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SEQUENTIAL CURCUITS 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.289】S.C.I. drumtraks ~音量、チューニングも変更可能な80年代ドラムマシン[1984年頃]

2018/11/26

 

 

 今回ご紹介する機材は、SEQUENTIAL CURCUITS Inc.(シーケンシャル・サーキッツ社。以下S.C.I.)から1983~84年頃に発売されたと思われる「drumtraks(ドラムトラックス)」というドラムマシンです。発売当初の国内定価は248,000円でした。

 

S.C.I. drumtraks

 

 S.C.I.といえば名機PROPHET-5(シンセサイザー)を世に出したメーカーとして知られていますね。同社は元々シーケンサー作りからスタートしていて(→社名もそのことに由来)、初期のシーケンサーは「モデル600(#600)」といった感じで、開発コードの番号をそのままナンバリングしたのではと思われる製品名を採用していました。
 
 
 ちなみに今回の記事の主役drumtraksもその名残からか、「モデル400(#400)」というナンバリングが施されていました(むしろこちらの方が正式名か?)
 
 
 

概要

 リアルタイムでパターンが書き込める、MIDI装備のプログラマブル・リズムマシン(ドラムマシン)。音色は当時ハイクオリティでレコーディングされた音源を元にデジタル・サンプリングされたものであり、全13種の楽器音を搭載。作成したリズム・パターンは本体内に99個まで記憶することができます。
 
 
 

音色について

以下全13種類。数も少ないので全て挙げてみましょう。

●バスドラ ●スネア ●リムショット ●タム1 ●タム2 ●クラッシュシンバル ●ライドシンバル ●クローズハイハット ●オープンハイハット ●クラップス ●タンバリン ●カウベル ●カバサ

 
 上記音色はパネル上に(カテゴリー別に)それぞれパッドが配置されています。なお各音色のボリューム(音量)、チューニング(音程)は16段階で可変できるようになっていて、これによりスネアのロール感もリアルに再現できるという触れ込みでした。
 
 
 

リズム・パターンについて

 本機はプログラマブル(→本体内に記憶可能)であり、リアルタイム方式で99個まで本体内にリズム・パターンをメモリー可能。内蔵電池によりメモリー内容は電源を切っても保持されます。またそれらパターンを、99ソングの異なる曲にプログラミングしておくこともできます。
 
 
 初回のリズム・パターン作成はリアルタイム入力のみ。オーバーダビング機能により後からのパターン修正、ボリュームやピッチ変更ができますが、編集前/後のモニター機能がなかったため狙った通りに変更するのは相当大変だったという話は聞きます。そもそも本機のパッドは「叩く強さ」(→ベロシティ)を検知する機能は搭載されていませんでした。
 
 
 あと、後にオプションの音色ROMチップも多数発売されました。チップを交換することにより音色単位(バスドラ、スネア等)で好みのサウンドを選ぶといったことも可能だったそうです。なおROMチップは本体上部を開いて取り付けたそう。

 

 

 

その他の機能/補足

 入力したビートをスウィング(→揺らす)させる「スウィング・モード」を装備。また、リアルタイムでのパターン作成時に生じた微妙なタイミングエラーを修正できる「エラー・コレクト機能」も搭載しているそう。
 
 
 オーディオ・アウトプットは6パラ分の端子を装備。外部ミキサーやエフェクターに接続して、音色別のエフェクト処理や定位変更などに便利に使えたと思います。
 

S.C.I. drumtraks(advertisement)
S.C.I. drumtraks/ラップコーポレーション 雑誌広告より画像引用
 
 
 

まとめ的な

 80年代前半の生系ドラムマシンといえばLinnDrum(リンドラム)が個人的に思い出されるのですが、drumtraksの外観(サイズ感)もどことなくLinnDrumをお手本としたといった印象です。サイドに木製ウッドパネルを採用しているところも似ていますね。
 
 
 そしてデジタル時代到来にふさわしく音源をサンプリング方式にしたり、MIDIを実装した辺りは、当時としては最先端のドラムマシンとして(プロを中心に)注目を集めたといった感じです。その頃のドラムマシンのトレンドは、ドラム音をさらに生ドラムの音に近付けようとしていた時代であり、1音ごとにボリュームやピッチなどを調整できるといったdrumtraksは、時代のニーズに合わせた正統派の製品だったと思います。
 
 
 

つぶやき的な

 MIDI対応のドラムマシンとしてはRoland TR-909のちょっと後発になるのですが、生ドラムになりきれなかったTR-909は当時あまり注目されず、後年になってハウス/テクノ向け音源として大ブレイクしたというのはマニアにとってはご周知の通り。
 
 drumtraksも有名なミュージシャン辺りが『こいつのサウンドは最高にクールだ!』とか発信して、本機ならではの使い方を提示すればリバイバル人気が出るのかもしれませんが、今のところその兆しは見えませんね。。
 
 

仕様
■内蔵音色:13種類(バスドラ、スネア、リムショット、タム1/2、クラッシュシンバル、ライドシンバル、クローズハイハット、オープンハイハット、クラップス、タンバリン、カウベル、カバサ)
■パターン・メモリー数:99
■ソング・メモリー数:99
■外形寸法:530(W)×100(H)×250(D)mm
■重量:8.3kg
■発売当時の価格:248,000円
■発売開始年:1983~84年頃

 

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