ステージ・ピアノとはそもそも何なのか ~「電子ピアノ」とは違うの?
2018/11/25
電子ピアノやデジタル・ピアノのカタログを見ていると、「ステージ・ピアノ」という言葉がたまに出てきます。む? 一般の電子ピアノとどう違うのでしょう。。そもそもステージ・ピアノとは何だ?と思っている方もいるかと思いますので、改めて確認してみたいと思いますよ。
そもそもはローズ、ウーリッツァーなどが元祖
“自分のアコースティック・ピアノをステージ上で(バンドで)鳴らしたい”という願望を持っている人は遥か昔からいましたが、その大きさと重さ、移動後の調律、さらにはマイクを立ててのセッティングの煩雑さ(集音時のハウリング対策等)など、なかなかの困難さを伴っていました。
そこで登場したのがローズ、ウーリッツァーなどに代表される「エレクトリック・ピアノ」。これらはピアノの弦の代用となる発音体(トーン・バー)を叩き、ピックアップという小型マイクにより集音し、内蔵アンプの増幅により簡単に大音量を得ることが可能になりました。しかも軽量です。
とはいえ上記のようなエレピは独自の音色(独特の奏法)を持ち、アコースティック・ピアノの代用という意味ではちょっと異なるものでした。
軽量な電子式ピアノの登場
現在のようなステージ向けの電子ピアノが登場したのは1980年代中頃のことです。音色にサンプリング方式を採用したメモリー・チップを搭載し、大幅な軽量化を実現しました(とはいえ当時は30kg以上が当たり前だったが。。)
これにより、可搬性およびメンテナンスフリーの利便性は大幅に上がりましたが、最初期のステージ・ピアノといえば同時発音数も16音程度と、演奏性の低さは否めませんでした。。当時は、今では考えられないような小容量の波形メモリーでやりくりしていたのですね。
そして現在のステージ・ピアノ
同時発音数も必要十分な数になり、音質・タッチも向上し演奏性が大幅に高まりました。そして、より軽量化(小型化)、より高音質化の方向性で、これからも開発が進められていくと思われます。
改めて「ステージ・ピアノ」の定義を考える
名前の通り、ステージで使うことを前提に設計されています。自宅で練習することが主であるいわゆる「家庭向け電子ピアノ」(以下、家庭向け)と比較しつつ、ステージ・ピアノの特徴を挙げてみましょう。
可搬性に優れる
家庭向けのようないわゆる「脚部」が一体化されておらず、大きさと重さを抑えてあることから可搬性を高めています。実際のステージでは、別売りのスタンドに乗せて弾くことになります。
機能は必要以上に多くない
家庭向けの一部高級モデルでは、「レッスン機能」や「自動伴奏機能(シーケンサー内蔵)」、「(LCD画面による)楽譜表示機能」などが装備されているものもあります。
ステージ・ピアノの場合は、用途を考えた際に、上記例のような付加価値的なものは “余剰機能”と捉えられることが多いため、各社もそれほど力を入れていません。ただし、EQやエフェクト、マスターキーボード機能などはケースバイケースで必要なこともあるため、搭載されている機種も中にはあります。
(一般に)出音が高音質
家庭向けではヘッドフォンで使う人が多いと思いますが、ステージ・ピアノはステージで使うのが前提の設計なので、スピーカーで大音量で鳴らした時でも高音質であるものが多いです。
(一般に)鍵盤タッチが良い
全てのステージ・ピアノの鍵盤タッチがいいかというと、メーカー・機種により違いがあり、好みも出てくると思うので断定はできません。とはいえ同価格帯の家庭向け電子ピアノと比較すると、タッチはステージ・ピアノの方が格段に良いと感じることが多いですね(個人的には)。
その他
機種によっては背面のメーカーロゴが光るとか、ステージでの見栄えを意識してか「譜面立て」を本体に装備していないものもあります。また、ライブでよく使うエレクトリック・ピアノ(ローズ、ウーリッツァー等)、クラビネット等も、高品位な音源が搭載されていることが多いですね。
まとめ的な
このように「ステージ・ピアノ」は、“ステージ演奏において高いパフォーマンスを実現する”ことに主眼を置いて設計されている電子ピアノといえると思います。
ここから先は僕の個人的意見ですが、ステージ・ピアノは、家庭向け電子ピアノと比べ、タッチ・音の良さ共に優れているものが多いと感じることが多いです。タッチと音の良さといえば、ピアノの性能において最も基本的で重要な要素だと考えます。
だから、例えば電子ピアノ購入予算を15万円と決めている人にとっては、単品の15万円の家庭向け電子ピアノを買うより、12~13万円のステージピアノを買って、残りの予算をスタンドやスピーカーなどにまわした方が個人的にはおすすめです。
なお、各メーカーの代表的な現行ステージ・ピアノはまたの機会に記事にまとめてみたいと思います。最後まで読んでくださってありがとうございました。