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KURZWEIL 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.101】KURZWEIL 250(K-250) ~S・ワンダー愛用のスーパー・キーボード[1984年]

2018/11/25

 

 

 今回取り上げる楽器は「KURZWEIL(カーツウェル) 250」というキーボードです。「KURZWEIL K-250(K250)」と表記されることもあります。発売は1984年で、日本発売時での定価(初値)は3,980,000円でした。

 

KURZWEIL 250

 
 本機はスティービー・ワンダーが愛用していたことで有名ですね。そもそもワンダーさんが、カーツウェルの社長に「こんな楽器を作って欲しい」と開発を促したことに始まり、製品化されるに至ったそうです。
 
 
 本機をひとことで言い表すのは非常に難しいのですが、「生々しくリアルな楽器の音を再現可能なプレイバック音源搭載、さらにシーケンサーも付いて、(オプションも付ければ)サンプリングもできる」という、当時としてはモンスター級のスーパー・キーボードといったイメージでしょうか。価格もスーパーですね。。

 

KURZWEIL 250(advertisement)
KURZWEIL 250/(株)ハモンドスズキ 雑誌広告より画像引用
 
 
 

サンプル・プレイバック・タイプの音源部

 ピアノやオーケストラで使用されているような生楽器の演奏表現が、当時としては非常にリアルに再現されていました。ベロシティ(鍵盤を押す強さ)によって音色の変化がうまくプログラミングされています。
 
 
 当時、「本物の楽器」のあらゆるタッチ(ベロシティ)での音色の変化(周波数や振幅の時間的変化など)を、各キーごとに全てパラメーターに変換し記憶させ、それに相当する倍音構成の情報を瞬時に呼び出して再生する、ということは非常に困難でした。
 
 
 カーツウェルではこの「音色変化に伴う倍音構成の複雑極まりない演算」を、“独自の人工知能を応用した技術で解決した” とうたっていますね。
 
 
 “それぞれのキーに別々の倍音構成を持たせることに成功した”とも言っていたのですが、個人的にはよく分からなかったです。。「限られたメモリー・チップ構成において、状況に見合ったよりもっともらしいデータを演算・出力する」という新しいメカニズムを備えていたのだろうと思われますが、そこに当時の人工知能技術がどのように絡んでくるのかはちょっと不明ですね。
 
 
 いずれにせよ、構成された音色は非常にリアルという評価で固まっています。開発チームにはボブ・モーグ博士をはじめ、音響心理学のスタッフもいたらしいです。
 
 
 

プログラム・セクション3つのモード

キーボード・モード

 プリセット音の呼び出しや、スプリット、レイヤー機能を実行できます。いわゆる “演奏時モード”ですね。プリセットはフル・オプションの場合、600以上もの音色を装備することが可能です。
 
 なおスプリット機能は最大87ヶ所にわたって設定可能だそうです(!)。レイヤーに関しては最高12音色まで重ねることができ、最大同時発音数も12音となっています。
 
 

インストゥルメンツ・モード

 主にエディットを行うモードです。なお、オプションの「コンポジション・パッケージ」によりMacintoshでのエディットが可能になります。
 
 

シーケンサー・モード

 内蔵のシーケンサーは4,000音/12トラックと、それほど大規模なものとは言えませんでしたが、オプションのRAMを追加して8,000音に拡張することができました。
 
 

サンプリングについて

 オプションの「サウンド・モデリング・プログラム」を追加することにより、20秒間のサンプリングが可能となります。またこれによりシーケンサーも50,000音まで拡張されます。

 

 

 

まとめというかつぶやき

 K-250はソフトウェア・ベースであったため、Ver.1.0からはじまったバージョンも4.1まで上がり、性能も徐々に向上しています。
 
 
 なお本機ではあまり語られることのない鍵盤部ですが、後のベストセラー・マスターキーボードMIDIBOARDに引き継がれる「88鍵、ベロシティ対応 ウェイテッド・アクション付き 木製鍵盤」をしっかり装備していますね。ピアノ・ペダルの部分が電源ユニットも兼ねているので、足元がちょっと異様なのも面白いです(笑)
 
 
 

おまけ

 その音のリアリティから、広告には「貴方は、その違いを聞きわけることができるでしょうか?」とややハードル上げ過ぎ的なコピーが書かれていた時期がありました。実際、本物のグランドピアノとK-250を同ステージで聴き比べたコンサートも開催されたそうです。判定(?)の結果は定かではありませんが、それほど生音系のシミュレートには自信があったのでしょう。。
 
 
 
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仕様
■鍵盤:88鍵(木製鍵盤、ベロシティ対応ウェイテッド・アクション)
■最大同時発音数:12
■プリセット:30(オプションでサウンドROMカートリッジを追加可能)
■シーケンサー部:12トラック(最大4,000音/オプションのRAMを追加により8,000音まで拡張可能)
■外形寸法:1422(W)×229(H)×686(D)mm
■重量:53kg(電源部含む)
■価格:3,980,000円(日本での当初の定価)
■発売開始年:1984年

 

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