【Vol.284】KURZWEIL K1200 Professional ~高品位サウンドを継承した88鍵仕様のK1000 [1990年頃]
2018/11/26
今回ご紹介するキーボードは、KURZWEIL(カーツウェル)の「K1200 Professional」(以下K1200)というモデルです。日本での発売開始は1990年初頭頃。定価は320,000円でした。これは以前本ブログでも紹介した同社のK1000シリーズの88鍵タイプともいうべき鍵盤ですね。
なおK1200もK250と同様、内部システムを “(ソフトウェアにより)バージョン・アップしていく”という仕様になっており、バージョンによっては以下記述と若干の相違がみられるかもしれません。一応初期バージョンを基準としてお話を進めてみたいと思います。
K1200概要
多くの世界的キーボーディストに愛されたK-250を継承する、高品位なサウンドと使い勝手のよいコントロール・ファンクションを備えた88鍵キーボード。K-250といえば発売当時は約400万円(※日本での当初の販売価格)と非常に高価でしたが、K1000シリーズでは部品点数を減らす(→チップの集約化)ことにより大幅なコストダウンを実現しました。
本機K1200はいわゆる「K1000シリーズ」において後期にリリースされた初めての88鍵盤モデルであり、いくつかの機能でグレードアップ点も見られます。一例ですがK-250では12音だったポリフォニックも24音ポリフォニックに増えています。
音源部/音色について
サンプリング波形を元にしたオシレーター(→これを本機ではサウンド・ファイルという)にて、各種コントロール機能を持たせたデジタル・モジュールによって音色合成を行うという仕様。これにエンベロープやLFOなどの細かなコントロール・パラメーターを施し、自分好みの音色を組み立てていきます。
音色としては162種類のプリセット・ボイスを内蔵。K1000では115種類だったので大幅に拡張されているといった感じですね。なお音源部は基本的にK1000を受け継いでおり、本機も基本仕様はK1000同様、プリセット・タイプのプレイバック・サンプラー(キーボード)といったところです。
自前でサンプリングしたサウンドを本機で鳴らすといったことはできませんが、いわゆるシンセサイザー的な音色のエディットも(ある程度)可能。K1200 Professionalでは自分でエディットした音色(ユーザー・プログラム)も93プログラムまで本体内にメモリーしておくことができます。
定評のあるアコースティック・ピアノサウンドも、ポリフォニック(→同時発音数)のせいなのか、はたまたピアノ音サンプルの質向上なのかは不明ですが、主にサスティンペダルを踏んだ際の音色ニュアンスなどのリアルさが向上しているとされます。なお、本機は88鍵ピアノ鍵盤ということでピアノ系中心の音色構成から思われがちですが、ギター、マリンバ、フルート、サックス、パーカッション、ストリングスなどの生楽器系音色も多数含まれています。
コントローラー(鍵盤部)について
88鍵のキーボードは、K1000では見られなかった「モノ・プレッシャー(つまりアフタータッチ)」のセンサーが鍵盤下に装備されています。またベロシティ・センシティブ機能も当然のごとく付いていますね。ベロシティはタッチの違いによる10種類のカーブが用意されており、さらにオリジナルのベロシティ・マップもプログラミング可能。
パネル上のボタン類について
10個のマルチファンクション・ボタン、および3つのバンク・セレクト・ボタン(A~C)、さらに10個のプリセット・セレクトボタンなどが整然と並んでいます。なお本機では2つのモード(→演奏モード、エディットモード)があり、それぞれのモードにした際に各ファンクション・ボタンに持たせる機能も変わってきます。
音色を呼び出すにはENTERキーとテンキーを押してプログラム・ナンバーを直接入力するという感じ。またこの他にも、各10個のプログラムをメモリー可能なA, B, Cの3つのプログラム・バンクを使う方法もあって(→このブログラム・バンクはBIN BANKと呼ばれる)、ベロシティやアフタータッチの押し込み量(の感度)など、コントロール用のオブジェクトMAPのセットも可能となっています。
まあこの辺りの仕様はK1000と近いですね。LCD画面は「16キャラクター×2行」の小さな窓でちょっと見にくいのもK-1000譲りってことで(笑)。パネルの操作子(ボタン類)や全体的な操作感、はたまた筐体デザインまでも、K1000のそれを継承しているといったところしょう。
ライブキーボードとして
本機ではプログラムは4つのレイヤー(音色重ね)、3つの鍵域でスプリット(音色分割)が可能です。MIDI機能も一通り備えており、外部音源をコントロールするマスターキーボードとして使用しても悪くないと思われます。
KURZWEIL K-1000SE, K-1000SE-EXT, K1200 Professional/(株)ハモンドスズキ 雑誌広告より画像引用
つぶやき的な
いわゆる “ピアノっぽい音色の電子音”などを目指していない、あくまで生楽器の音を高品位で再現する(ことを目指した)キーボードといったところでしょうか。K-250から続く生音(→サンプリング)への強いこだわりが垣間見られます。
なお、以前本ブログでもちょっとだけ触れた同社の「1000AX PLUS」(→ストリングス、ホーンに強いラック版音源モジュール)などは、本機K1200を音色的にサポートするためにセットで使われることも多かったみたいですよ。ただし上記のラック(1000AX PLUS)は日本では未発売だったらしいですが。。
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仕様
■鍵盤:88鍵(モノ・プレッシャー対応、ベロシティ・センシティブル鍵盤)
■最大同時発音数:24音ポリフォニック
■プリセット・プログラム:162個(ROM)
■ユーザー・プログラム:93個(RAM)
■外形寸法:1385(W)×140(H)×365(D)mm
■重量:21.5kg
■価格:320,000円(日本での当初の定価)
■発売開始年:1989年末~90年初頭頃