キーボーディスト、脱初心者を目指す

ピアノ、シンセサイザー、オルガンとか鍵盤楽器もろもろ。関係ない記事もたまにあるよ

1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.274】Roland SH-3A ~幅広い音作りに対応した初期ローランド・シンセ[1974年]

2019/03/24

 

 

 今回ご紹介する機材は、ローランドが1974年に発売したアナログ・シンセサイザー「SH-3A」です。当時の価格は185,000円。同年に発売された、ルックスの近いSH-2000と全く同じ価格ですね。
 
 その頃は高価なMOOGあたりのシンセサイザーが “標準的なシンセサイザー”として認知されていた向きがあったのですが、本機は20万円を切る国産のお手頃シンセとしてリリースされたわけです。

 

Roland SH-3A

 

 さて以前SH-2000の記事にて『1973~74年頃のローランド・シンセサイザーについて』という記述をしたのですが、SH-3Aを読み解く上で改めて掲載してみたいと思います。
 
 
 

1973~74年頃のローランド・シンセサイザーについて

大きく分けて以下3タイプに分かれていました。

①オシレーターを搭載し、ゼロから音を創造していけるタイプ
②あらかじめ特定の音色をいくつか内蔵しているタイプ
③音色も内蔵しているが、オシレーターにより音作りも可能なタイプ(いわば①+②)

 
 ちなみにSH-1000は③のタイプであり、SH-2000は②のタイプです。今回の記事の主役・SH-3Aは①であり、非プリセット・ベースの “音を創る”タイプのシンセサイザーと言えます。
 
 
 

SH-3A概要

 コントロール機能を全面的に採用した1VCO(→同時発音数:1)のアナログシンセ。鍵盤数は44鍵で、数としてはSH-1000/2000の37鍵から増えています。この44鍵というのは実はminimoog [1970年]と同じであり(鍵盤がFから始まるのも同じ)、当時minimoogに近い演奏感を得るために(リーズナブルな)本機を購入したという人も少なくなかったそうですよ。
 
 
 上記で述べたようにプリセット音色は用意されておらず、比較的シンプルな単一オシレーターによって各自音作りを行うという感じでした。
 
 
 

筐体デザイン

 SH-1000/2000とデザインに大きな変更はなく、パネル左部にコントローラーが集約された見た目となっています。モノシンセの場合、左手で操作するリアルタイム・コントローラー(ビブラート、ポルタメント等)が演奏上の大きなポイントとなっているので、これら操作子が左側に集約されているというのは使いやすい設計だと思います。
 
 
 またSH-3Aはケース一体型の設計となっており、付属の上ブタを閉じればそのまま移動可能です(→本体にはそのための取っ手も付いている)
 
 
 なお、SH-1000/2000で見られた(カラフルな)タブレットは省略されていますね。まあ非プリセット・シンセだし音色選択スイッチがないというのは当然でしょう。
 
 
 

SH-3との違いについて

 本機は元々「SH-3」という型名で発売されたのですが、事情により内部回路(VCF)の変更を迫られたそうで、回路変更後のマイナーチェンジ版として「SH-3A」という名称に変更されました。
 
 
 フィルター回路が異なるものとなったため、VCFの効き具合などは違いがあると言われますね。あとノブ(つまみ)類のデザインにも若干の変更が施されているそうです。
 
 
 このようにSH-3Aは急遽修正を加えられたモデルであり、当時のカタログにもSH-3/3Aが同時に掲載されることはありませんでした。なお今日少なからず出回っている個体の多くはSH-3Aということで、3Aの方を今回の記事タイトルにもさせて頂きました(逆にSH-3が市場に出てきたら相当なレア物と言えるでしょう。。)

 

 

 

VCOセクション

 VCOには32'、16'、8'、4'、2'の5つスライダーがあり、各フィートの音をミキシングすることにより音を創ることができます。言ってみればオルガンのドローバーみたいな感じですね。それぞれのスライダーの上は矩形波/パルス波/ノコギリ波の切り替えスイッチが付いており、任意に選択することが可能。また8'だけにはコーラス効果を付けるボリューム・ノブが搭載されています。このちょっとしたコーラス(→パルスワイズをLFOで揺らす)により音の厚みを作ることができました。
 
 
 ちなみにフィートとはオシレーターのピッチ(→オクターブの高さ)のことであり、元々はパイプオルガンのパイプの長さに起因するそうです(※注)
 
 
 なお独立したノイズ・ジェネレーターも搭載しており、ホワイトノイズとピンクの切り替えが可能。VCFまたはVCAのどちらに送るかをスイッチで選べます(もちろんノイズOFFも可)
 
 
 

LFOセクション

 LFOには1と2があり、LFO1はノコギリ波、LFO2は矩形波/正弦波となっています。LFO2にはRATEの他にも「DELAY TIME」というスライダーがあり、これにより効果が掛かり始める時間を可能。
 
 
 

サンプラー(サンプル&ホールド)セクション

 LFOおよびノイズの波形をサンプリングしてそれを一定間隔で出力するセクション。なお本機におけるサンプリングとは波形うんぬんの話ではなく、自分で作った音色の信号を記憶(サンプリング)して、次の記憶すべき信号が入力されるまで保持(ホールド)しておくことです。つまりサンプル&ホールド。
 
 
 あとVCFセクションですが、カットオフ・フリケンシーおよびレゾナンスを変更できるスライダーを装備していますね。また独立したエンベロープ・ジェネレーター(ADSRの各スライダー)も備えています。
 
 
 

つぶやき的な

 VCOは加算合成方式とも見えますが、全体的にはVCO→VCF→VCAといったよくあるアナログ的な減算方式となっており、これはなかなか独特な仕様といっていいんじゃないでしょうか。比較的軽量であり、かつケース一体型設計ということで、シンセとしてはライブでも運びやすい一台だったのではと思います。
 
 
 変更できるパラメーターも当時としては結構あって色んな音作りの可能性が見えてきそうですが、やはり1VCOの制約は大きくて、当時の海外のマルチ・オシレーター搭載シンセのような太い音(あるいは厚い音)を作り出すのはなかなか難しかったそうですよ。。
 
 
 
 関連記事(ローランドSHシリーズ):
 「Roland SH-1000 ~1973年発売の「国産初のシンセサイザー」
 「Roland SH-2000 ~30音色内蔵のプリセット・シンセサイザー[1974年]
 「Roland SH-1 ~ローランド初となる…[1978年]
 
 「Roland SH-32 ~卓上シンセで音作り[2002年]」  ※平成の卓上SH
 「Roland SH-201 ~21世紀によみがえった伝統の “SH” [2006年]
 

---

※注 8フィートを基準と考えると、4フィートは1オクターブ高い音、16フィートは1オクターブ低い音となる。“フィート”はそもそも長さの単位であり、1フィートはおおよそ30cm。

仕様
■鍵盤数:44鍵(Fスケール)
■最大同時発音数:1(1VCO)
■VCO:1 ※5つのフィート・ボリューム(32'、16'、8'、4'、2')により合成可能
■VCF:1 ※カットオフ・フリケンシー、レゾナンススライダー付き
■VCA:1  ■LFO:2  ■ノイズ・ジェネレーター
■外形寸法:1005(W)×150(H)×320(D)mm
■重量:14.5kg
■発売当時の価格:185,000円
■発売開始年:1974年

 

関連記事および広告

関連記事および広告


-1970~80年代', Roland, 楽器・機材【Vol.〇〇】