【Vol.151】KORG PE-1000 ~70年代コルグの「アンサンブル・キーボード」[1976年]
2018/11/25
今回ご紹介するキーボードは、コルグが1976年に発売した「PE-1000」という、同社初となるポリフォニック・キーボードです。定価は256,000円でした。
7種のプリセット・サウンド(クラビコード、ハープシコード、ピアノ、エレキ・ピアノ、ブラス、パイプ・オルガン、ストリング)を備え、自分で音を作ることも可能でした。「アンサンブル・キーボード」と呼ばれるカテゴリーに分類されることもあります。
概要
プリセットにはクラビコード、ハープシコード、ピアノやエレピなどの減衰音系のサウンドを中心に内蔵し、プレイヤーは好みの音色ボタンを押すだけで瞬時にサウンドを切り替えて演奏することが可能。鍵盤数は60鍵。
面白いのが、各鍵盤ごとに独立した発振器を備えていること。要するに鍵盤一つ一つにオシレーターが埋め込まれているようなものです。もちろん全鍵ポリフォニック(=同時発音可能)です。
厚みを生み出す機能
PE-1000には「オクターブ・カプラー」と「ピッチ・エクスパンド」という機能があり、これにより独自の厚みのあるサウンドが作れるのが特徴でありました。
オクターブ・カプラーについて
「カプラー(coupler)」とは “連結器”のような意味の英語で、このオクターブ・カプラーのパラメーターを上げていくと、弾いている鍵盤のオクターブ上の音も同時に鳴るようになっています。なお、一番上のオクターブ鍵域のキーを押すとカプラーは動作せず、厚みは出ません(→なぜなら発振器の数は60しかないため)。
ピッチ・エクスパンドについて
これは簡単に言うと平均律(へいきんりつ…1オクターブなどの音程を均等な周波数比で分割した音律)以外のチューニングができるといった機能です。パラメーターを上げるにつれ、本キーボードの鍵域においてほぼ中心に位置する「F#」を中心に、それより下の鍵域ではよりピッチが低く、上の鍵域ではピッチが高くなります。
このピッチ・エクスパンドですが、パラメーターをMax(フルテン)にすると、最低音および最高音でそれぞれ正規のピッチよりも半音も音程が変わるそうです。ホンキートンクなどの音作りに有効と言えますが、それ以外でも色々と面白く使えそうですね。特に前述したオクターブ・カプラーと組み合わせると音にうなりが出るそうですよ。
音作りについて
プリセットボタンの右下に配された「CONTROL」ボタンを押すと、パネル上のつまみ類を操作し自分の音を作ることができます。オシレター波形は矩形波、パルス波(×2種)、ノコギリ波、コーラスで、この音をトラベラー(※1)によりフィルタリングします。また「SOFT」つまみでも簡単なハイカットのフィルタリングができます。
他にも、ATACK、DECAY、SUSTAINつまみなどでEGを調整できますし、ビブラートもDEPTHとSPEEDが独立したつまみが用意されています。
筐体について
本体はケース一体型となっていて、フタ部分にペダルやケーブル類が全て収納できるようになっています。これはPE-2000でも同じような設計ですね。相当重そうですが。。
つぶやき的な
ポリフォニックのシンセサイザーがまだ一般的に普及していなかった時代には、こういった「アンサンブル・キーボード」と呼ばれるタイプのキーボードが人気だったのですね。当時の(アナログ)シンセサイザーはモノフォニック(=単音)がまだ主流だったわけですし、コード(和音)が弾けるキーボードというのは重宝されたと思います。
本機のキーボードにタッチセンスがないのは残念ポイントではありますが、様々な音色が簡単に切り替え可能ということもあり、姉妹機のPE-2000(→ストリングス、パイプオルガン、コーラスなどの持続音系サウンド中心)と2台使いをしていたプレイヤーもいたかと思います。
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※1 TRAVELLER(トラベラー) …倍音の含み具合を制御するためのトーンコントローラーの一種。ローパスフィルターとハイパスフィルターの一対で構成され、幅広い音作りに対応する。本機では、上段のスライダーがハイパス、下段がローパスとなっている。それぞれにピーク(レゾナンス)を付けることも可能。
仕様
■鍵盤:60鍵 ※ケース一体型
■同時発音数:全鍵完全ポリフォニック
■プリセット音:7種(クラビコード、ハープシコード、ピアノ、エレキ・ピアノ、ブラス、パイプ・オルガン、ストリング)
■コントロール:ボリューム、チューニング、トラベラーコントロール×2、ピークH/L、ソフト、エクスパンド、アタック、ディケイ、サスティン、モード(4波形)、コーラス、他
■外形寸法:942(W)×212(H)×372(D)mm
■重量:18.5kg
■発売当時の価格:256,000円
■発売年:1976年