【Vol.54】Oberheim Matrix-1000 ~エムセン回顧録[1988年]
2019/02/10
今回ご紹介するシンセサイザーはOberheim(オーバーハイム)の「Matrix-1000」です。発売は1988年。通称 “エムセン”。1Uラック・サイズにオーバーハイム・サウンドを凝縮したアナログ音源モジュールとなっています。どのような内容のシンセサイザーだったのでしょう。
中身は?
同社のMatrix-6/6Rと同じ音源を内蔵しています。本体内でエディットはできませんが、当時の各サウンド・エディティング・ソフトには対応していました。
関連記事:「Oberheim Matrix-6/Matrix-6R ~強力多彩な「マトリックス・モジュレーション」機能搭載シンセ[1986年頃]」
音色の内訳は?
世界中の一流プログラマーによって作られた(らしい)800ものプリセット音色を内蔵しています。内訳は以下。
キーボード系:195種
ストリングス系:118種
木管/ブラス系:130種
シンセサイザー系:239種
ベース系:119種
リード/ソロシンセ系:74種
SE/パーカッション系:125種
これにユーザーRAMの200パッチを加え、合計1,000音色と相成るわけです(→「000~199」がユーザー領域、「200~999」がファクトリー・プリセット領域)
ユーザー領域には内蔵音色をアサインする他、Matrix-6/6Rで作った音色を取り込むこともできます。
内蔵音色数の1,000音色は今でこそごく普通のスペックですが、当時は内蔵メモリー容量にも限度があり、多くの音色を備えたい場合は、音色カードやカートリッジなどの外部ROMを差し替えて使わなくてはならない時代でした。そこで1Uのサイズでデフォルト1,000音色という本機は大いに注目されたわけです。
Oberheim Matrix-1000/(株)ハモンドスズキ 雑誌広告より画像引用
同時発音数について
本機は6音ポリですが、同じMatrix-1000を複数台つなげればその分だけ増えていきます。つまり2台あれば12音ポリ、3台あれば18音ポリになります(最高36音ポリまで)
白パネルと黒パネルについて
Matrix-1000には「白パネル」のものと「黒パネル」のものが存在します。現在の中古市場を見ても、白パネルの方が希少価値が高く、価格も若干高いみたいですね。どのような違いがあるのでしょう。
ずばり、わかりません!。ごめんなさい調べきれませんでした。僕は長年「日本とUSの違い」みたいなものだと思い込んでいたのですが、どうやらそうではないみたいです。
ただし、“黒が先”で “白が後”に発売されたということは分かっています。なお黒の時代は(株)ハモンドスズキが日本の販売代理店であり、白の時代(→主に90年代)は(有)安田商店が扱っていたことも何となく分かっています。安田商店の元社長さんに今度聞いてみようかな。。
個人的感想
ほぼプレイバック専用モジュールといっていいので、プリセット音色の出来は非常に気になるところです。収録音色数は多く、種類も多彩ですが、何といっても「パッド系」「ストリングス」「ブラス」の出来は素晴らしいですね。いかにもオーバーハイムっぽい明るいブラスの音は本機でも味わうことができます。
ただしプリセット音はかなり不規則に並んでいて、欲しい音がどこにあるのかを探すのには相当手間取ると思います(僕は実際、“使える”音色番号をメモしていました)。
補足
近年、Pharmasonicという会社から、「STEREOPING 1016R」というMatrix-6/6R/1000の専用プログラマーがリリースされています。これはMIDIでつなげてツマミ等でリアルタイム・エディットできるというものみたいです(ローランドの古い外付けコントローラー・PGシリーズみたいなものですね)。興味がある方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
Pharmasonic STEREOPING 1016R
関連記事(上記とは別の90年代製・専用プログラマー):
「ACCESS Matrix Programmer/MicroWave Programmer ~ACCESS初の製品[1996年頃]」
仕様
■音源方式:DCO(Matrix-6/6Rとデータ・コンパチブル)
■最大同時発音数:6音
■メモリー音色数:800プリセット+200ユーザー・プリセット
■外形寸法:483(W)×43(H)×278(D)mm
■重量:4.2kg
■発売当時の価格:69,800円
■発売開始年:1988年