【Vol.217】HUGHES & KETTNER Tube Rotosphere ~真空管オーバードライブ内蔵のロータリー・シミュレーター[1998年頃]
2018/11/26
今回はコンパクトなロータリー・シミュレーターの「HUGHES & KETTNER Tube Rotosphere」という機種を取り上げてみたいと思います。まず読みにくいですよね。。ヒュース・アンド・ケトナーというドイツのメーカーの、「チューブ・ロトスフェアー」という商品名なのです。発売開始はおそらく1998年頃。当時の日本での販売価格は55,000円でした。
HUGHES & KETTNER(以下 “ヒューケト”)といえば、真空管を積んだ青く光り輝くギターアンプで知られています。スタジオなどでもよく見かけるアンプの一つですね。今回の記事の主役である「Tube Rotosphere」は、そのヒューケトが90年代に手掛けたエフェクターの一つです。
キーボーディストにとって「ハモンドオルガン+レスリースピーカー」というのは黄金の組み合わせと言えるのですが、レスリー(ロータリー)スピーカー自体は何もオルガン弾きの人専用というわけではなく、時にはギタリストが使うこともあります。ではざっと見てみましょう。
概要
ハモンドオルガンなどに最適なコンパクトなロータリー・シミュレーター。真空管を搭載しておりナチュラルなオーバードライブ(歪み)を得ることもできます。真空管のアナログサウンドを得意とするギターメーカーならではの作りと言えるでしょう。なお中央の半透明な小窓からは、真空管をはじめとする内部のアナログ回路をちらっと覗くこともできます。
大きさ的にはざっと20cm四方といった感じで、キーボーディストが使うエフェクターとしてはやや大柄ですね。十分な足元のスペースが確保しにくい「X型スタンド」での演奏時にはちょっと注意が必要かもしれません。
フット・スイッチについて
パネル上には(足で踏むための)3つのスイッチが配されています。
BYPASS
左にある「バイパス・スイッチ」。全体のエフェクトのON/OFFを切り替えます。
BREAKER
中央にある「ブレイカー・スイッチ」。フットスイッチの種類としては “アンラッチ・タイプ”であり、これを踏んでいる間だけ回転にブレーキがかかっていき、最後には回転が止まってしまうというものです。そして離せばまた徐々に(デフォルト状態まで)回転が上がっていきます。
SLOW - FAST
右にある「スロー/ファスト・スイッチ」。こちらは踏むたびにロータリーの回転速度(スロー/ファスト)切り替わる “ラッチ・タイプ”。演奏中に頻繁に踏むことになるであろうスイッチがこれです。
あとは、DRIVEつまみ(→歪みレベルの調節)、OUTPUTつまみ(→出力レベルの調節)、ROTOR BALANCEつまみ(→低音用ローターと高音用ローターのバランス調節)が用意されています。
「Tube Rotosphere MKII」について
2000年代に発売された後継機。BREAKERスイッチはラッチ・タイプに変更されており、初代機のように踏みっぱなしにする必要がなくなりました。これをオフにすることで、純粋なチューブ・プリアンプとしても使用できるそうな。
他にも、FASTの際のスピード設定ができたり、ギター/キーボードの切り替えスイッチ(→インピーダンス変更)も装備されています。
デザインはほぼそのままに機能ではいくつか変更点が見られますね。ちなみにTube Rotosphereは、初代機/MKIIともに2017年現在では生産終了となっています。
個人的かんそう
僕も2000年前後に、手持ちのオルガン音源にマッチする手頃なレスリー・シミュレーターを必死に選んでいた時期があり、本機も楽器店で試奏させてもらった記憶があります。他にもいくつかの機種を試したのですが、空気感、回転感、歪み感は、本機が当時ダントツと感じたことを記憶しています(あくまでも楽器店での試奏でですが)。で結局買ったのはKORG G4という自分でもよく分からない選択(汗)。おそらくその頃は経済的に余裕がなかったのでしょう。。
その数年後知人からMKIIを貸してもらいライブで鳴らしたこともあるのですが、爆音バンドだとやはり「ステージでステレオ感なんて出ねーよ!」状態に(笑)。そして2回目からは開き直って、モノラルで直にRoland JC(ギターアンプ)に突っ込んだらたまたまこれがいい感じでした。周りの音に負けないガッツのある音が出たんですよ、持っている人はぜひお試しあれ。
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仕様(Tube Rotosphere)
■入力感度:-20~10dB
■入力インピーダンス:1MΩ
■出力レベル:0~12dB
■出力インピーダンス:3kΩ
■外形寸法:205(W)×80(H)×215(D)mm
■重量:1.7kg(本体のみ) ※付属のACアダプター込みで2.05kg
■発売当初の定価:55,000円
■発売開始年:1998年頃