そもそも木製鍵盤のどういったところがよいのかを調べてみた ~電子ピアノの鍵盤について
2018/11/24
電子ピアノ(およびステージ・ピアノ)を購入する際、鍵盤部が「木製鍵盤」を採用しているかどうかを気にする鍵盤弾きの人は少なくないと思います。
各社の電子ピアノ・カタログでも、
「本モデルは木製鍵盤を採用しています」(ドヤッ)
とか何やら誇らしげに書いてあるじゃないですか。僕も個人的には木製鍵盤は大好きで、白鍵側面の木材むき出しの部分を意味なく触ったりします。変ですかね。。サワサワ。。
鍵盤のタッチにこだわる人は「木製鍵盤であること」にもこだわっている人が多いような気がします。では一体、木製鍵盤の何が具体的によいのでしょう。意外とあまり語られることがなかったように思います。ちょっと自分なりに調べてみましたよ。
そもそも「木製じゃない」電子ピアノの鍵はどのような構造?
一般的な電子ピアノはほとんどがプラスチックで出来ているというのはご存知だと思いますが、実は中身はほぼ空洞です(実際何度か分解したことがあります)。内部はまず芯となる棒が渡してあって、それを支える形でプラスチックで周囲を固定しているものが一般的です。つまり「プラスチックの塊」ではないものがほとんどなのです。
では木製鍵盤は?
メーカーやモデルにもよりますが、木製鍵盤の一本一本にはふつう鉄芯はなく、見たまんま「木材の棒」といった感じです。そしてこの「棒」が意外と長いのです。生ピアノの調律風景とかを見学したことのある人だと分かると思いますが、この「棒」は50cmを超えるものもあります。
電子ピアノだとさすがにもっと短いのですが、それでも木製鍵盤を採用しているモデルは長めになっているものが多いです。
では「長い鍵盤」だといいことあるの?
鍵盤(棒)が長いと、てこの原理で言うところの「支点」までの距離が遠くできます。また「作用点」までの距離も長ければ、鍵盤の自重で自然なウェイト感をある程度得ることができ、“バネっぽい不自然な鍵盤の戻り”を軽減してくれる一つの要因になってくれると思われます。特に弱い音を弾いた時の感覚の違いは分かりやすいと思います。
引用元:(株)河合楽器製作所HP <http://www.kawai.jp/product/ca97/>
なお、「作用点」の先のハンマー構造(スイッチ構造)によってもタッチの差は出てきます。この辺りは各社がしのぎを削っている部分でもありますね。電子ピアノの場合、一概に「鍵盤部が長ければいい」ということではないことはフォローさせてください。
だったらプラスチックを長くすればよいのでは?
実は、単純にプラスチックで長いサイズの鍵盤(棒)を作ると非常に折れやすいそうです。これは僕自身ちょっと意外に思いましたが、木の方が軽くて強度も高いらしいですよ。
ただし相手は木(主にスプルース材)ですので、生ピアノでも行うような「木材選び」「乾燥工程」などもしっかり行う必要があるそうです。木製鍵盤が一般的に “高価な鍵盤”のイメージがあるのは、そういった実コスト上の理由も含まれているのでしょうね。
個人的感想
僕はてっきり「木製鍵盤だと、雑味のある音を吸収していい感じにしてくれる」みたいな非常にメルヘンなイメージを持っていたのですが、もっと分かりやすい物理的理由に拠るところが大きかったのですね。勉強になりました。。
追記
なお本記事執筆に当たり、(株)河合楽器製作所さんのホームページを一部参考にさせて頂きました。より深く知りたい方は同社の「デジタルピアノ」の項目を参照してみてください。
(株)河合楽器製作所HP <http://www.kawai.jp/product/ca97/>