【Vol.109】WALDORF MicroWave XT ~PPGの伝統を受け継ぐシンセサイザー[1998年]
2019/01/03
今回ご紹介するシンセサイザーは、ドイツのWALDORF(ウォルドルフ)社から発売された「MicroWave XT」です。発売は1998年。ラック・マウントも可能(5U)な音源モジュールですね。当時の国産シンセにはなかなか見られない仕様をいくつも盛り込んでおり、楽器店ではひときわ異彩を放っていたような気がします。
はじめに・WALDORFについて
WALDORF社は、PPG直系とも言うべき製品を数多くを送り出してきたドイツの名門シンセサイザー・メーカー。元々はPPGのディストリビューターとして1988年に創業し、1989年に「Microwave」という第1号機を発表。1993年には「The Wave」というモンスター級シンセで世界中から注目されるようになりました。
前述した「Wave」シリーズや「Q」シリーズは多くの愛好者を生み、独特の存在感溢れるサウンドや斬新なデザイン(カラーリング)で市場を沸かせたのですが、2004年に経営困難に陥り一旦撤退することになりました。
その後2008年にシンセ・モジュール「Blofeld」で復活を果たし、その後もかつての自社製品のサウンドを再現したプラグイン・シンセなどコンスタントに製品を発表、今日に至ります。シンセサイザーにとどまらず、2013年には「Zarenbourg」というフィジカル・モデリングによるステージ・キーボード(エレピ)もリリースしています。
MicroWave XTについて
前年(1997年)に発表された「Microwave II」がベースとなっており、ほぼ同等のシンセシス・エンジンを持っています。2UラックサイズだったMicrowave IIを、テーブルトップ・タイプの形状にしてパラメーター用のノブを増やしたという印象です。
音源方式はPPG WAVEシリーズから受け継がれてきた「ウェーブテーブル・シンセシス方式」を採用。DSPによるサウンド生成で、10音ポリフォニックとなっています。また内部OSのバージョンアップ・プログラムも、メーカー・サイトより無償でダウンロードすることができました。詳しくは把握できていませんが、バージョンアップごとにフィルター・タイプも追加されていったそうです。
基本スペック
各ボイスは「オシレーター×2」、「ウェーブ・ジェネレーター×2」、「ミキサー×1」、「フィルター×2」、「ステレオアンプ×1」、「エンベロープ×4」、「LFO×2」から構成され、パネル上に配置された44個のノブ(および1個の大きなダイヤル)を使って、迅速な音作りが可能となるものでした。なおこのノブはエンドレス・タイプとなっているのが特徴的です。
なお本機の「ウェーブテーブル・シンセシス方式」については、鍵盤付きモデルである「MicroWave XTk」の記事にて、ある程度補足の記述をしておきました。興味のある方は本ページ末からのリンクでどうぞ。
Microwave IIからの追加機能等
DSPがより強化され(→RAM拡張)、リングモジュレーター、フェイザー、フランジャー、ディレイ、オーバードライブなどの様々なエフェクトが実装されています。
余談的な
本機の外観上の特徴として「オレンジ色」が挙げられます。本ブログの「キーボード/シンセサイザーで “虹の七色”をコンプしてみたら…」という記事でも取り上げさせてもらいましたが(→鍵盤付きモデルの MicroWave XTk)、このような鮮やかなオレンジ色のシンセサイザーはなかなかないです。
ちなみに666台限定で本機の「ブラック」モデルも発売されたそうなのですが、オレンジがレギュラーでブラックの方を限定にするとは粋じゃないですか(笑)
いいわけ的な
正直、個人的にはWALDORFのシンセはあまり操作した経験がなく、ただのスペックの羅列になっているかもしれませんがどうにか記事にしてみました。第一、前置きが長すぎですよね。。生粋のWALDORFファンの方、誤っている箇所や的外れな記述があったらごめんなさい(ご指摘頂ければ幸いです)
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「WALDORF THE WAVE ~ウェーブテーブル方式採用、90年代半ばの “モンスター」
「WALDORF MicroWave II ~フルデジタル化したMicroWave [1997年]」
「WALDORF MicroWave XTk ~キーボードが付いたMicroWave XT [1999年]」
仕様
■最大同時発音数:10音
■音源方式:ウェーブテーブル方式(64ROM/32RAM)
■音色メモリ:256(シングル)、128(マルチ)
■フィルター1:ローパス(12/24dB)、バンドパス(12dB/24dB)、ハイパス(6dB)他
フィルター2:ローパス(6dB)、ハイパス(6dB)
■価格:オープン・プライス(発売当初の実勢価格:35万円前後)
■発売開始年:1998年末