【Vol.139】ALESIS S4 ~QuadraSynth(クアドラシンセ)のラック版[1993年]
2019/01/17
今回ご紹介するシンセサイザーはアレシスの「S4」という機種です。当時の価格は158,000円。発売は1993年で、同社のQuadraSynth(クアドラシンセ)と同じ年に発売された、QuadraSynthの1Uラック版に当たるものです。
概要
QuadraSynth(クアドラシンセ)の音源部のみを凝縮した1U音源モジュール。なおクアドラシンセについては以前本ブログでも記事にしているので、機能についてはそちらをご参照いただければ幸いです。
関連記事:「ALESIS QuadraSynth ~アレシス初号機・クアドラシンセ[1993年]」
中身はほぼクアドラシンセなので、64音ポリフォニックのサンプルプレイバック・タイプのシンセサイザーということになります。内蔵波形容量は同様に16Mバイト。当時としては画期的な “同時発音数64”を、(比較的)低価格で実現した音源モジュールといった感じです。
見た目について
鍵盤バージョンのクアドラシンセはそのデザイン重視の外観が一部で物議を醸し(笑)、良くも悪くも注目を集めました。一方、本機S4は1Uということもありごくシンプルなデザインにまとまっていますね。フロントパネル表面にアールがついており、丸みを帯びた柔らかい印象のデザインとなっています。
コントローラー部
フロントパネルに配された4つのつまみ・「QUADノブ」が特徴的です。当時の1Uシンセで各パラメーター操作用のノブが4つも装備されているのは珍しかったですね。このノブによってパラメーターの設定値変更が4つ同時に行え、音色作りが容易になっています。
液晶パネルは1Uにしては大きく、クアドラシンセ同様、それぞれのノブに対応して棒グラフの表示量が変化します。
各種端子について
リアパネルには、同社のadatマルチトラック・レコーダーへ直接デジタル転送が可能となるデジタル・インターフェイスを装備しています。またオプティカル・アウトも別途用意していて、デジタル出力にめっぽう強い音源モジュールというイメージが強かったように思えます。
他にも2系統の(オーディオ)アウトプットを備えていて、フロントパネルにはカードスロットが1基装備されていますね。
「S4 Plus」について
S4リリースの翌1994年に発売された、いわばS4のマイナーチェンジ版。シーケンス用のGM対応音色を中心としたサウンドが追加されています。
ちなみにQuadraSynthとS4は、当初市場からの反応はいいとは言えず(→要するに売れなかった)、そのテコ入れ的に投入されたのが「QuadraSynth Plus Piano」と「S4 Plus」ということらしいです。いずれもベーシックな音色群を追加しており、これによりようやくセールス的にも成功を収めたといいます。
個人的かんそう
これもかつて勤めていた楽器屋で入荷したことがあって、ライトな気分で試奏した記憶があります。QuadraSynth/S4の音のキャラクターは薄く、個人的には、アクの強いアメリカ製というイメージとは遠い感じでしたね。とはいえ当時のE-muの1Uモジュールと比べるとボタン・ノブ類は多く、操作性は比較的高かったと思います。
余談的な
QuadraSynthの記事でも書きましたが、本機は「サンプル・プレイバック・シンセサイザー」と市場には捉えられることが多く、当時のほとんどのユーザーはパラメーターをほとんどエディットせず、プリセット音色をほぼそのまま使っていたそうです。
ならばエディットする必要が(あまり)ない音色を中心に増やして、「素晴らしいプリセット音色をそのままお使いください」みたいな、ある意味開き直った感じで作られたのが「Plus」だったみたいですね。結果的に好セールスを上げ、のちのQSシリーズの礎にもなったという感じでしょうか。
関連記事:
「ALESIS QuadraSynth ~アレシス初号機・クアドラシンセ[1993年]」
「ALESIS QS6 ~ヒットシンセ・QSシリーズの初号機[1995年]」
仕様
■音源方式:QSコンポジット・シンセシス
■最大同時発音数:64音
■内蔵波形ROM:16Mバイト
■内蔵音色数:プログラム 128音色×2(プリセット,ユーザー)
ミックス 100音色×2(プリセット,ユーザー)
■内蔵エフェクト:完全独立4系統デジタル・ステレオ・マルチ
■外形寸法:430(W)×44(H)×150(D)mm
■重量:2kg
■発売当時の価格:158,000円(税別)
■発売開始年:1993年