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1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.178】Roland MKB-1000 ~木製鍵盤採用の、元祖MIDIマスター・キーボード[1984年]

2018/11/25

 

 

 今回ご紹介するキーボードは、ローランドが1984年に発表したMIDIキーボード・コントローラーの「MKB-1000」です。定価は298,000円。88鍵の木製ピアノタッチ鍵盤を備えた、いわゆるMIDIマスター・キーボードの元祖とも言える一台です。

 

Roland MKB-1000

 

 
 なお当時はMIDIが登場して間もない頃であり、現在のような「マスター・キーボード」という呼び名もあまり一般的でない時代でした(ローランドは本機を “MIDIキーボード・コントローラー”と称していた)。何台もの音源を駆使して演奏を行うマルチ・キーボーディストにとって、当時本機のようなマザー的キーボードは画期的な一台だったと思われます。詳細を見てみましょう。
 
 
 

概要

 MKB-1000は音源は搭載しておらず、自分の好みの音源モジュールを組み合わせて、複数のMIDI音源を統合的にコントロールできるというキーボードです(具体的にMIDI OUT端子は4つ搭載。つまり本体に直で4台まで接続可能)。
 
 
 とはいえ、鍵盤部だけを製品にしたというものは(一部のショルダーキーボードを除いて)当時は種類は多くなく、「複数の音源システムを、一括で管理するキーボード・コントローラーというものもあるんですよ」ということを、本機を通じて広く一般層にもアピールしたといったところでしょうか。
 
 
 

鍵盤部/タッチについて

 88鍵のピアノタッチ木製鍵盤を採用。木製ならではのタッチの良さ、およびタッチによる微妙なダイナミクス(強弱)のコントロールも可能になっています。
 
 
 

スプリット/デュアル・モード機能

 任意の鍵盤ポイントでアッパー/ロワーのスプリット・ポイントを設定でき、上下別々のMIDIチャンネルを割り当てることが可能。これにより、鍵域によって同時に2種類以上の外部音源をコントロールすることができます。またデュアル・モードにすれば、2つのチャンネルをユニゾン演奏することも。
 
 
 

メモリー機能

 音源側の音色切り替えは、アッパー/ロワー独立して128種類までリモート・チェンジが可能。またMIDIチャンネル、キー・モード、プログラム・チェンジの組み合わせを本体内に128種類までメモリーしておくことができ、演奏中の瞬時の呼び出しができます。さらにバッテリー・バックアップ機能もあるのでこれらのメモリーは電源をOFFにしても保持されます。

 

 

 

まとめ的な

 当時生まれて間もなかった電子楽器間統合規格・MIDIによって、それまで一体化していたシンセサイザーはキーボード・コントローラー部(→鍵盤部)と音源部を切り離して使うことができるようになりました。ユーザーにとっても、「お気に入りの鍵盤」「お気に入りの音源」など、好みを組み合わせて自由にシステムを組めるということが、徐々に認知されてきた時代でもあります。
 
 
 MKB-1000は、そのシステムの中核として機能するマザー・キーボードとして設計・販売され、MIDIの可能性を提示してくれた一機種だったと思われます。ちなみに61鍵のMKB-200、76鍵のMKB-300という姉妹機もありました。
 
 
 関連記事:「Roland MKB-200(/MKB-300) ~61鍵だってマスター・キーボード!
 
 
 まあ上記で記したような「MKB-1000ならではのMIDIマスター機能」の部分は、今となってはどれも当たり前な機能なのですが、当時としては画期的だったわけです。
 
 
 

ひとりごと的な

 この時代の88鍵MIDIマスター・キーボードといえば、「YAMAHA KX88」や「KURZWEIL MIDIBOARD」などがよく知られています。KX88は80年代のミュージシャンがKX76と2段積みにしていた光景をよく目にしましたし、MIDIBOARDは世界中のスタジオで長年活躍した名機でもあります。
 
 
 それに比べ本機・Roland MKB-1000はそれほど注目されなかった機種といいましょうか。。何故かあまりスタンダードにならなかったという感じですね。MIDIBOARDと同じく88鍵ピアノタッチ木製鍵盤という作りであり、MIDIコントロール機能も当時としては悪くないと思うのですが。。
 
 
 今見ると、傾斜のついたフロントパネルとか奥行の広さはMIDIBOARD(1986年)のデザインと似てなくもないですね! いやいや、MKB-1000の方がMIDIBOARDよりも先に世に出てるんだった!
 
 
 関連記事:「YAMAHA KX88 ~MIDI楽器の可能性を引き出す、80年代製 名MIDIマスター・キーボード[1985年頃]
 

仕様
■鍵盤数:88鍵(木製鍵盤。ダイナミック・タッチセンス採用)
■コントロール:チャンネル・セット、ポリ/モノ・モード、キー・モード、メモリー、プログラム・チェンジ、バンク、ナンバー、ライト、オール、アッパー・オンリー、メモリー・プロテクト、キー・トランスポーズ、ピッチ・ベンダー、デプス、ライズ・タイム
■接続端子:MIDI IN ×1、MIDI OUT×4、MIDI THRU×1、ソフトペダル×2、ダンパーペダル×2、MOD IN
■外形寸法:1471(W)× 584(D)× 145(H)mm
■重量:49.5kg
■発売当時の価格:298,000円
■発売開始年:1984年

 

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