【Vol.384】KAWAI SPECTRA KC20 ~GM音源搭載の軽量・コンパクトシンセサイザー[1993年]
2019/06/02
今回取り上げるシンセサイザーは、1993年に河合楽器から発売された「KAWAI SPECTRA KC20」です。当時の定価は69,000円でした。これは1990年に発売された同社のKC10の後継モデルですね。
前モデルを踏襲したスリム・軽量路線の61鍵(ベロシティ付き)シンセであり、さらにGMにも対応しちゃったということで、シンセ入門者が手にする最初の一台としてもってこいといった感じだったでしょうか。
関連記事:「KAWAI SPECTRA KC10 ~これぞ元祖コンパクト・シンセサイザー![1990年]」
音源/音色エディットについて
GM対応の128音に加えて、ギター系サウンドやSEなど32音色を収録。合計160音色(+7ドラムキット)を内蔵した即戦力シンセと言えるでしょう。音質的には18bit DAC(Digital Analog Converter)を採用しており、当時のこのクラスとしてはクリアで抜けのよい出音だったと思います。
本機のエディットモードで扱えるパラメーターは、レベル(音量)、パン、トランスポーズ、チューニング、ベンドレンジ、モジュレーション・デプスなど。どうやら波形ごとのフィルター、エンベロープの変更はできないみたいですね。まあほぼGM音源機みたいなものだから致し方なしといったところ。その代わり(代わりではないが)、6タイプのデジタル・リバーブが内蔵されています。
同時発音数について
本機の最大同時発音数は28音(20楽器音+8ドラムキット音)。この時代のポリフォニック・デジタル・シンセにおいては、音色により(あるいはエフェクトなどを掛けると)同時発音数が減ってしまうものもあったのですが、本機では “完全28音ポリフォニック”を謳ってますね。
16セクションのマルチティンバー・システムを採用し、外部シーケンサーから最大16パートの自動演奏も可能です。
パフォーマンス・モードについて
KC20ではライブでの使用も前提に設計されており、鍵盤のスプリット(分割)、レイヤー(重ね)の組み合わせなどを記憶させる「パフォーマンス・パッチ」を64個(8バンク×8パッチ)まで作成できます。これは2つのホイールやリバーブ等の設定も併せて記憶できるため、ライブ時に曲ごとの異なる設定をボタン一つで呼び出すことが可能になっています。
あと軽量コンパクトということであり、本体にはショルダーキーボードとして使用するためのストラップ・ピンも打ち込まれています。当時のいわゆるショルキーといえば音源は内蔵していないものが多かったので、これ一台で(ある程度の)ショルダー・プレイができたというのは大きなセールス・ポイントですね。まあKC10と同様に電池駆動はできないので使いにくいといえば使いにくいのですが。。
さらに軽くなった!
本機の特筆すべき点はその軽さ。フルサイズ61鍵盤音源内蔵シンセサイザーにもかかわらず、たったの4.1kg(本体のみ)という超軽量でした。KC10の4.8kgも当時相当軽かったのですが、さらに上行く軽量野郎ですね!
奥行は約20cmで、ライブハウスやリハーサルスタジオへの持ち運びもラクラクですね。状態さえよければ現代でも使ってアリなのではないかと思います。
コンピューター接続端子も標準装備
MacintoshやIBM機、NEC PC98の各PCに、MIDIインターフェイスなしでダイレクトに接続できるシリアル・インターフェイス(DIN8ピン)を装備。PC種の切り替えは背面のスイッチから行うようになっています。なお各種シリアル・ケーブルは別売り。
KC20W(GM SPECTRA)について
KC20には、中身が同じでホワイト筐体の「KC20W」というカラーリングも用意されていたのですが、こいつの面白いところは黒鍵がグレーなところ。鍵盤が全て真っ黒とか白黒反転とかは今でこそたまに見かけるのですが、当時白鍵は白なのに黒鍵が黒じゃないというのはちょっとした衝撃だったと思います(笑)
価格は同じく69,000円。ただし限定生産だったみたいですね。何故ホワイト(実際は薄めのグレー)のモデルも用意したというと、当時のパソコンと同系統色にすることで(パソコンと)見た目的にマッチするようにとのことだったらしいですよ。
GMegaLXについて
KC20からパフォーマンス・モード機能等を省いた、1Uハーフラック・サイズのDTM用音源モジュール。価格は37,000円でした。これは以前記事にした「KAWAI GMega(/GMegaLX) ~カワイ初となるGM音源モジュール[1992年]」でもちょっと触れていますが、パネル上の操作ボタン等を徹底的に省略した完全DTM向けGM音源モジュールですね。
もちろん今回取り上げたKC20の拡張音源として使うのもアリだと思われます。
KC20, GM SPECTRA(KC20W)他/(株)河合楽器製作所 雑誌広告より画像引用
つぶやき的な
軽量・コンパクトという最大の特徴に加え、DTMシステムによし、ライブによしと、実に使い勝手のよいエントリー・シンセといったところでしょうか。
KC10での記事でも言及しましたが、音源内蔵の61鍵(レギュラースケール)シンセでこの軽さというのは、現代のシンセを見渡してもそうそう見当たらないんですよね。非常に便利な一台だったと思います。
関連記事(90年代の軽量シンセ):
「KAWAI SPECTRA KC10 ~これぞ元祖コンパクト・シンセサイザー![1990年]」
「KORG X5 ~元祖お手軽シンセサイザー[1994年頃]」
仕様
■鍵盤数:61鍵(ベロシティ付き標準スケール鍵盤)
■最大同時発音数:28(28楽音+8/ドラムキット)
■音色数:160音色+7ドラムキット、GM対応
■プログラム・メモリー
パフォーマンス・パッチ:64(8バンク×8パッチ)
コンポーズ・モード:16セクション、16セッティング
■シリアル・インターフェイス:Mac/IBM/NEC切り替え可能
■ディスプレイ:16文字2桁LCD(バックライト付き)
■外形寸法:967(W)×81(H)×208(D)mm
■重量:4.1kg
■発売当時の価格:69,000円
■発売開始年:1993年