【Vol.362】CLAVIA NordModular(/Rack) ~PCと組み合わせてバーチャル・モジュラー・シンセサイズ![1998年]
2018/11/28
今回ご紹介するシンセサイザーは、スウェーデンのメーカー・CLAVIA DMIが1998年に発表した「NordModular(ノードモジュラー)」です。こちらにはキーボード付きとキーボードなし(ラック版)の2つのラインナップがあって、国内価格はそれぞれ330,000円と300,000円でした(いずれも税抜)
当時のNordといえば、ノブとスイッチによる往年のアナログシンセをデジタル・モデリングで再現したNordLead/Rack(および後継機のNordLead2/Rack2)で業界の注目を集めており、NordModularはそのあとに出されたモデルということになります。
本体の見た目的には、NordLeadシリーズより鍵盤・操作子の数も減っているように見えます。一体どのようなシンセサイザーだったのでしょう。
概要
パソコン上の広い画面にてバーチャルなモジュラー・シンセサイズを可能とする、ハードウェア(NordModular本体)+専用ソフトウェアのパッケージ製品。
全ての音作り(パッチングを含む)はWindows上で動作する専用ソフト『NordEditor』で行われ、本体側の音色エディット専用のMIDI端子とパソコンとを接続することで音作りが可能に。同時発音数はパッチの複雑さに応じて4~16ボイス(※オプションボードによる拡張時でMax32ボイス)となっています。4パート、4マルチティンバー構成。
また本体に音色をメモリーできるので(最大100プログラム)、本体のみで持ち出して外部で活用することもできますね。この場合は、本体上の18個のアサイナブル・ノブに音色を割り当て、ライブでリアルタイム・コントロールするなどが効果的な使い方だったと言えるでしょう。
NordModularにおける「モジュール」について
本機を操作する上で重要なのは、モジュラー・シンセならではの「モジュール」の概念を理解しておくことでしょう。NordModularにおいては、80種を超える様々な “モジュール”が用意されています。主なモジュール・グループを以下に挙げてみましょう。
●オシレーター ●フィルター ●エンベロープ ●LFO ●エフェクター ●シーケンサー ●オーディオイン ●アウトプット・アサイン etc..
まあ言ってみればこれらは「バーチャル・モジュール」ですね。各モジュールはあらかじめシンセ・エンジンの処理能力の消費率が定められており、合計して100%以下であれば、どのような組み合わせをしても自由です。
ソフト上でのパッチング(→結びたい2つのジャックをマウスで配置するだけ)なので、多数のパッチ・コードを用意したり、接続の際の接触不良などもありません。もちろん『こんな変態なつなぎ方をしてモジュールが壊れたらどうしよう…』などと心配する必要もないでしょう(笑)
なお内部のいわゆるシンセ・エンジンはNordLead2と同等のものを搭載しているとのことです。まあ実際のところはモジュールの組み合わせ次第なので、NordLead2では作り出せなかった音色も生成可能だったのではないかと。いやむしろ、音作りの可能性で言えばほぼ無限大と言ってもいいですし、NordLeadシリーズとは別物と捉えてもよいぐらいですね。特にボコーダーの出来がよいという話はよく聞きました。
操作性について
ソフトシンセのようにマウスで画面上の様々なつまみを動かすことが可能であり、そしてそれらの情報は即座に本体側の音の変化として反映されます。
もちろん本体側のつまみやスイッチは設定したパラメーターを割り当て可能。こうすることで、本体のつまみを動かすことによって音を変化させることもできます。本体つまみの動きに合わせ、リアルタイムでPC画面上のノブもちゃんと追従しますね。このソフトは単にハード本体のエディターとしてだけではなく双方向でやり取りが可能なため、パッケージとして “ハード+ソフト一体型のシンセサイザー”といった印象です。
鍵盤付きモデルとラックモデルの違いは?
操作子(ノブ、ボタン)やLCD画面のデザインおよび配置は同じ。なお、キーボード版に比べてラック版の方はパネル面が傾いており、デスクトップでの使い勝手が良くなっているという印象ですね。ちなみにラック版はフレームにマウントすると4Uサイズとなります。
PC側の対応OSは?
発売当初のソフトウェア・バージョンではWindows95/NTに対応。のちにアップデート版としてリリースされたV3.0では、Windows98およびMacOS[8.6以上]にも対応するようになりました。この手の音楽制作向けPCエディターとしては珍しく、Windowsの方が先であとからMacintoshにも対応したという点もちょっと面白いところですね。
個人的かんそう
2000年代に入ると、PCの性能向上に伴って、PC上でモジュラーシンセにおけるケーブル・パッチングを再現できるソフトも数多く登場しました(ARTURIAのMOOG modular V、ARP 2600 Vなど)。1998年にいち早くリリースされた本機は、まさにその分野での草分け的機種と言えるかもですね。
また本機NordModularは、PCをエディット操作のためだけに使用してるため、PC(のCPU)側にはさほどの負荷がかからないような設計がなされていますね。そのためさほどパワーがないPCでも動かすことが可能となっています。
今どきのPC(のOS)で動いてくれるのかは未確認ですが、もし本機が手に入る機会があったとしたら、格安の完動Win98パソコンをオークション等で入手するだけの価値はあると思いますよ。アナログシンセの構造(内部結線)を学習するための教材として使ってもよいと思います。
関連記事:
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「CLAVIA MicroModular ~NordModularの心臓部を取り出した低価格モデル」
仕様
■音源方式:バーチャル・アナログ・シンセシス
■鍵盤(NordModular Keyboardのみ):25鍵
■同時発音数:4~32ボイス(拡張時) ※ただしパッチの複雑さに依存
■マルチティンバー:4パート
■ユーザー・メモリー:100
■エディターの動作環境:
OS→Windows95/NT(のちのV3.0 Software版ではWindows98にも対応。またMacOS[8.6以上]でも対応するようになった)
CPU→Pentium 90MHz以上
■外形寸法:
NordModular Keyboard 473(W)×70(H)×264(D)mm
NordModular Rack 423(W)×118(H)×176(D)mm
■重量:
4.7kg(NordModular Keyboard)
3.2kg(NordModular Rack)
■発売当初の価格:
330,000円(NordModular Keyboard) ※税抜価格
30,000円(NordModular Rack) ※税抜価格
■発売開始年:1998年