1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.72】Roland MC-8 ~デジタル・シーケンサーの源流[1977年]
2018/11/25
今回は、1977年にローランドから発売されたデジタル・シーケンサー「MicroComposer MC-8」についてのお話です。
今となってはフリーでソフト・シーケンサーが手に入る時代ですが、黎明期のシーケンサーは非常に高価だったのです。シーケンサーの歴史を紐解くと必ず登場するこの「Roland MC-8」。どのような機種だったのかちょっと記してみましょう。
アナログ・シーケンサーからデジタル・シーケンサーへの転換
元々シーケンサーは、アナログ・シンセの時代(→おおよそ1970年代中頃)に、シンセサイザーを自動演奏できないかという発想から生まれました。当初のシーケンサーは、大量のノブを装備し各数値を出力するアナログ装置として、シンセサイザーのモジュールに組み込まれているケースが多く見受けられました。これがいわゆる「アナログ・シーケンサー」です。
ノブの値は「CV(コントロール・ボルテージ)」、送り出されるタイミング情報は「GATE(ゲート)」といい、このアナログ・シーケンサーにより、CV/GATE端子を持ったシンセサイザーをコントロールできたというものです。
しかし扱える情報量が少なく制御も難しかったことから、もっと大量にかつ正確に演奏情報を記録・制御できるものがないのか?という考えのもと開発されたのがデジタル制御のシーケンサーです。そこでローランドから、現在のシーケンサーの原型ともいえる「MC-8」が1977年頃に誕生しました。
デジタル・シーケンサー「MC-8」登場
これ以前にもOBERHEIM(オーバーハイム)などでアナログ・シーケンサーが開発されていましたが、MC-8は8系統のシンセサイザーをコントロールでき、5,400音もの情報を入力可能とした非常に革新的なデジタル・シーケンサーでした。「1oct/V」発音方式のアナログ・シンセサイザーであれば、メーカー・機種を選ばず使用できたのも大きかったです。ちなみに販売価格は120万円!
MC-8で入力できるデータには、CV(→音程)、ステップ・タイム(→音符の長さ)、ゲート・タイム、テンポ、MPX(→マルチプレックスの略。最大6個までのゲートのオン/オフの出力が可能)の5種類がありました。
「MC-8」の使われ方
非常に高価だったということもあり、購入できた人も当時の最先端の音楽人など、ほんの一握りだったようです(クラフトワーク、YMO、冨田勲、etc..)。このMC-8を駆使して本格的に音楽制作(およびライブ)に取り入れたのがYMOというのはちょっと有名な話ですね。
データは市販のカセットテープに書き出すことができましたが、ロードに時間がかかるため(→ほぼ曲の長さと同じ)、初期のYMOライブではシーケンスを使う曲と使わない曲を交互に演奏していたそうです。今考えると、YMOには(ライブで)非常に長い曲もありましたし、次の曲までの時間稼ぎの目的も兼ねていたのかもしれません。その後、MC-8の2台使いで交互にロードすることで、シーケンス曲の連続演奏を可能にしたとのことです。
また、ライブ中に熱暴走によってデータが飛んでしまったというエピソードでも知られています。ライブで長時間稼働させておくことを前提に作られておらず、設計時点で十分な熱対策を施していなかったそうです。
余談ですが
YMOの昔のライブ映像などを見ると、メンバー全員がヘッドフォンをして演奏しているのを確認できます。これは結果的にファッションとしても取り入れられることになり、当時の一般のエレクトロ・バンドにとっても、「ライブでヘッドフォンしてシンセ演奏」というのはおしゃれだったのかもしれません。
YMOメンバーがその時ヘッドフォンでモニターしていたのは、もちろんシンセのライン出力音声等ですが、MC-8やモーグIIIによるドンカマ(→いわゆるYMOクリック)も含まれていたらしいですよ。松武秀樹さんの仕事ですね。
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仕様
■メモリー容量:標準4KByte、オプション追加により最大16KByte(標準約1,200音~最大5,400音)
■テンポ:最大254(512sec~10ms/1ステップ)
■入力:テンキー、外部キーボード
■外形寸法:460(W)×155(H)×406(D)mm
■重量:11kg
■発売当時の価格:1,200,000円
■発売開始年:1977年