【Vol.371】CLAVIA MicroModular ~NordModularの心臓部を取り出した低価格モデル[1998年]
2018/11/28
今回ご紹介するシンセサイザーは、スウェーデンのCLAVIA DMIが発売した「MicroModular(マイクロモジュラー)」です。発売時期は1998年末頃。国内定価は128,000円(税抜)でした。
こちらは以前本ブログでも紹介した「CLAVIA NordModular(/Rack)」の小型・低価格モデルですね。NordModular(ラック版)の定価は300,000円だったので、実に半額以下となっています。値段は下げつつも音作りに関する基本性能はほぼそのままということで、非常にコスト・パフォーマンスに優れた一台といったところですね。
ではNordModularとの比較を挟みつつ、本機の内容を詳しく見てみましょう。
まずは外観
ノード伝統の “赤”は引き継ぎつつも、3つのアサイナブル・ノブ、3個のスイッチと非常にシンプルな操作子(※これに1つのボリューム・ノブが加わります)。見ためとしては非常にすっきりした印象ですね。大きさ的には昔のビデオテープ(VHS)に近く、狭いPC机上でも設置しやすいコンパクト・サイズと言えるでしょう。
本体仕様
プログラミングは全て付属のPCエディター・ソフト『NordEditor』にて行い、音は本体から鳴らすという仕組みになっています。
PC側の動作推奨要件は、Intel Pentium 90MHz以上のCPUを搭載したWindows95/98/NTということになっています。なおNordModular同様に、PCは音色エディット操作で使うためだけであり、サウンドそのものはPCスペックに依存しません。
ちなみに1998年当時のCPUといえば、Intel Pentiumシリーズで言えば第二世代に当たる「133MHz」「166MHz」辺りのクロックが広く出回っていました。当時の現行PCを購入すれば、本機MicroModuarに関しては特に問題なく動作したと思われます。
操作性について
パッチ・データはNordModularと完全コンパチであり、同じPCエディターで同様の操作にて操作できます。シンセサイズに関してはNordModularと全く同等と考えてよいですね。また作成したサウンドはPCからMicro本体にダウンロードし、単体にてライブ演奏なども行えます。
なお本機を操作するに当たって理解しておく「モジュール」については、NordModularでの記事にてある程度記述してあります。本機はその辺りについては全く同じなので、詳しくはNordModularの記事をご参照ください。
関連記事:「CLAVIA NordModular(/Rack) ~PCと組み合わせてバーチャル・モジュラー・シンセサイズ![1998年]」
外部入力端子も装備!
本機MicroModularには外部オーディオ信号を取り込む入力端子も備わっており、これがちょっと面白い使い方ができます。つまりは外部の音を突っ込んで、中でフィルター、LFO、エフェクター(オーバードライブ等)で好きに加工ができるといったところですね。ちょっとした単体のエフェクターと言うこともできるかもしれません。
NordModularとの違い
低価格バージョンということで、上位モデルであるNordModularからは若干簡略化されている機能もあります。以下↓
●ディスプレイが変更(LCD→2桁LED)
●本体のアサイナブル・ノブ数が変更(18個→3個)
●出力数の減少(4系統→2系統)
●マルチティンバー非対応(NordModularでは4マルチティンバーだった)
●カードによる拡張不可
●コントロール・ペダル入力端子の省略
目につくポイントとしては、Microでは1パートとなっておりNordModularのようにマルチ(×4)では出力できない点でしょうか。あと、“カードによる拡張不可”というのは、同時発音数が増やせないということですね。Microでは最大4ボイスとなっていて、パッチの複雑さによってさらに減少していきます。
またアサイナブル・ノブが3つだけなので、ライブ時にパラメーターをうねうねしたい時などは制約が出るといったところです。まあMIDI鍵盤を別途つなげればある程度カバーできますが。
補足・そもそも「モジュラー・シンセサイザー」とは?
1960~70代頃にかけて見られた、MOOGなどに代表される巨大なシンセサイザー・システムであり、キース・エマーソン、冨田勲氏、松武秀樹氏などが使用していたことでもよく知られています。そう、その巨大さから一般?に「タンス」などと呼ばれることが多いですね。
このモジュラー・シンセとは、オシレーター、フィルター、アンプ、エンベロープ、LFOなどの各「モジュール」が集まったものであり、それぞれのセクションはモジュール間を配線(パッチング)することによって信号が通過し、結果として音が出るというものだったのです。
2015年に復刻されたモジュラー・シンセサイザー「MOOG System 55」。(Moog Music Inc.のオフィシャル動画より)
パッチング自体はアナログ・シンセサイザーの音作りの根幹であり、それこそが醍醐味と言ってもよいですね。近年でも「EURORACK」の統一規格のもと、シンセ界のちょっとしたムーブメントにもなっています。とはいえ前述したように昔のモジュラー・シンセは巨大で、当時は分かりやすい操作マニュアルなどあるはずもなく、なおかつ動作も不安定なものでした。
それが時を経た1998年当時、このNordModularおよびMicroModularにて、手持ちのPCで手軽に “バーチャル・パッチング”が実現できるようになったということなのですね。
つぶやき的な
一見すると操作子も少なく楽器と捉えると何とも頼りなく見えますが、アイデア次第で様々な音を創造できる(実験できる)ということで、非常に面白くなる可能性を秘めた一台といったところ。価格を抑えながらも、音作りに関するスペックはNordModularから削っていない点は評価できる点だと思います。
往年のアナログシンセをデジタル・シミュレートしたNordLead1/2の次に繰り出された本機は、なんとさらに遡ったモジュラーシンセ(をシミュレートしたもの)だったということで、当時のNordさん、かなり攻めたなぁといった感じです。。
仕様
■音源方式:バーチャル・アナログ・シンセシス
■最大同時発音数:4(ただしパッチの複雑さに依存)
■本体音色メモリー:100
■付属エディターの対応OS:Windows95/98/NT
■外形寸法:210(W)×40(H)×120(D)mm
■重量:0.8kg
■発売当初の価格:128,000円(税抜)
■発売開始年:1998年