【Vol.43】KORG Prophecy ~コントローラーが全てアサイナブルなモノ・シンセ[1995年]
2018/11/24
今回ご紹介するシンセは、KORGの「Prophecy(プロフェシー)」です。発売は1995年で、当時の定価は128,000円、37鍵モノフォニックという実にいさぎよい仕様(外観)! そして何やら斬新な左側のコントローラー。。
キャリア晩年期のジョー・ザヴィヌル(ウェザー・リポートのキーボーディスト)が愛用していたことでも知られていますね。ちょっと内容を見てみましょう。
発売当時の背景
Prophecyは、物理モデル音源を搭載したモノフォニック・シンセサイザー(最大同時発音数・1)です。
当時のコルグはTRINITYというシンセも出しており、“次世代のワークステーション型シンセの方向性を示したTRINITY”に対し、“ソロ楽器としての可能性を追求したProphecy”といった感じでした。時代がワークステーション型に傾いている中、Prophecyは「物理モデル音源」という特異なキャラクターを打ち出して発売されました。もちろんGMなんて対応してません。
「モノフォニック物理モデル音源」と聞いて思い浮かべてしまうのがヤマハのVL1。なおProphecyは7種のオシレーター・タイプを採用しており、コルグはこれを「MOSS音源」と名付けました(※これらシンセサイズ方式はどれも物理モデルを応用した音源)。
個人的には、“生管楽器に強いVL1”というイメージに対し、“シンセベースに強いProphecy”という印象が強かったです。
関連記事:「YAMAHA VL1 ~【前半】世界初のVA音源を搭載した新世代シンセサイザー[1993年]」
Prophecy/(株)コルグ 雑誌広告より画像引用
シンセサイズ部分の特徴(補足)
アナログ・シンセをシミュレートしたオシレーターから、サックスなどの管楽器、ベースなどの物理モデリング・オシレーターまで、計7種類のオシレーター・タイプを持っています。
基本となる「Standard Oscillator」については、低域の音の出方はいかにもデジタルな感じでしたが、音像ははっきりしていて全体的にエキサイターをかけたような音です。芯のあるシンセ・ベースなどに有効といえるでしょう。
「Brass Model Oscillator」「Reed Model Oscillator」は生楽器のシミュレート用オシレーターとして、トランペット、トロンボーン、サックス、フルートなどをリアルに再現可能です。
他にもいくつかのオシレーター・タイプがありますが、これらの異なるオシレーターを2つ組み合わせて、コンビネーションとして使うこともできます。
リアルタイム・コントローラーについて
そういったソロ用の物理モデル音源を生かすべく、Prophecyのリアルタイム・コントローラーは、ノブも含めて全てのパラメーターをアサイナブル(割り当て可能)となっているのが大きな特徴といえます。
形状的に独特なのが、ベンダーとリボンコントローラーを足したような「ホイール3」。本体左側に割と大きなスペースを取って鎮座していますね。これは、ピッチ・ベンドしながら他のパラメーターを最大2つまで、リボンのX方向とZ方向でコントロールが可能となっています。
器用な人になると、下の「ホイール1(2)」などにまた別のパラメーター(エフェクター変化量とか)をアサインし、複数のコントロールを片手で同時に行うなんて猛者もいました。
個人的つぶやき的な
これは僕の楽器屋時代に展示品としても常設していたので、徹底的に遊んだのを覚えています(店はたいていヒマだった。。)
本機で搭載された「MOSS音源」は、のちの同社のZ1にてポリフォニック化しましたが、何かキャラクターが薄味になってしまったような気がします。僕は私物のTRINITYにMOSSボードを増設したのですが(→KORG SOLO-TRI)、やっぱりちょっと物足りない感じでした。。
当時は決して大ヒットという感じではなかったこのProphecyですが、発売から20年以上が経ち、その “ワン・アンド・オンリー”な音質・操作性が再評価され、現在でも活発に取引されているみたいですね。こういった流行に左右されないブレない製品作りは、当時のコルグさん流石!と思います。
仕様
■鍵盤:37鍵(ベロシティ、アフタータッチ対応)
■最大同時発音数:1音
■音源:MOSS方式
■エフェクト:7
■プログラム数:128
■アルペジエーター:5プリセット+5ユーザー
■外形寸法:740(W)×286(H)×100(D)mm
■重量:5.7kg
■発売当時の価格:128,000円(税別)
■発売開始年:1995年