【Vol.326】HAMMOND XB-1 ~XB-2の6年後に登場したハモンド直系デジタル・オルガン[1997年]
2018/11/28
今回紹介するキーボードは、ハモンドスズキの「XB-1」です。発売は1997年末頃、定価は128,000円でした。1段鍵盤のコンボオルガンとしては前モデルXB-2から6年余りを経てリリースされた、XB-2の後継機と見ることもできますね。
まあその間には二段鍵盤の「XB-5」とか、デジタルB-3とも言うべきプロ仕様の「XB-3」、はたまた手軽に持ち運べるモジュール「XM-1」などが発売されていたのですが、様々なキャラクターの機材(ピアノ、エレピ、シンセ)セットの中の “オルガン担当機”としては、本機のようなドローバー搭載一段鍵盤が結局使いやすかったりします(個人的には)。
ではXB-2との比較もちょいちょい挟みつつXB-1を紐解いていきましょう。
概要
同社のXB-2を大幅にグレードアップさせたドローバー搭載(1段)コンボオルガン。同時発音数は32音で、61鍵の鍵盤にはベロシティも付いています。B-3のトーン・ホイール・サウンドをサンプリングした高品位な音源を装備し、プリセット数、エディット機能なども強化。
XB-2と比べると本体重量および価格も抑えられ、オルガン専用機(鍵盤・ドローバー付き)を、ライブ/レコーディング用に手軽に導入したい人向けの一台といった感じでした。
鍵盤部について
鍵盤部の弾き心地はXB-2とは若干異なっていて、当時の一般的なシンセ鍵盤よりも若干弾き応えのあるウェイト鍵盤といった感じ。なお見た目は一般のシンセ鍵盤であり、B-3に見られるスクエア・フロント・タイプの鍵盤ではありません(→それはのちの上位機種・XK-2に採用された)。
XB-1の鍵盤にはオルガンなのにベロシティ(→押す速さを検知)が付いており、実は他音源をつないだ際のマスターキーボード的な使い方もできますね。そういえばドローバーの下にはこっそりピッチベンドとモジュレーション・ホイールなんかも見えます。
コントローラー部
9本のドローバー(ハーモニック・バー)および、ビブラート/コーラスのエフェクト・スイッチなど伝統的なコントローラー部は鍵盤左部に集約(※パーカッション・スイッチはパネル中央に配置)。本機ではさらに内蔵LESILIEシミュレーターのスピード切替スイッチ、リバーブおよびオーバードライブの独立ノブなどが配されており、オルガンならではのリアルタイム・コントロールがやりやすくなっているという印象です。
なおXB-2では鍵盤部の下に設置されていたLCDやその他スイッチ類が、フロントパネル上部にお引越ししました。個人的にはXB-2の「演奏中のスイッチ類誤操作」に悩まされていたので(笑)、このスイッチ位置変更はよい改善点だと思います。半面、XB-2のような “平らで広々としたパネルトップ”は犠牲となってしまったので、2段積みにする際は別途スタンドを設置しましょう。
あとXB-2と比較するとちょっと軽くなってますね(XB-2→13.5kg、XB-1→11kg)。価格も180,000円→128,000円と大幅ダウンを果たし、ハモンド入門者に対して敷居がぐっと下がった感じです。
XB-1/(株)ハモンドスズキ 雑誌広告より画像引用
音源部について
本家HAMMOND B-3を忠実にサンプリングした波形とサイン波を組み合わせて音を合成する「VASE II+ DRBシステム」を採用。これによりリアルかつ様々なオルガンサウンドのバリエーションを楽しむことができます。本体には64のプリセットが用意されていて一発で設定を呼び出すことが可能。
個人的にはXB-2の時のサウンドのクセみたいなものは本機ではあまり感じられず、良くも悪くも優等生的な印象と言いましょうか。。本機の前に出されたモジュール・XM-1の音源がベースになっているのかな?という感想です(XB-5とも違った感じ)。まあ当時の最新モデルということでレンジの広さや音抜けはよかったと思います。
内蔵LESLIEシミュレーター
本機ではデジタルLESLIEとも言うべきロータリー・エフェクト・シミュレーターが、プリセットで5タイプ内蔵されています。
L#1:ノーマル
L#2:ロック
L#3:ソフト
L#4:パーカッション・ストレート
L#5:ハード
どのレスリー・タイプと接続するかをプリセット単位で設定することができるということ。もちろん自力でセットアップすることもできますね。ちなみにL#1は「Leslie 147」をシミュレートしたものだそうですよ。
もちろん本機を本物のLESLIEスピーカーに直結することも可能。XB-2では11ピンタイプだったのが、本機では8ピンDINタイプに変更されていますね。
→ サウンドハウスで「LESLIE LC8-7M」の価格をチェック
純正エクスプレッションペダルについて
オルガンならではの抑揚を付けた演奏表現に必要な「エクスプレッションペダル」ですが、本機対応の純正ペダルは以下のラインナップがあります(2017年末現在)。いずれもハモンドオルガンだけでなく、一般のキーボードでも使用可能です。
EXP-20
軽くて比較的安価なモデル。ペダルとケーブルは直付け。
→ サウンドハウスで「HAMMOND EXP-20」の価格をチェック
EXP-50
安定性の良い重量級ボディと深いストロークで、オルガン演奏に最適。ペダルとケーブルは直付け。
EXP-50J
基本仕様はEXP-50とほぼ同じですが、こちらはペダルとケーブルが取り外し可能になっています。
セットアップについて
3パートの音源を内蔵しており、外部MIDI鍵盤やペダル鍵盤などを接続することにより、本家B-3のようなフル・マニュアルのセットアップにも対応可能。スプリット機能により、本機1台だけでも3パート中の任意の二つ(→アッパー+ロワー、アッパー+ペダルなど)を鍵盤にアサインすることができます。
限定モデル・XB-1Gについて
1998年に発売されたXB-1の特別モデル。内部仕様は変わりませんが、ボディカラーがシャンパルゴールドになっています。これはスズキ楽器創立45周年を記念して限定発売されたものらしいですね。広告はモノクロで申し訳ない。。
XB-1/(株)ハモンドスズキ 雑誌広告より画像引用
つぶやき的な
XB-1というと90年代末に増田隆宣さん(→B'zのライブサポート等でもおなじみ)が頻繁にライブで使用していたというイメージが強いですね。。浜田麻里さんや前田亘輝(TUBE)さんの当時のライブでもよく登場していました。ちなみにXB-1のデモソングの1曲目は増田さんが演奏したものが採用されているとのこと。機会のある方は確認してみてください。
関連記事(ハモンドスズキ オルガンシリーズ):
「HAMMOND XB-2(その1) ~ファースト・オルガン回顧録 [1991年]」
「HAMMOND XB-5 ~可搬性に優れた90年代の2段鍵盤・ハモンド [1992年]」
「HAMMOND XM-2 ~お手頃ハモンド [2006年]」
仕様
■音源方式:VASE II+DRBシステム
■最大同時発音数:32音
■鍵盤数:61鍵(ベロシティ付き)
■インターナル・メモリー:64プリセット(8×8バンク)+1チャンネル
■内蔵エフェクター:
デジタル・スキャナー・ビブラート/コーラス(V1/V2/V3/C1/C2/C3)
LESLIEシミュレーター(2ローター・デジタル)
■ホイール:ピッチベンド、モジュレーション
■MIDI:3パート・マルチティンバー(アッパー/ロワー/ペダル)
■外形寸法:1160(W)×88(H)×319(D)mm
■重量:11kg
■発売当時の価格:128,000円(税抜)
■発売開始年:1997年末頃