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1990年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.51】Roland JD-990 ~その2・だけど停電だけが恐ろしい

2019/01/19

 

 

 今回は1993年発売のRolandの音源モジュール・「JD-990」のお話です。以前の本ブログの記事「Roland JD-990 ~その1・個人的回顧録」では僕の思い出話が中心だったのですが、今回は全体をもう少し詳しく説明していきましょう。

 

Roland JD-990

 
 
 JD-990はざっくり「JD-800の音源モジュール版」といえますが、いくつかの機能が追加・強化(あるいは省略)されています。細かく挙げると非常に長くなりますので、個人的に気になるものを中心に紹介したいと思います。
 
 
 

SR-JV80シリーズのエキスパンジョン・ボードを「1枚」搭載可能

 同社のエキスパンジョン・ボードは「SR-JV80-19」までリリースされましたが(※1)、その中から1枚だけですが搭載可能となりました。
 
 中でもJD-990と最も親和性が高かったのが「Vintage Synth(SR-JV80-04)」。このボードにはローランドおよび国内外の名機と呼ばれるシンセ・サウンドが搭載されていただけではなく、JD-990専用パッチも収録されていました。
 
 関連記事:「Roland SR-JV80-01~06 ~90年代ローランドのエキパン!(その1・初期製品モデル)
 
 

オシレーター・シンク機能を追加

 オシレーター・シンクとは、2つのオシレーターを強制的に同期させる事により複雑な波形を作り出す機能のことです。当時これがデジタルのラック・モジュールに搭載されたのは珍しいことでした。
 
 

エディット時に有効な大型グラフィック表示画面

 ラック・マウント型であるにも関わらず、当時の他のラック・マウント型シンセのディスプレイに比べ画面が広いのが特徴です。なおかつドット・マトリクスが細かいため、エンベロープ(ADSR)波形などが名称や値だけでなく図で分かりやすく示されるようになりました。
 
 またこれにより、一画面内に表示される情報量が増えたため、各パラメータの主従関係の把握が容易になりました。
 
 

フレキシブルな内蔵エフェクター

 エフェクト部は8マルチ仕様であり、【グループA】にディストーション、フェイザー、スペクトラム、エンハンサー、【グループB】にコーラス、リバーブ、ディレイを持ちます。ちなみにJD-800ではパフォーマンス・モードにした際、エフェクトはコーラス/リバーブ/ディレイのみでした。
 
 前述した通り、表示はグラフィカルであり、視覚的に概念が分かるようになっているので、特に音作り初心者の人にとっては理解しやすかったと思われます。
 
 

4系統のステレオ・アウトを装備

 内蔵エフェクターを生かした空間演出以外にも、音色別に外部エフェクターを使い分けたり、ミキサーで個別に立ち上げてより高度なミキシングを行うことも可能に。
 
 

内蔵波形の容量が、JD-800の4MB(108種類)から6MB(195種類)に増量

 

 

 

以下はおまけですよ。特にTKファンにとっては気になるのではないでしょうか。

 

JD-800の「プリセット53」のピアノ音色はJD-990にもある?

 Roland JD-800のプリセット53番のピアノは、小室哲哉さんが一時期楽曲制作に頻繁に使っていたことから「TKピアノ」(あるいはJDピアノ)などと呼ばれ、非常に有名です。ではJD-800の音源モジュール版と目されるこのJD-990には、該当するピアノ音色は入っているのでしょうか。
 
 
 結論としては入っていません。近いピアノ波形を見つけ、TVF等でエディットしていけば近い音にはなるかもしれませんが、“そのもの”の音にするのは難しいでしょう。
 
 
 

まとめ的な

 そんな感じでJD-990がどのようなシンセサイザーであったかというのが、ちょっとでもイメージして頂ければ幸いです。今どきのデジタル・シンセにおいて「大型のグラフィカルなディスプレイ」なんてほぼ当たり前ですが、当時は本機を操作して非常に驚いたことを覚えています。
 
 
 なおJDシリーズは長年この2機種のみでしたが、2015年に「JD-XA」「JD-Xi」として実に22年ぶりに復活しましたね。最近の若いシンセ使いの人にとっては、“JD”というと後者の方を連想されるかもしれませんが、昔のJDも非常に個性的だったので知っておいて損はないですよー
 
 
 

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※1 …「SR-JV80-06(dance)」は諸々の事情により販売中止になった。なおノベルティ用として配布された無料の「Experience」も3種ほど存在する。

仕様
■最大同時発音数:24音
■本体メモリー:パッチ192、パフォーマンス48、システム1
■カードメモリー:パッチ64、パフォーマンス16、システム1
■内蔵エフェクト:
 (パッチ)3バンドEQ、ディストーション、フェイザー、スペクトラム、エンハンサー、コーラス、ディレイ、リバーブ
 (パフォーマンス/リズムセット)3バンドEQ、コーラス、ディレイ、リバーブ、ミックスアウトEQ
■カードスロット:PCM、DATA
■外形寸法:482(W)×88(H)×281(D)mm
■重量:5.1kg
■価格:200,000円(税抜)
■発売開始年:1993年

 

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