【Vol.263】Oberheim OB-Xa ~ヴァン・ヘイレンの『ジャンプ(Jump)』のシンセ音はこれ[1981年]
2018/11/26
今回はOberheim(オーバーハイム)の「OB-Xa」というシンセサイザーを紹介してみましょう。発売は1981年で、同社のOB-Xの2年後に発売された直系の後継機になります。
このOB-Xaという機種といえば、何と言ってもヴァン・ヘイレンの『ジャンプ(Jump)』(1984年)という曲で大々的にフィーチャーされたことで知られるシンセ・ブラスの音色が有名ですね。全体的に荒々しい音色キャラクターが特徴で、同社の初期OBシリーズ3兄弟(OB-X,OB-Xa,OB-8)の中では一番のやんちゃ坊主といった個人的印象です(笑)
OB-Xaは、先代機である「OB-X」の内容を大きく踏襲しているため、本記事ではOB-Xとの違い(バージョンアップ点)を中心に展開してみたいと思います。
関連記事:「Oberheim OB-X ~OBERHEIMサウンドが詰まったアナログ・ポリシンセ」
概要
1979年に発売されたOB-Xの機能増強モデルといえるポリフォニック・アナログ・シンセサイザー。MIDIは未実装です。OB-X同様にボイス・カードの搭載枚数により最大8音までのボイス数を選択可能。
OB-Xとの最大の違いはデュアル・フィルターが装備されたこと。またキーボード部分が(内部的に)分離でき、同時に2種類の音を出すこともできるようになっています。
デザインについて
OB-Xからのマイナーチェンジとはいえ、デザインは刷新され、黒地に青い横方向のピンストライプとなっています。クリーム色と並んで “オーバーハイムらしいデザイン”が本機によって確立されたという感じですね。以前本ブログでも紹介したプログラマー「ACCESS Matrix Programmer」もこのデザインを踏襲した感じに見えます。
ちなみにスイッチ類の数・配置はほぼ変わっておらず、操作感はOB-Xとさほど違和感はないと思います。
基本スペック
(1ボイスにつき)2VCO、2VCF、2エンベロープ・ジェネレーター、1VCA、LFO(サイン波、矩形波、S/H)といった構成。
着目点といえばフィルター部で、OB-Xでは見られなかったデュアル・フィルター(ローパス 2-pole/4-poleの選択が可能)となっています。これにより従来の12dB/oct.に加え、24dB/oct.でのフィルタリングによる音色作りも可能になりました。
またオシレーター2はフィルター・エンベロープによって変調ができるようになっています。他にも、ノイズ・ジェネレーターにも若干の改良が加えられているそうです。
スプリット・キーボードについて
設定位置を任意に変更できるスプリット・キーボードを採用。全く異なるサウンドを鍵盤域によりスプリットして配置したり、レイヤー(ダブル)で演奏したりといったことも可能になりました。
価格について
本機リリース時にオーバーハイムを国内で扱っていたのは宝商株式会社という会社(代理店)であり、当時のカタログではOB-Xaは2ボイスから8ボイスまで全7種類のラインナップがありました。価格は以下の通り。
2ボイス:124万円、3ボイス:136万円、4ボイス:148万円、5ボイス:160万円、6ボイス:172万円、7ボイス:184万円、8ボイス:196万円(※いずれも国内販売時での価格)
ボイスカードは1枚につき2ボイスのはずなのですが、奇数のボイス数というのはどういうことなのでしょうか?? うーん、すみませんがよく分かりません。。
まとめ的な
OB-Xaではフィルターのチップそのものがカーチス製のCEM3320というものに変更されており、デュアル・フィルターということもあって、(それまでのOberheimシンセとしては難しかった)微妙なシンセサイズにも対応するようになりました。
分厚くヘヴィな本機のサウンドは、のちのOB-8や先代のOB-Xよりもキャラクターが強く出ているという話はよく聞きますね。『ジャンプ』の大ヒットによる効果も大きかったと思いますが、オーバーハイムならではのサウンド(→シンセブラス)を象徴するような一台として現在まで名を残しています。
個人的おもひで話
ヴァン・ヘイレンの『ジャンプ』といえば、僕がバンド駆け出しの頃に、メンバーから「せっかくメンバーにキーボードが居るんだし次のライブでJUMPやってみようよ!」ということで人前でも演奏したことがあって、個人的に強く印象に残っている曲といったところです。今から20数年前とかそんな時代です。
当時買ったばかりのRoland XP-50でシンセ・ブラス音色を重ねに重ねて、当時としては『そっくりの音色出来ちゃった!』と自己満足の世界に入ってました(汗)
関連記事:「Roland XP-50 ~マイ・ファーストシンセ回顧録[1995年]」
でもって演奏面から思い出すに、『ジャンプ』はシンセで始まる(比較的簡単な)イントロが余りにも有名なのだけど、間奏部分のアルペジオは初心者にとっては結構な壁ですよね。。途中から高速になったり、終わりにだんだんゆっくりになる辺りはちょっと難しいかもしれません。
でも全体的には “ギタリストが作ったキーボード・パート”ということでさほど凝ったことはしていないのが救いで(笑)、諦めず根気よく練習を積み重ねていけばいつかは弾けるようになると思いますよ! って誰に対して励ましてんだか。。
関連記事(オーバーハイムOBシリーズ):
「Oberheim OB-1 ~フォースは君と共にある[1978年頃]」
「Oberheim OB-X ~OBERHEIMサウンドが詰まったアナログ・ポリシンセ[1979年]」
「Oberheim OB-Mx ~MIDIアナログ・シンセ・モジュール、そして5Uの威圧感!」
仕様
■鍵盤数:61鍵
■最大同時発音数:8音(ボイスカード搭載枚数により異なる)
■構成:2VCO、2VCF(ローパス 2-pole/4-pole選択可能)、2エンベロープ・ジェネレーター、1VCA
■外形寸法:1016(W)×152.4(H)×508(D)mm
■重量:20.41kg
■発売当時の価格:
1,360,000円(3音)、1,480,000円(4音)、1,600,000円(5音)
1,172,000円(6音)、1,840,000円(7音)、1,960,000円(8音)
■発売開始年:1981年