キーボーディスト、脱初心者を目指す

ピアノ、シンセサイザー、オルガンとか鍵盤楽器もろもろ。関係ない記事もたまにあるよ

KAWAI 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.317】KAWAI MP9000 ~優れた鍵盤タッチを備えたステージピアノ[1998年]

2018/11/28

 

 

 今回ご紹介するキーボードは、河合楽器の「MP9000」というステージ・ピアノです。発売は1998年、発売当時の価格は248,000円でした。スピーカーは内蔵していません。

 

KAWAI MP9000

 

 ひとことでKAWAIの電子ピアノといっても様々なシリーズ展開がされているのですが、この「MP」と頭に付くシリーズは一貫してライブステージでの演奏を意識して作られた設計となっています。2017年11月現在の現行製品としてはMP7、MP11がありますね。そして確か本機MP9000はMPシリーズ最初のモデルだったと記憶しています。
 
 
 関連記事:「ステージ・ピアノとはそもそも何なのか ~「電子ピアノ」とは違うの?
 
 
 

鍵盤部について(個人的印象入り)

 鍵盤メカニズムは『AWAグランド鍵盤スーパー』と名付けられており、バネなどの不自然な鍵盤戻りのパーツを一切使用せず、鍵盤の自重のみで動作する構造となっています。もちろんアクション自体はアコースティックピアノのそれと全く同じではないのですが、構造的には非常に近いと言えるでしょう。
 
 
 また本機では木製鍵盤を採用。鍵自体の均一な密度により全体的にバランスの取れた荷重を得ることができ、リアルなタッチ感を実現していると思います。バネを用いていないので戻りも自然な感じ。また鍵の奥行き(→鍵の全長)が比較的長めに設計されており、仮に鍵盤の “奥側”で弾いてもあまり違和感なく押し込めるといった印象です。
 
 
 なお木製鍵盤の特性については以前本ブログでも取り上げていますね。よろしければご参考までに。
 
 関連記事:「そもそも木製鍵盤のどういったところがよいのかを調べてみた ~電子ピアノの鍵盤について
 
 
 

音色について(個人的印象入り)

 ピアノ系(アコースティック/エレピ)を中心に16音色を内蔵。アコースティック系では、同社の最高級コンサート・グランド「EX」をステレオ・サンプリングしたものを含む5種類がプリセットで収められています。キャラクターとしては中低域が華やかに響くややクラシカルな感じで、文字通り欧州のクラシック曲によく合うと思います。
 
 
 逆に “アメリカン”なロックとかには素の音ではちょっと合わない印象ですね。。本機には4バンドのイコライザーを内蔵しているので、そこである程度の調整は可能です。なおエフェクター的な効果としては、他にもリバーブ(全7種)や各種エフェクト(コーラス、トレモロ、フェイザー、オーバードライブなど。全21種)を搭載しているので、ピアノ系はもちろんそれ以外の音作りにもある程度対応可能といったところです。
 
 
 あと面白いのが、本機ではシンセサイザーに見られるフィルターやエンベロープ(ADSR)といったパラメータも用意されている点。パネル上にはスライダーおよびツマミが装備されており、素早いエディットも可能だったりします。内蔵音色の中にはクラビ、ストリングス、ベースなどもあるため、ピアノ音色に飽きたらそういった音色をターゲットにエディットで遊んでみるのもいいかもですね(もちろんピアノ音色をエディットすることも可)
 

KAWAI MP9000

※スタンドはオプション

 

マスター・キーボードとして

 内蔵音源2音色+外部音源2音色を任意に組み合わせて演奏することが可能(※ただしMIDI OUT端子は1系統のみ)。これらはそれぞれに発音域やトランスポーズを設定することができるので、複数音源を駆使した「レイヤー」「スプリット」にも対応します。パネルにある4つのツマミに任意のコントロール・チェンジ・ナンバーを割り当てて送信することも可能。
 
 
 なお本機鍵盤はアフタータッチには対応していませんが、エクスプレッションペダルなどによりMIDIアフタータッチ情報を送り出すことはできますね。
 
 
 MP9000はマスター・キーボードのベストセラー機「KURZWEIL MIDIBOARD」のようにパネルが傾斜しているデザインを採用しているのですが、MIDIBOARDのように上部の平面部分が広くないため別鍵盤を上に乗せるのは難しいです。ここはマスター・キーボードとしてちょっともどかしい点と言えるかもですね。。

 

 

 

重いよ

 本機であえて難癖?を付けるとしたらその重量でしょう。スタンドなどを含まず純粋に本体だけで34kgあります。1980年代初頭に登場した88鍵ピアノタッチの電子キーボードにおいては30kg超えは珍しくなかったのですが、90年代後半にもなると “本体の軽さ”も一つのセールス要素だったように思います。でもメーカーさんはそこを分かっていた上で妥協無く演奏性を優先させたのでしょう
 
 
 ステージごとに運んで都度スタンドに乗せることを考えるとこの34kgはちょっとキツいですね。。タッチの良さにこだわり、「本機じゃなければステージで弾く気がしない」というプレイヤーさんは覚悟を決めましょう。さもなくばローディーを雇いましょう(笑)
 

KAWAI MP9000(advertisement)
MP9000/(株)河合楽器製作所 雑誌広告より画像引用
 
 
 

つぶやき的な

 実は本ブログの読者様から、『アコースティックピアノのタッチに最も近い、タッチ重めの電子ピアノのお勧めを教えて欲しい』というメールを頂きまして、僕個人がお勧めする第1候補に挙げさせてもらったのがこのKAWAI MP(9000)です。
 
 
 取り扱いの容易さや音色の好み等を考えると、Roland RDシリーズやYAMAHA CPシリーズ(Pシリーズ)も選択肢としてアリだと思いますが、個人的にはタッチを重視するならばKAWAIのMPシリーズがずば抜けて良いという印象です。もちろん設定予算にもよりますけどね。。
 
 
 一般的な知名度はあまり高くなく流通量も少ないKAWAI MPシリーズですが、国内ピアノメーカーならではの基本的な作りの高さが秀逸であり、もっと注目されていてもいいのになーと感じたりします。
 
 
 MP9000は今から20年近くも前のものでありそれなりに内部劣化も進んでいるというリスクはあるのですが、もし状態のよいMP9000の中古が4~5万円以下で市場に出ていて、鍵盤タッチに優れた電子ピアノを購入検討の人がいたら熱烈にお勧めしますよ(笑)
 
 
 
 関連記事:「KAWAI MP9500 ~MP9000が進化した本格ステージ・ピアノ[2002年]
 

仕様
■鍵盤数:88鍵(AWAグランド鍵盤スーパー)
■最大同時発音数:64音
■インターナル・メモリー:
 セットアップ×64、サウンド×16(ピアノ1~5、エレクトリックピアノ1~3、オルガン1~2、クラビ、ビブラフォン、ストリングス、クワイア、ベース1~2)
■内蔵エフェクト:リバーブ7種、エフェクト21種、4バンドEQ
■外形寸法:1466(W)×189(H)×442(D)mm
■重量:34kg
■発売当時の価格:248,000円(税抜)
■発売開始年:1998年

 

関連記事および広告

関連記事および広告


-KAWAI, 楽器・機材【Vol.〇〇】