1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.441】YAMAHA EOS DS55 ~オート・パフォーマンス機能搭載のお手軽EOS [1988年]
2019/10/20
さて今回ご紹介するキーボードは、YAMAHA EOS(イオス)ファミリーの中の一つ「DS55」です。発売は1988年末。発売時の定価は84,800円。シーケンサー非搭載タイプのシンセサイザーですね。
鍵盤楽器の「EOS」といえば、80年代末~2000年代初頭にかけて初心者向けシンセとして一世を風靡したモデル群として名を残していますね。今回のDS55はさらに機能を絞って、当時としては驚きの8万円台というお手頃価格シンセとして登場したわけです。では詳しく見てみましょう。
外観について
同年に先行発売されたYS200/100に近いデザイン(奥行きは削られスリムになっている)。スピーカーは内蔵されておらず、ホイール類もEOS独特の球体型ではないごく普通の形状といったところ。
液晶ディスプレイは16×2のものが搭載されており、YS200/100に比べると小さくなったものの必要最小限の情報は表示してくれそうです。バックライトはなし。
音源方式/内蔵音色について
4オペレータ・8アルゴリズムのFM音源方式を採用。これはYS200/100、あるいはB200を踏襲した感じになっていますね。複雑になりがちなFMでの音色エディットも、前機種を継承したイージー設計のおかげでイージーに行えると思います。同時発音数は8。
内蔵音色はプリセットで200音色であり、これはYS200/100の単純に倍の数字。なおエディットした音色を本体内に書き換えできるいわゆるユーザーメモリーは100音色ですね。
でもってその音色エディットですが、フィルター、エンベロープ(音量/フィルター)、ビブラート、トレモロなどを装備し、当時のこの価格帯のシンセとしてはなかなかの健闘ぶり。ちなみにマニュアルにはシンセ特有の専門用語はあまり登場せず、「音の出方/消え方を変える」「音の明るさを変える」など初心者にも分かりやすく書かれていますね。好感が持てます(笑)
エフェクターもあるみたい
本体内にデジタル・ディレイを内蔵。ディレイはON/OFF切り替え、パラメーターはSHORT/LONGのみという超絶シンプルな仕様ですが(※繰り返し回数は決めることができる)、気軽に音の広がりや臨場感を加えることができます。音色ごとにメモリーすることも可能。
「オート・パフォーマンス」機能について
DS55にはシーケンサーは搭載されていませんが、その代わりにパフォーマンス(演奏)に特化した機能が内蔵されています。その代表的なのが「オート・パフォーマンス」というもの。
これは簡単に言うと自動伴奏機能のことですね。一人でも(一台でも)フルバンドの中で演奏しているような楽しみ方ができる、といったところ(一つのパターンはおおむね1~4小節からなる)。
なおこのモードに入ると、鍵盤の下1オクターブの部分が操作キーみたいになります。本機の場合、オート・パフォーマンスは以下3つのタイプがあります。
パターン・チェンジ
下1オクターブの各キーボードには、イントロやエンディング、あるいは基本パターン/展開パターンがアサインされており、指一本で曲構成のパターンを変えられるというもの。音楽ジャンルのパターンも、デジタルポップ系、ハードロック、サンバ、ラテン系など様々な種類が用意されています。
ノート・シフト
1つのパターンをキーによって移調するもの。キーの異なるバッキング・パターンがすぐに出てくるので、アドリブの練習にも使えるかもです。
アルペジオ
おさえたコードを分散和音にしてくれるもの。
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これらを左手で操作し、右手では自由にメロディをつむいで遊ぶ、などの使い方ができそうですね。ソロの練習や曲作りなどにも役立ちそうです。またスプリット/デュアルなどの演奏モードも持っていますね。
このようにDS55はリアルタイム・パフォーマンス向けの一台といえますが、もちろんMIDIは付いているので、外部シーケンサーと組み合わせたりと一応拡張性もあります。8音ポリ/8マルチティンバーなのでそんなに凝ったオケは作れませんが。。
乾電池駆動も!
DS55では乾電池での駆動が可能(単2×6本)であり、これはEOSシリーズとしては本機が唯一ですね。もちろんACアダプタでも駆動しますがこちらは別売りでした。接続可能なものはPA-1/1B/3。
“電池でもOK!”で一般ユーザーが連想しがちなのが「ショルダーキーボードとしての使用」ですが、DS55では特にショルダー向けの設計はされていないようですね。
個人的つぶやき
1988年の初号機登場から、2007年のB2000生産完了まで全10モデル、実に20年間もの長きにわたり初心者向けシンセサイザーということで市場に存在感を放ったEOSファミリー。今回のDS55はその中でもとりわけ “イージー&カジュアルEOS”という位置づけでしょうか。
廉価・軽量・簡単な「EOSの末っ子」と見られる向きもありますが、なぜか一人だけ「DS」という異なった名前始まりということもあって、個人的には親戚の子というイメージなんですよねぇ。。どうでもいいですが。
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仕様
■鍵盤:61鍵(イニシャルタッチ付き)
■音源方式:FM音源(4オペレータ・8アルゴリズム)
■最大同時発音数:8音(後着優先)
■マルチティンバー数:8パート
■音色メモリー:
[プリセット] 200音色
[ユーザー] 100音色(書き換え可能)
■内蔵エフェクト:デジタルディレイ(ON/OFF。タイムは音色ごとにメモリー可能)
■外形寸法:970(W)×100(H)×270(D)mm
■重量:6.4kg(乾電池含まず)
■発売当時の価格:84,800円
■発売年:1988年