【Vol.240】KORG LP-10 ~コルグ初の電子ピアノ、移調もできるよ![1980年]
2018/11/26
今回ご紹介するキーボードもマニアックですね。。コルグ(京王技研工業株式会社)が1980年に発売した電子ピアノ「LP-10」です。当時の定価は110,000円。
アンプとスピーカーは本体に内蔵、しかも比較的軽量(10kg)ということで、以前本ブログでも紹介した「Roland EP-09 ~オート・アルペジオ機能を電子ピアノとして初搭載」が類似機種として真っ先に思い出されますね。しかもどちらも61鍵であり1980年の発売です。
Roland EP-09よりも約1万円高い価格設定ですが、本機LP-10には独自(独特)の仕様が見られますね。そしてコルグ初の電子ピアノでもあります。
概要
スリムな61鍵ボディに、モニター・スピーカー(2W+2W)を内蔵したお手軽エレクトロニック・ピアノ。本機の特徴的なところは、12半音階で移調可能な「キー・トランスポーズ機能」を備えているところ。またコーラス、グラフィックイコライザーなども装備し、ある程度の音作りにも対応可能といったところです。
内蔵音色について
プリセット・トーンは「ピアノ」「エレクトリック・ピアノ」「クラビ」の3種のみ。音色スイッチ(ON/OFF)はパネル上にそれぞれ配されており、複数のトーンを重ねることもできます。逆に言うと、全ての音色スイッチをOFFにすると何も発音しません。「何じゃそりゃ!」とツッコみたくなるような設計ですね。。なお音色をミックスした場合、個々の音量の変更はできません。
ちなみに当時の雑誌広告には『微妙なニュアンスから豊かな響きまで多彩で自在なエレクトロニックピアノ』などと書かれているのですが、実際のところはイニシャルタッチ(ベロシティタッチ)は未装備なので、ニュアンスもへったくれもないと思います(笑)
キー・トランスポーズ機能について
本機の目玉ともいえる機能です。これは、パネル上に配されている「KEY TRANSPOSE」という可変スライダーを移動することで、出音のキーを半音単位で変化させることができます。一番右の状態がいわゆる通常のキー(C)で、スライダーを左にずらすたびに半音ずつキーが落ちていくといった感じです(Max12半音=C~オクターブ下のC)。
キー・トランスポーズ(移調)機能は、今どきのシンセやデジピにおいては当たり前中の当たり前的機能なのですが、横方向の物理セレクターで移調が可能というのは、今見ても非常に斬新な設計だと思います。
当時は『フラットやシャープがいっぱい付いた曲でも、全てCキーで弾ける!』ということで非常に話題になったのです。でもLP-10のそれは、キーを下げることしかできない仕様になってるんですよね(上への移調はできません)。。おそらく、当時歌モノの伴奏をする際、「キーが高くて唄いにくいので下げて欲しい」という歌い手さんに配慮する設計になっていたとも想像できます。
音作りについて
本機は基本的にシンプル設計なので、大げさに “音作り”と言えるかどうかも自信がないのですが、ある程度のエディットは可能でした。
CHORUSつまみ
内蔵コーラスはSLOW-FASTが無段階で変更可能となっています。いわゆるRATE(スピード)調整ですね。なおコーラスの深さ(DEPTH)を変更するパラメーターはありません。臨場感のあるサウンドを手軽に響かせることができるという感じで、まあ無いよりはいいでしょう。。
6バンド・グラフィック・イコライザー
パネル上に配された6つのスライダーはグラフィック・イコライザーとなっていて、周波数は下から100Hz、200Hz、400Hz、800Hz、1.6kHz、3.2kHzとなっています。特に低音域の可変にウェイトを置いているという意図が感じられますね。。仮にバンド・サウンドに混ぜたとしたら低音部のカット/ブーストを自在にできるので、元々ステージとかでの使用も想定されていたのかもしれません。
なお電子ピアノのパネル上にグライコを搭載するというのはKORGお得意といった感じですね。
SUSTAINレバー
本機のSUSTAINは3種類の設定(エンベロープ)が用意されています。一番上はいわゆるオルガンっぽい感じ(→鍵盤を押している間は音が減衰せず持続する)、真ん中はピアノっぽい感じ(→鍵盤を押し続けている間に音量が減衰する)、一番下は打鍵後即座に減衰が始まる感じ、といったところです。
いわゆるオルガン・エンベロープが選択可能だったのに、本機にオルガン音色が内蔵されていないのはちょっと個人的に納得できない部分だったりします(笑)
DECAYつまみ
音が減衰する時間の長さを調節できるもの。シンセにおけるアンプ・エンベロープ(ADSR)の “D”の部分ですね(ただしディケイ・レベルは設定できない)。また上記のSUSTAINレバーで、一番上のオルガン・エンベロープを選択した時には機能しません。
KORG LP-10/京王技研工業株式会社 雑誌広告より画像引用
個人的かんそう
エニイ・キー(どんなキーの曲)でも弾けるというのはキーボーディストにとって大きなスキルと言えると思うのですが、初心者にとっては大きな壁であることは間違いないです。。セミプロ級のキーボーディストでも「アドリブ・ソロが自在にできるのはCかFのメジャースケール系のみ」という人も少なくないです。また黒鍵がいっぱい入っている曲というのも(白鍵のみの曲と比較すると)一般に難しいですよね。
そんな難題を手軽に解決できるように設計された本機のキー・トランスポーズ機能は、低価格帯ということもあって特に入門者に歓迎されたといった感じです。
仕様
■鍵盤数:61鍵
■内蔵音色:ピアノ、エレクトリック・ピアノ、クラビ
■内蔵エフェクト:コーラス、イコライザー(6バンド)
■外形寸法:893(W)×125(H)×315(D)mm
■重量:約10kg
■価格:110,000円(免税価格は102,100円)
■発売開始年:1980年