1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.67】Roland JX-3P ~世界初のMIDI規格対応シンセ(のひとつ)[1983年]
2018/11/25
今回取り上げるのはローランドが1983年に発売した「JX-3P」というシンセです。名前にある “3P”というのは、「Programmable Preset Polyphonic SYNTHESIZER」という意味の英語の頭文字を取ったものらしいですよ。
Roland JX-3Pは、SCI Prophet-600、YAMAH DX-7と並んで、世界初のMIDI規格対応シンセ(ローランド初のMIDIシンセ)としてその名を残しています。逆に言うと、MIDIが一般市場に登場してからもう30年以上も経つんですね。。
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どんな内容だった?
最大同時発音数は6、プリセット音色は32種類。本体価格は185,000円(発売当初)という、当時としては比較的安価なポリフォニックシンセとして発売されました。かつて一世を風靡したJupiterやJunoシリーズとは一線を画して、デジタル制御によるDCO発音方式を取り入れた機種です。
6音12DCOのデュアルDCOのため、シンクロ・トーン、メタリック・トーンなど厚みのあるサウンドが作り出せます。
別売りプログラマー「PG-200」について
JX-3Pを操作する上で非常に重要なのが、別売りのプログラマー「PG-200」(当時の定価35,000円)。要するに本体とつなげてシンセサイズしやすくする、ツマミのついた箱のことです。
これをJX-3P本体パネル右上の空きスペースに置くのが定位置ですね(確か磁石でくっつくようになっていました)。PG-200がないと、本体内のみでエディット/プログラミングをすることになり非常にめんどくさいです。
またこのPG-200により、作ったオリジナル・サウンドもメモリー可能になります。また最大128ステップまでの自動演奏ができるポリシーケンサーも内蔵していました。脇役なのにえらく優秀ですね! ちなみにPG-200は、音源モジュール「MKS-30」にも使用することができます。
なおJX-3Pは、外部MIDIによる同期演奏時にはPG-200が全く使えなくなる構造となっているので、PG-200を使えるのは手弾き演奏中に限られます。ここら辺はMIDI黎明期の不完全さが若干垣間見られますね。
個人的感想的な
例によってこの機種も、僕の楽器屋時代に取り扱っていたため一通りいじったりしてました。何度か入荷したのだけど、PG-200は一度も付いてなかったですね。このPG-200が付くと付かないとでは、商品価値が大きく変わってきます。というか、中古市場ではJX-3P本体よりもPG-200単体の方が高値で取引されているそうですね。
音作りは、クロスモジュレーション(金属音的な変調)によって豊富な高調波を含んだ波形を生成することが可能です。音のキャラクターはブライトですが、独特のチープ感が漂います(笑)。でもパッド系は結構面白い音が出ますよ。
つぶやき的な
そんなJX-3Pですが、ほぼ同時期に出たフルデジタルのYAMAHA DX7の爆発的ヒットにより、あまり注目されることもなくひっそりとラインナップから消えて行きました。当時のDX7の人気の影に隠れて忘れ去られてしまった、悲運の銘機?と言えるかもしれません。
ちなみに、この「じぇーえっくす さんぴー」と発音するのが、楽器店で働いていた当時の僕にはどうしても気恥ずかしくて、いつも「JX」と略して呼んでました。今考えると何故そんなに恥ずかしかったのか謎です。。
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仕様
■鍵盤:61鍵
■最大同時発音数:6音
■プリセット音色:32種
■外形寸法:912(W)×115(H)×325(D)mm
■重量:9.8kg
■発売当時の価格:185,000円
■発売年:1983年