1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.236】YAMAHA CP-30 ~CP-70と同時発売された“アナログ電子ピアノ” [1976年]
2018/11/26
今回は70年代の古ーいキーボードを紹介してみたいと思いますよ。ヤマハが1976年に発売した「CP-30」というエレクトロニック・ピアノです。当時の定価は285,000円。“エレクトロニック・ピアノ”というのは早い話電子ピアノのことなのですが、今日私たちが一般に思い浮かべる電子ピアノとは少し違っています。
70年代キーボードのキーワードといえばそう、“アナログ”ですね。ただし本機はRhodesやWurlitzerとも全く異なる、「アナログ電子ピアノ」とも言うべき商品として世に出たのです。
なおYAMAHAのCPといえば、一般に同社の電子ピアノ(電気式ピアノ)に冠されるシリーズ名として知られています。とはいえグランドピアノのような打弦方式のCP-70/80、近年のデジタル・ピアノ(CP1、CP4、CP40等)など色々あるので、はじめにCPシリーズについてさらってみることにしましょう。
ヤマハCPシリーズについて
同社のCPシリーズは音源方式の観点により、大まかに以下の3つの種類に分類することができます。
打弦方式の電気ピアノ(70年代中期~80年代中期)
CP-70/80などに代表される、実際に弦をハンマーで叩いて音をアンプで増幅する方式の電気ピアノ。単なるグランドピアノの代用品にとどまらない存在感を示し、80年代の音楽シーンを彩った代表的なピアノ音色でもあります。鍵盤歴の長い人にとっては「ヤマハのCP=CP-70かCP-80」と認識されるケースも多いでしょう。
アナログ音源の電子ピアノ(70年代中期~80年代初頭)
電子回路によりピアノ(っぽい)音色を発音する方式のもの。音色はいわゆるアコースティック・ピアノとはまるで異なるものであり、かといって上記のような打弦式電気ピアノとも全く違います。どちらかというと「(当時の)電子オルガンの音色を減衰音にしたもの」というのがしっくりきます。特に初期のものは全鍵ポリフォニックとなっており、その頃の電子オルガンのハード設計を大きく踏襲している感が伺えます。
今回の記事の主役であるCP-30をはじめ、CP-20、CP-10、後継機のCP-35、CP-25、CP-11など様々な機種が登場しました。
デジタル音源の電子ピアノ(2000年代~現在)
サンプリングしたリアルなピアノ音を搭載したデジタル電子ピアノ。CP1、CP5、CP4 STAGEなどに代表される “現代の”電子ピアノといった感じです。
CP-30概要
当時としては画期的だった「タッチ・レスポンス機能」(→タッチの強弱によって音の大きさが変化する)を備えていた、電子発音方式の76鍵ピアノ。なお本体とケースは一体化しており、ふたを外して組み立て直すことで本機専用のスタンド(脚)にもなるという便利設計でした。
音源部について
2系統の独立音源(I/II)を持っており、それぞれに4つの音色(ピアノ1、ピアノ2、ピアノ3、ハープシコード)を備えています。つまりパネル上には8個の音色タブレット(ボタン)が並んでいるということになります。特に本機のハープシコードの音は、当時としては「きらびやかな音」ということで斬新だったそうです。
それら4つの音色は同時に押すことで音を重ねることもできたので、組み合わせによって様々な音色作りも楽しめたそうです。なお音源Iは全体的に丸みのある音、音源IIはやや明るい感じの音になっています。
また本機ではディケイ・タイム(→ADSRにおける、“音が最大になった後、完全に消えるまでの時間”)をつまみにより調節可能です。しかもこちらも完全2系統。例えば音源Iと音源IIで同じ音色を選んで、それぞれのディケイ・タイムの差を大きくずらすことにより、アタック感のある音色作りもある程度可能でした。
ピッチ・コントロールについて
この頃の電子鍵盤によく見られたピッチ・コントローラー(つまみ)を搭載しています。まあアナログ回路なので、本来はピッチを微調整する時に使うのが一般的でした。でもってCP-30の面白いところが、このピッチ・コントロールも2系統装備されているところ。つまり、音源Iと音源IIのピッチをわざとずらしてピアノのコーラス感を出したり、極端にずらしていわゆるホンキートンク・ピアノの音色を作ることもできたという感じですね。
トレモロについて
こちらも2系統のトレモロを内蔵。スピードおよび深さはつまみにより調節可能であり、音源Iと音源IIのどちらか一方にかけるといったこともできます。
CP-30/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
個人的かんそう
いわゆるトランジスタ発振による分周方式で全鍵ポリフォニックを実現しているのですが、音はというとやはりいい感じのペラペラ具合ですね。。これはこれで使いどころもあるというものです。バンドに混ざると独特の個性を発揮してくれるかもしれません。
本機がちょっと個性的なのが、音源のみならずピッチやディケイ、トレモロまでも完全2系統に分離されているところ。当時の日本ではまだ「シンセサイザー」という楽器自体があまり認識されていなかったのですが、これは設定の組み合わせによってはちょっとしたシンセサイザーと言えなくもないと個人的には思ってたりします。いわゆる「家庭向け電子ピアノ」のカテゴリーでそこまで盛り込んだというのは画期的だったと言えるかもしれません。
関連記事(ヤマハCPシリーズ):
「YAMAHA CP33 ~シンプル・ステージピアノ[2006年]」
仕様
■鍵盤:76鍵(タッチ・レスポンス機能付き)
■音源:電子発振方式
■最大同時発音数:全鍵ポリフォニック
■内蔵音色:ピアノ1、ピアノ2、ピアノ3、ハープシコード
■外形寸法:1276(W)×181(H)×641(D)mm
■重量:54kg
■発売当時の価格:285,000円
■発売年:1976年