1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.112】Roland JUNO-6 ~夢の10万円台ポリフォニック・シンセ![1982年]
2018/11/25
今回ご紹介するシンセサイザーは、ローランドから1982年に発売された「Juno-6」です。発売当時の価格は169,000円でした。うーんこれも昔勤務していた楽器屋に(中古品として)長いこと居たなぁ。。
当時の背景をさらりと
本機が発売された80年代初期は、それまで高値だったポリフォニック・シンセが低価格になってきて、「いよいよ夢の10万円台のポリシンセが!」という感じで登場した一機種がこのJUNO-6です。先発のJupiter-8(定価980,000円)の弟分みたいなものであり、ポリフォニック・シンセのエントリーモデルといったところでしょうか。169,000円という価格設定は当時画期的なものでした。
余談ですが、ジュノ(ユーノーとも)はギリシャ神話における主神・ジュピターの妻(あるいは姉)に当たるそうです。ということは弟というよりも姉みたいなヨメといった位置付けでしょうか。何だかよく分かりませんね。。
DCO(デジタル・コントロールド・オシレーター)搭載シンセ!
JUNO-6のオシレーターはDCO1基のみであり、本機の大幅コストダウンの要因はそこに由来する部分が大きいです。いわゆるデジタル・コントロールによる音源部ということですね。これは高い周波数で発振する発振器を分周することでピッチを得る、という原理だそうです。ユーザーにとっては、電源を入れれば即使えるというピッチの安定性により、取り扱いが非常に楽になりました。
また、現在の内蔵エフェクトのはしりと言えるような「コーラス・エフェクター」を搭載しています。このコーラスで1DCOに音の厚みを加えるという使い方が定番でした。
音作り
EG(エンベロープ・ジェネレーター)は1基のみであり、1DCOという心臓部ということもあり、JUPITERを比較すると弱い部分があることは否めません。とはいえサブオシレーターやフィルター(ローパス、ハイパス)、さらにはフィルター・エンベロープの極性スイッチ(→エンベロープを反転した形でかけることが可能)なども備えており、音作りは意外と幅広く行えると思います。
なおアルペジエーターやキー・トランスポーズ機能は実装していたものの、音色メモリーは搭載されていませんでした。
JUNO-6/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
個人的かんそう
本機のDCOは高周波で発振するチップを使って音程を作り出す方式であり、今日のような完全デジタルなエンジンということでもなく、実際の出音もどこかアナログっぽくも感じます。本機の独特な軽妙な音色キャラクター(特にコーラスをかけた時の感じ)は、今聞くと新鮮に感じるかもしれません。パッド系やビキビキした音は個人的に好きでした。
なおJUNO-6の後には、音色メモリーを搭載した「JUNO-60」、そしてMIDIに対応した「JUNO-106」へと続きます。さらには平成のJUNOにも(少なくとも名前だけは)続くといった感じですね。
関連記事(ローランドJUNOシリーズ):
「Roland JUNO-60 ~音色メモリーが可能になったJuno [1982年]」
「Roland αJUNO-2/αJUNO-1 ~JUNO-106の後継機 [1985年頃]」
「Roland MKS-50 ~αJUNOのラック版[1986年]」
「Roland JUNO-D ~21世紀によみがえったJUNO [2004年]」
レッドスネーク、カモ~ン
本機が発売される少し前まではまだVCOが主流であり、特にポリフォニック・シンセでは多くのVCOを必要とするため、電圧が次第に変化しピッチ(音程)が狂ってくることはよくあることでした。結果、シンセソロが「狙ってないのにインドネシアだかインドの音楽」みたいな感じになっていったそうです(笑)。たとえオシャレなフレーズを弾いても、です。。
当時安定したピッチで演奏ができるようになったポリシンセというのは、それだけで評価に値するのかもしれませんね。
仕様
■鍵盤:61鍵
■最大同時発音数:6音
■DCOセクション:LFOモジュレーション、パルス・ウィズ・モジュレーション、PWMモード・スイッチ、ウェーブフォーム(パルス/ノコギリ/サブオシレーター)
■VCFセクション:カットオフ・フリケンシー、レゾナンス、ENVモジュレーション、ポラリティ・スイッチ、LFOモジュレーション、キー・フォロー
■LFOセクション:レイト、トリガー・モード・スイッチ、ディレイ・タイム
■重量:11kg
■価格:169,000円
■発売開始年:1982年