1970~80年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.216】YAMAHA CS15 ~CS10の演奏性をベースにさらにグレードアップ[1978年]
2018/11/26
今回ご紹介するシンセサイザーは、1978年にヤマハから発売された「CS15」です。37鍵盤であり当時の定価は105,000円。以前本ブログでも紹介した同社のシンセ・「CS10」のコンセプトを受け継ぎ、CS10の機能を2倍(+α)にしたようなシンセですね。その割に価格は抑えられており、モノフォニックながらハイエンド機に負けるとも劣らない機能を備えていました。
【はじめに】「CS15」、CSシリーズとしての位置付け
CS10の記事でも触れましたが改めて記してみましょう。アナログシンセのCSシリーズは、以下のように大きく4つの世代に分類することができます。
第1世代:CS80、CS60、CS50(※1977年上期)
第2世代:CS10、CS30、CS30L(※1977年下期)
第3世代:CS5、CS15(※1978年)
第4世代:CS15D、CS20M、CS40M、CS70M(※1979~81年)
番外編:CS01(※1982年。ミニ鍵盤、小型スピーカー内蔵)
CS01II(※1983年。基本仕様はCS01に類似。日本未発売)
CS15はいわゆる第3世代に属します。当時の競合他社製品といえば、KORG MS-10(MS-20)、Roland SH-2(SH-09)あたりでしょうか。いずれも “学生でも(長期休暇中に)アルバイトすれば手に入れられる”といった、一般人にとって現実的に購入できる価格帯でした。
CS15の構成
「2VCO+2VCF+2VCA」からなるモノ・シンセ(同時発音数1)であり、これは先行発売のCS10の構成(1VCO+1VCF+1VCA)の単純に倍になっています。それを裏付けるように、CS15のパネルは各セクションがほぼそっくりそのまま2系統配置されているという、非常に分かりやすい作りとなっています。CS10同様、“パネル左→右部の流れでシンセサイズを行う”というスタイルも受け継がれており、操作子が比較的多い割に音作りはしやすいと言えるでしょう。
またEGも2系統装備しており、VCF1/2、VCA1/2に自由にパッチングが可能となっています。なおVCF1にはEG1のリバース曲線、VCF2にはEG2の曲線がそれぞれ使え、実質的には4つのEGを扱えるといった感じでした。ちなみにEG部はツマミではなく(ADSRが独立した)スライダーになっています。
これらに加えLFOも搭載。正弦波(サイン波)、ノコギリ波に加え、ランダムなコントロール電圧を生成するS/Hも装備しています。
なお音作りの内容については本ブログ・CS10の記事をご参考にして頂ければ幸いです。
関連記事:「YAMAHA CS10 ~1977年発売の低価格CSシリーズ・モデル」
コントローラーについて
PITCH BEND
ニュートラルを中心に、縦方向に操作するタイプのベンド・スライダー。N(ナロウ)/M(ミディアム)/W(ワイド)のレンジ切替スイッチも搭載。スライダーをいずれかにフルにすると、Nでは2度、Mでは3度、Wでは1オクターブ分の音程が変化します。
BRILLIANCE
音色の明るさをマニュアル・コントロールできるスライダー。対象として「VCF1」「VCF1+2」「VCF2」のいずれかを選択可能です。特に2基のVCFを一括コントロールができる「VCF1+2」は、演奏中でも非常に重宝されたかと思います。
PORTAMENT(GLIDE)
グライド(ポルタメント)のタイムおよびデプス(VCO1/VCO2独立)が設定できます。
(早くも)まとめ
70年代後半の多くのモノフォニック・シンセは、複数のオシレーター波形をミキサーでまとめ、1系統のVCF、VCAの経路のみで音色を加工するという設計のものがほとんどでした。一方本機では完全に独立した2系統の音色を重ねられるということで、モノフォニックながら高い操作性、音作りの自由度を誇っていたことが伺えます。パネルデザインは全く違いますが、Oberheim 2-Voiceもこんな感じでしたよね。
CS15のパネル上の操作子のリアルタイム・コントロール性は高く、ライブ・パフォーマンス重視の設計と言えるでしょう。
個人的かんそう
2系統ということで音色は分厚いものも作ることができ、これ一台だけでもアンサンブルの中で存在感を放ってくれると思います。ただ全体的には軽やかで温和なキャラクターといった感じでしょうか(個人的には)。フィルターのレゾナンスも発振せず、LFOのレンジやエンベロープのスピードなどもさほどエグさを感じさせません。パラメーターを無茶苦茶にしても、常識的な演奏に耐えうる音色を出してくれるという印象ですね。これはこれで安心感があります。
70~80年代初頭にかけて怒涛のように発売されたこれらヤマハのCSシリーズは、日本よりも欧米に根強いファンが多いらしく、国外流出の量も少なくないと聞きます。今の時代でも、第一線の現場で使われる可能性を秘めているシンセサイザーだと個人的には思うし、国内でももっと評価が高まってもいいかなと感じます(MS-20のようにいっそ丸ごとハードで復刻とか。。)
余談ですが、本機と似た名前のシンセに同社の「CS15D」というのもありますが、そちらはコンセプトが異なる全くの別物といった感じの内容になっています。CS15Dはまた後日、別の記事にて紹介してみたいと思います。 →書きました!
関連記事(ヤマハCSシリーズ):
「YAMAHA CS10 ~1977年発売の低価格CSシリーズ・モデル」
「YAMAHA CS15D ~プリセット+シンセサイザーのライブ向けキーボード[1979年]」
「YAMAHA CS70M ~アナログCSシリーズ後期のトップエンド・モデル[1981年]」
「YAMAHA CS01(/CS01II) ~ブレスコントローラー搭載! ミニ鍵盤の80年代…」
「YAMAHA CS1x ~グルーヴィにつまみを回せ![1996年]」 →平成のCS
仕様
■鍵盤:37鍵
■最大同時発音数:1音
■構成:2VCO+2VCF+2VCA、2EG(A/D/S/R)、1LFO
■外形寸法:754(W)×174(H)×332.5(D)mm
■重量:8.9kg
■発売当時の価格:105,000円
■発売年:1978年