スタジオにてボーカルさんの声が聞こえない! ~メンバーとして対処法を考える
2018/12/08
バンドサウンドにおいて、これまで本ブログでも「周りの音デカすぎ!」「キーボードの音全然聞こえんぞ!」といったケースに対処する(笑)、キーボーディストなりのアイディアをいくつか提案してきたつもりなのですが、今回は “ボーカル”の音量についての記述をしてみたいと思います。
ほら、本来ならばバンドの “顔”であるボーカルが、周りの爆音にかき消されてまるで聞こえないなんてケースもよくあるじゃないですか。
ライブステージやレコーディングにおいては、PAエンジニアさんやレコーディングエンジニアさんにお任せしておけばいいのですが、問題なのがリハーサルスタジオでのバンド練習時。一般的なアマチュアの場合だと、スタジオ内の音量バランスは基本的に自分たちで何とかするというのが普通です。
本ブログは一応鍵盤系ブログなので、ついつい僕自身も「キーボーディスト目線中心」の記事を展開してしまいがちですなのですが(反省)、バンド全体のサウンドバランスを向上させるため、今回はボーカルさんの音量バランスについて考えてみました。
ボーカルの声が聞こえない原因は
これはもう「周りの楽器の音が大きすぎる」にほぼ尽きるのではないでしょうか。一般人がよく使うリハーサルスタジオは大抵狭いですし、特にギターやベースはボリューム上げ下げが比較的行いやすいので、自分の音がよくモニターできなかったからといって「しれっと」音量を上げるケースとかも多いです(笑)
そうなるとスタジオ内は音の洪水。。飽和した音が狭い部屋内をぐわんぐわんと埋め尽くすいわゆる “音が回る”というカオス状態に陥ります。当然ボーカルも聞こえにくくなりますわな。。
リハーサルスタジオ内の音について
プロがツアーリハーサルのために使う広々としたスタジオならばともかく、アマチュア向けの狭いスタジオではドラムを生音で出していて電気的な増幅はしていないのが一般的です。録音スタジオも兼ねているような部屋だとバスドラなどにマイクが立ててあるところもありますが、バンド練習用として積極的に増幅することはあまりありませんね。
なのでスタジオ内の音量はドラムが基準となると考えてよいです。それを基準に各楽器パートが適正な音量を合わせバランスを整えていくことになります。
難しいのがボーカルマイクのセッティング。そう、「マイクは入力レベルを上げ過ぎるとハウリングを起こしたり音が歪む」となる現象を経験上体感している人も多いのではないでしょうか。声量がないからといって安易にレベルを上げるとミキサーの「ピークインジケーター」が点灯(大抵赤色)しハウリングを起こしたりします。
なのでピークまで上げ過ぎないことを留意しつつ、あとはボーカルも含めた各楽器のバランスを取っていくといった感じですね。
対処法を考える
スタジオ内での各楽器の設置位置にもよりますが、アンプ(キーボーディストの場合モニタースピーカー)の距離・角度を変えるのは非常に有効な手段です。自分の立ち位置から近すぎてもダメ。アンプからちょっと離れることで聴き取りやすい音量レベルになることが多いですし、角度を自分の耳の位置に近付けることにより、周りに無駄な大音量を飛ばすことを防いでくれます。
ギタリストの場合だとハウリングを防ぐためか、ギターアンプの正面からあえて外れて立っている人もいますね。スタジオに設置されているアンプ/モニタースピーカーが必ずしもそのバンドにとって “正解”のセッティングではないのでどんどん動かして(動いて)みましょう。
対処法を考える・その2
「スタジオ内の音量バランスは自分たちで何とかする」などと冒頭で言ってしまいましたが、困ったら最初から店員さんを呼ぶというのも有効だったりします。その際は、経験の浅そうな若いバイトの子よりも、オーナーと思わしき貫禄のあるおじさんを捕まえるのがよいかもしれません(笑)
あと、楽器ごとの周波数が重なってしまい、特定の周波数帯域の音が聞こえにくくなるという現象もあります(→周波数マスキング現象)。音量を全般的に下げることに納得がいかないギタリストさんとかは、アンプにて特定の周波数帯域(→Middle、Treble)だけ抑えるとよいと思います。グラフィック・イコライザーを導入しているギタリストさんであれば、より細かな設定が施せるのでなお良しといった感じですね。
基本は、ドラムを音量基準としつつ、「信号増幅可能な楽器は、全体的にギリギリ聞こえる程度まで音量を下げた状態でスタートし、あとから必要に応じて徐々に上げていく」という考え方で整えていった方がよいですね。
個人的つぶやき
特定の楽器が演奏できてなおかつ他楽器メンバーと最低限のアンサンブルを組めるようになるまである程度の練習が必要となる楽器隊とは違い、歌はとりあえず誰でも歌うことができます。
もちろんリズム感や発声法など必要最低限のスキルは必要ですし、“ボーカリスト然”とするにはさらに相当なトレーニング・経験が必要だと思うのですが、バンドサウンドに何らかの形で加わりたいという “入口”としては入りやすいのかなと個人的には思います。
余談ですが、特定アーティストの指定曲を各楽器パートごとにコピーして一度限りでアンサンブルする「セッションイベント」では、ボーカル枠の競争率って毎回相当高いんですよ。いつも顔ぶれが似たような感じの楽器隊(笑)に対し、ボーカルさんは都度フレッシュな顔ぶれになることが多いですね。
そんな、いわゆる “ビギナーボーカリスト”を個人的にはよく目にすることがあって、音響知識や自身の声の特性などを余り押さえていない若い女の子が、初めてのスタジオやセッション会にて自分の声があまり聞こえずオロオロ…なんて光景を目撃することも何度か。。無理に声量を稼ごうとしてなのか、のどを痛めるような歌い方にせざるを得ない状況に追い込まれてしまったりとか。おお痛々しい。
そんな時、バンドサウンドについて豊富な経験を持つ周りのオッサンたち(笑)が、さりげなく『ボーカルさん自分の声聞こえた?』『周りの音量バランスはどう? 歌いやすかった?』などと率先して声掛けしてあげると非常にジェントルだと思うんですけどねー。僕自身そういう視野の広いバンドマンでありたいと思っています。
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