その後 “MPCブランド”が多くのミュージシャン/クリエイターに浸透するのはMPC2000(1997年)辺りかなという感じですね。MPC2000はヒップホップ系に限らずいわゆるロック系ミュージシャンにも支持されていたりして、僕も借りて何度か使ったことがあります。MPC2000もいつか記事にしたいと思いますよ。
 
 
 
 関連記事
 「LINN Electronics Linn9000 ~ロジャー・リン氏が手掛けた統合的ドラムマシン
 「AKAI MPC60 ~MPC初号機![1987年]
 

仕様
<サンプラー・セクション>
 ■量子化ビット数:12ビット
 ■サンプリング周波数:40kHz
 ■内蔵メモリ:768KB(最大1.5MBまで拡張可)
 ■サンプリングタイム:約13.1秒(内蔵メモリー時。メモリー・エクスパンション・ボードEXM003装着により、最長26.2秒まで拡張可能)
 ■インターナル・メモリー:最大32ドラム音
 ■周波数特性:20Hz~18kHz
 ■同時発音数:16
 
<シーケンサー・セクション>
 ■メモリー音数:最大約60,000
 ■分解能:♩=96
 ■シーケンス容量:99
 ■トラック数:1シーケンスにつき99
 ■ソング・モード容量:20ソング(1ソングにつき最高255ステップ)
 
<パッドその他>
 ■16バッド(ベロシティ、圧力センス対応)
 ■メモリー・ストア:3.5インチFDD内蔵
 ■ディスプレイ:320文字表示グラフィック機能付きLCD
 

■外形寸法:515(W)×165(H)×427(D)mm
■重量:9kg
■発売当時の価格:295,000円(税別)
■発売開始年:1991年

 

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