PSE法とは何だったのか ~かつての騒動を考える
2018/11/24
「PSE問題」とは、日本の電気用品安全法に基づく表示(PSEマーク)がついていない電気用品の販売を認めないことにより生じた一連の問題のことです。
新法移行のための猶予期間切れ(→2006年4月1日)が直近に迫った2005年末から2006年初頭にかけて、経済産業省が突如として中古品も販売規制の対象となるとの見解を打ち出したため、これに対して、消費者や一部の中古品販売業者などが反対運動を展開し、社会問題となりました。
あれから10年余が経ち、結局あの騒動は何だったのだろうかと思い、改めてまとめてみました。
PSEとは
旧来の電気用品取締法(電取法)が改正され、「電気用品安全法」として2001年4月1日に改正施行されました。この「電気用品安全法」がいわゆるPSE法(Product Safety Electrical Appliance&Materials)と呼ばれています。
音楽業界においては、音楽機器などが取引不可の懸念があるとして松武秀樹氏が発起人となり、坂本龍一氏ら著名音楽家の呼びかけで、規制緩和を求めるインターネット署名を経産省に提出するといった動きが起きました。坂本氏らは、少なくともビンテージものだけはPSE法の規制から除外してほしいと訴えたのです。
またリサイクルショップなどにとっても本法律は大打撃であり、「中古品の在庫が扱えなくなり利益を確保できない」、「買い取りに対して多大な点検の手間を要するようになる」などの理由により、2006年3月30日をもって閉店を余儀なくされた店もあるそうです。そういった業者へのその賠償保障(買い取りなど)についても具体的になされないままでした。
経産省、ミスを認める
そういった動きを受けてか、2006年3月14日、経済産業省は以下の方針を発表しました。
ビンテージものの電子楽器や音響機器、写真関係機器については、以下の要件を満たす場合は簡単な手続きで売買ができるようにする。
1. 電気楽器、電子楽器、音響機器、写真焼付器、写真引伸機、写真引伸用ランプハウス又は映写機のいずれかであること。
2. 既に生産が終了しており、他の電気用品により代替することができないものであって、かつ、希少価値が高いと認められるものであること。
3. 旧法(電気用品取締法)に基づく表示等があるものであること。
4. 当該電気用品の取扱いに慣れた者に対して国内で販売するものであること。
※経済産業省ホームページより引用 <http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/>
経産省、再度の方針転換
上記方針を見て分かることは、経産省はビンテージ機器を「例外」として、(事実上)除外すると発表したということです。しかし一方で「ビンテージ品だけ除外は不公平」という声が高まると、その他の機器についても「レンタル扱い」で販売を事実上容認したほか、販売店の自主検査でPSEマークを添付できるよう、全国500カ所に検査体制を築くとしました。
その後経産省が改めて検査したところ、旧法とPSE法で安全基準に差がないことが判明したとのことです。「出荷段階で安全が確保されていればいいというのは、旧法とPSE法で変わらない。中古品の販売時に改めて検査する必要はない」とし、「立法時に、中古品を想定していなかった」と正式に謝罪しました。
個人的に思う処
本法律はリサイクルの動き(中古品を活用する、モノを大切に長く使う)に逆行するものであり、「壊れたらどんどん新品を買いましょう~」という、政府とメーカーとの癒着までも疑われるような内容だったと思います。
何度かの方針転換にしても、ビンテージ品の概念がよく分かっていないお役人が、“苦肉の策でひらめいた!”みたいな感じですね。。「レンタル」の概念が出てきた時は “なんじゃそりゃ!”とツッコミ入れてましたよ僕は。。当時の僕は楽器業界にいなかったのでこんな他人事目線だったのですが、生活がかかっている人にとっては死活問題だったのでしょう。。
政府の打ち出す方針は必ずしも万人にとって有益とは限らず、それは一部仕方がないことでもあると思うのですが、必要な時には勇気を出して声を上げ、変えていくための行動を起こさなければいけないのだ、とつくづく感じました。