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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.348】Roland S-550 ~S-50とアッパーコンパチな2Uサンプラー[1987年]

2018/11/28

 

 

 今回は、ローランドが1987年に発売したサンプリング・マシン「S-550」を取り上げてみたいと思います。発売当初の価格は298,000円。これは前年に発売された「S-50」のラックモジュール版(2U)ですね。とはいえS-50リリースから1年経っているということもあり、単なるモジュール化にとどまらないいくつかのグレード・アップ点も見受けられます。

 

Roland S-550

 

 なおS-50は以前本ブログでも記述しているのですが、今回はS-50との比較を交えつつS-550を掘り下げてみたいと思います。
 
 関連記事:「Roland S-50 ~「サンプリング未来型」と銘打たれた86年製ローランド・サンプラー
 
 
 

基本仕様

 S-50の基本性能を引き継いだ2Uラックサイズ・モデル。もちろんMIDI対応です。同時発音数16ボイス、サンプリングレイト最高30kHz、16ビット・シグナルプロセッシング採用などはS-50譲りといったところ。とはいえメモリー容量の倍増、CRTディスプレイでの操作で容易になるマウスも標準装備など、S-50とは異なるグレードアップ点も見受けられます。
 
 
 また別売りのリモート・コントローラー(RC-100)を使えばより快適に操作できるようになるなど、ラック型モジュール機の宿命とも言える操作性の低さをカバーした仕様と言っていいと思います。
 
 
 

メモリー容量が1.5Mバイトと大幅増!

 S-50の2倍の容量である1.5Mバイトのメモリーを内蔵。これが倍増したということは、サンプリング・タイムの長さに直結すると考えてよいですね。S-550でのサンプリング周波数は、S-50同様に30kHz/15kHzの2つが使い分けが可能。サンプリング・タイムは以下のようになっています。
 

 30kHz時:28.8秒
 15kHz時:57.6秒

 
 はい、これは実はS-50のサンプリング・タイムのそのまんま倍になっています。また、作成・記憶できるトーン数も2倍(→64トーン)、パッチ数も4倍(→32パッチ)と大幅増となっています。スプリット・ポイントも88鍵を軽く超す108を実現。
 
 

Roland S-550(advertisement)
S-550/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

サンプル音へのエディットについて

 VCFのデジタル版とも言うべき「TVF【Time Variant Filter】」というデジタル・フィルターを搭載しており、音質劣化を極力抑えつつ音色変化を施すことができます。
 
 
 まあ従来のサンプラーだと、D/A変換によりデジタル→アナログにしてそれを(アナログにて)フィルターに通すという方式が多かったのですが、本機のTVFーTVA(VCAに当たるブロック)のラインは完全デジタル。つまり音の出口直前のD/A変換まではデジタル処理にて進むので、理論的には音質劣化が極めて少ないということなのですね。ちなみに本機のフィルターではサンプル音にレゾナンスも掛けられます。
 
 
 ラック機器では複雑・難解になりがちな音作りの操作(エンベロープ、ベロシティ、LFOなど)も、後述するマウス操作により、CRT(カラー/モノクロモニター)画面にてグラフィカルでイージーに行うことができるといったところです。
 
 
 

外部メディア

 3.5インチ(2DD)のFDDを1基装備。当時のFDD搭載国産パソコンは立ち上げるのに「起動ディスク」を読み込ませる必要がありましたね。本サンプラーでも同様に、操作に入るためにOSを読ませる必要があります。
 
 
 なおS-50との互換性は保証されているので、当時数多くリリースされていたS-50用サウンドライブラリーも即使うことができます(→いわゆる上位互換・アッパーコンパチ)

 

 

 

S-550用シーケンサー・ソフトウェア「SYS-553」について

 『DIRECTOR-S』を銘打たれた一連のローランドSシリーズ向けシーケンサー・ソフトウェアの中の一つ。「SYS-553」はS-550専用となっており、当時の定価は25,000円。内容物は3枚の3.5'FD(2DD)でした。好評だったSYS-503(S-50専用)のS-550版といったところですね。
 


DIRECTOR-S/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 
 
このソフトにより、S-550を16ボイスのサンプラー音源を持つ、16チャンネル対応のシーケンサーとして動作させることが可能に。もちろんSYS-503同様、CRTディスプレイにて大量の情報を一目で確認することができますね。ディスク2枚分のサウンド・データと、約35,000音分のソング・データをS-550内のメモリーに読み込むことができます。
 
 
 

マウスおよびオプション類について

 付属のマウス(MU-1)やリモート・コントローラー(Roland RC-100・別売32,000円)を使えば、さらに直感的かつスピーディーな操作ができるようになります。ちなみにS-550にはMU-1/RC-100を挿す端子は1つしかないため、両方使うためには、RC-100を先につないでからマウスはRC-100側に接続することになります。
 
 
 なおこのマウスでは、メニュー選択や値入力、決定などの操作はもちろん、エンベロープ設定や波形の手書き入力なども可能です。かつての超高級機フェアライト並みのことが標準でできるようになったという、非常にリッチな仕様と言えるかもですね(笑)
 
 
 

つぶやき的な

 あと本機では8パラ・アウト端子も装備しています(S-50では4アウト)。外部からMIDI8チャンネルを各個受信できるので、8つのパッチを任意のアウトに割り当ててミキサーに送るといった使い方もできそう。
 
 
 本機はまず起動ディスクがないと始まらないことから、現在ジャンク品を入手する際でも起動ディスクの有無は確認しておいた方がよいでしょう。海外のサイトにてファイル・イメージを配布しているところもあるみたいですので、興味のある方は調べてみてくだされ。
 
 
 
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仕様
■最大同時発音数:16音
■RAM容量:1.5Mバイト
■シグナル・プロセッシング:エクスパンデッド16ビット

■最大サンプリング・タイム
 30kHzモード:28.8秒
 15kHzモード:57.6秒
■最大記憶音色数:64(32×2グループ)
■パッチ数:32(16×2グループ)

■メディア媒体:3.5インチフロッピー・ディスク採用(2DD)
■付属品:外部コントロール・マウス(Roland MU-1)

■外形寸法:482(W)×88(H)×400(D)mm
■重量:7.7kg
■発売当時の価格:298,000円
■発売開始年:1987年

 

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