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E-mu 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.153】E-mu Emulator ~普及型サンプリング・マシン(でも数百万円)[1981年頃]

2018/05/07

 今回ご紹介するマシンはE-mu Systemsの「Emulator」というサンプリング・マシンです。発売時期は1981年頃。当時のサンプラーの相場からすると一けた違うという低価格を実現した(とはいえ数百万円はしたが)、画期的な商品であります。

 

E-mu Emulator
 

 

はじめに・黎明期のサンプラーたち

 1979年、オーストラリアのフェアライト社が発表した「Fairlight CMI」は、大規模なサンプリング・ワークステーション・システムとして大きな注目を集めました。サンプリング機能の他、8音ポリのシンセサイザー、さらにシーケンサーも含有したスーパー・マシンといったところですね。発売は翌80年で、当時の国内販売価格は約1,200万円。
 
 
 なおフェアライトはサンプリングだけではなく、CRT画面にタッチするライトペンで、コンピューターに指示する(波形を書き込む)ことができるという革新的なインターフェイスを持っていました。
 
 
 70年代末に発売された「Synclavier(シンクラヴィア)」も、シンセサイザー(FM合成)、サンプラー、シーケンサーなどを搭載した統合システム・マシンといった趣の機種でした。ハードディスクに直接書き込み再生可能となっていたり、高いハードウェアの拡張性などを備え、当時の価格はやはり数千万円なんて話を聞きます。
 
 
 まあこちらも個人の所有物というよりは、プロ・スタジオ設備としての需要の方が高かったと思われます。もしくは一部の著名なミュージシャンが購入・使用していたことで、一般のマニアにとっては「伝説の機材」みたいに捉えられていた感じでしょうか。
 
 
 

そこで登場した “お手頃価格”のEmulator

 フェアライト、シンクラヴィアがあまりにも高価で、なおかつ大型システム指向だったのに対し、E-mu社は機能をサンプリングにしぼって、より安価に・より運びやすくした設計のサンプラーを発表しました。それがEmulator(1981年)です。
 
 
 サンプラーとしての分かりやすさ、使いやすさ、さらに(楽器音をはじめとした)数多くの音色ライブラリーの充実ぶりで、当時のサンプラーの代名詞的存在にまでなっていきました。
 
 
 なおEmulatorの日本発売当初の価格ははっきり分かっていませんが(→おおよそ400~500万円)、東京のTALK STUDIOという代理店(?)が1983年末頃に2,980,000円という新価格で販売し、それが定着したのか今でも「Emulatorは約300万円だった」という感じの文献が多いですね。

 

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性能について

 49鍵盤、最大同時発音数は8音(ただし4音のものも存在するらしい)。2音色がストックでき、キーボードをスプリットして別音色を発音する機能もあります。メモリーは128KB(!)、サンプリング性能は「8ビット/27kHz」となっており、最大サンプリング時間は約2秒間ほどでした。
 
 
 また最初期のロットではVCAも実装されていませんでした(→のちに後付けされた)。VCAがないということは、どれだけキーを素早く離しても各サンプルが最後まで再生されたということですね。サンプリングした波形の編集もあまり使い勝手がよろしくなく、当時、自分で作ったサンプルの編集をする際は大変な苦労を伴ったらしいです。
 
 
 また本体には5.25インチFDDを搭載していて、ディスクの形式でメーカーから様々な音色ライブラリーが発売されました。本機は(メーカーによる)サウンド・ライブラリー供給というアイデアの先駆的サンプラーでもありますね。
 
 
 

生産時期による違いについて

 Emulatorは時期により細かな仕様の違いが見られるのですが、PROPHET-5のような「Rev.」とかバージョン違いといった分かりやすい表記はありません。僕も全てを把握しているわけではありませんが、一例を挙げてみましょう。

・初期型にはエンベロープ、フィルターを内蔵していなかった
・搭載バスは当初RS-232Cのみだったが、MIDI規格発表後はMIDI端子も追加装備された。
・サンプリング・ポイントは当初は2(モノラル)だったが、のちに16(モノラル)になった。

 
 なおRS-232Cというのは、当時のパソコンで採用されていた端末間通信用のインターフェイス規格であり、本機も当初はコンピューターとつないでMIDIのようなことをソフトウェアでできるようにしていくつもりだったらしいです。。
 
 
 

まとめ的な

 とまあ今見ると、制約だらけの機能(→特に初期型)、あまり良くなかったらしいS/N、安くなったとはいえまだまだ庶民には手の出ない価格、といった感じなのですが、当時は手軽に使えるサンプラーとして音楽人を魅了し一時代を作ったわけです。
 
 
 本機はEmulator II(1984年)にモデルチェンジするのですが、そちらでは大きな進化が見られ、楽器的な使い勝手が大幅に向上した感じですね。大物ミュージシャンもこぞって使いました。
 
 
 
 関連記事(Emulatorシリーズ):
 「E-mu Emulator II ~80年代中期を代表する世界的サンプラー[1984年]
 「E-mu Emulator III(EIII) ~イミュレーター・シリーズの3代目[1988年頃]
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