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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.180】Roland JUNO-60 ~音色メモリーが可能になったJuno [1982年]

2018/11/25

 

 

 今回ご紹介するシンセサイザーは、80年代前半にローランドが発売した「Juno-60」です。価格は238,000円。以前本ブログでも取り上げたJuno-6(1982年)のバージョンアップ版として、同じ年(約半年後)にリリースされました。

 

Roland JUNO-60

 

 シンセシス部分はJuno-6とほぼ共通していて、パネルデザインもJuno-6と近い印象ですね。本記事では、主にJuno-60で強化されたポイントを中心に展開してみたいと思います。音作りに関する機能などは、本記事末尾にあるJunoシリーズのリンクから、Juno-6の記事を参考にしてください。
 
 
 

当時の背景

 先行モデルのJuno-6は当時、同じく6音ポリフォニック・アナログシンセだった「KORG Polysix」とのシェア競争を繰り広げていました。Juno-6の方がPolysixよりも約8万円ほどの低価格だったのですが、最終的に「音色メモリーのできるPolysix、できないJuno-6」といった感じで、Polysixがこの市場のシェアを握る形となりました。
 
 関連記事:「KORG Polysix ~低価格国産ポリシンセ(メモリー付)のさきがけ
 
 
 そこでローランドが投入したのが、音色メモリー機能(プログラム機能)を搭載した 本機・Juno-60。パッチ・ナンバーは2桁デジタル表示となり、ペダル操作でパッチ・ナンバーを順に呼び出すことができるなど、操作性の良さでも改良点が見られます。
 
 
 なおアナログシンセにおけるパッチ・ナンバーのデジタル表示は、当時一部の高級機(Prophet-5、Jupiter-8等)でしか見られなかったものであり、この価格帯で採用されたのも画期的でした。
 
 
 

Juno-60の特徴

 56種類(8パッチ×7バンク)の音色が設定できるパッチ・メモリー機能を搭載した、完全6ボイス・ポリフォニック・シンセサイザー。
 
 
 オシレーター部はデジタル制御のDCOを搭載し、VCF、VCA、エンベロープ・ジェネレーターは各6基ずつ装備しています。Juno-6に引き続き、アルペジエーター、キー・トランスポーズ機能も備えていますね。
 
 
 本機はMIDI製品発売前の、アナログ⇒デジタルの移行期に登場したシンセサイザーであり、独自の「DCBインターフェイス」(→後述します)が装備されているのも特徴の一つです。
 

Roland JUNO-60(advertisement)
JUNO-60/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

その他の機能

 リアパネルにはテープ・インターフェイスも搭載していて、本体メモリー内に記憶したデータを外部のカセットテープに保存可能。またメモリーの誤消去を防ぐメモリー・プロテクト・スイッチも装備されています。
 
 
 なおJuno-60のハイパス・フィルターは、Juno-6の可変式スライダーから、4段階の切替式に変更されていますね。

 

 

 

DCB【Digital Communication Bus】インターフェイスについて

 MIDI発表以前の時代に、ローランドが独自に開発したデジタル制御のインターフェイス・システム。これにより同社のシーケンサー「MC-4」などから、(CV/DCBインターフェイスを介して)シンセサイザーを制御することができました。

 

Roland JUNO-60-DCB Interface

 

 なおJuno-60の後継機・Juno-106からは、DCBインターフェイスは排されMIDIインターフェイスに置き換えられました。結果として、ローランド独自のDCBという規格は非常に短命で終わったという感じです。
 
 
 とはいえMIDI発表以降にも、MIDI/DCB双方に対応したシーケンサー「MSQ-700」などが発売されています。しばらくはMIDI(JX-3P、Jupiter-6など)、DCB(Juno-60、Jupiter-8など)が混在していた時代もあったということですね。双方を接続可能にする相互インターフェイス・ユニット「MD-8」なんて製品もありました。
 
 
 

つぶやき的な

 このちょっと前ころの本格ポリフォニック・シンセサイザーといえば100万円以上するのが普通だったし、かといって(当時の)ポップスのキーボーディストとしては、和音が弾けないシンセサイザーというのは大きな制約でもありました。
 
 
 PolysixやJuno-6、Juno-60などの低価格アナログ・ポリフォニック・シンセの登場は、キーボーディストの裾野を広げると共に、近い将来訪れる「デジタル時代」の予兆とも言える出来事だったのかもしれません。
 
 
 Juno-60は「MIDI搭載直前」というタイミングでリリースされ、直後のMIDI搭載機(Juno-106、DX7など)の陰に隠れてちょっと不遇な機種だったと言えるかもしれません。とはいえ近年の中古市場では10万円以上という割と高値で取引されてるんですよねー、ちょっとびっくりです。
 
 
 
 関連記事(ローランドJUNOシリーズ):
 「Roland JUNO-6 ~夢の10万円台ポリフォニック・シンセ![1982年]
 「Roland αJUNO-2/αJUNO-1 ~JUNO-106の後継機[1985年頃]
 「Roland MKS-50 ~αJUNOのラック版[1986年]
 「Roland JUNO-D ~21世紀によみがえったJUNO [2004年]
 

仕様
■鍵盤:61鍵
■最大同時発音数:6音
■DCOセクション:LFOモジュレーション、パルス・ウィズ・モジュレーション、PWMモード・スイッチ、ウェーブフォーム(パルス/ノコギリ/サブオシレーター)
■VCFセクション:カットオフ・フリケンシー、レゾナンス、ENVモジュレーション、ポラリティ・スイッチ、LFOモジュレーション、キー・フォロー
■VCAセクション:コントロール信号選択スイッチ、VCAレベル
■LFOセクション:レイト、トリガー・モード・スイッチ、ディレイ・タイム
■重量:12kg
■価格:238,000円
■発売開始年:1982年

 

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