【Vol.306】Roland FP-3 ~ローランドのスタイリッシュ・本格デジピ[2001年]
2019/07/15
今回ご紹介するキーボードは、ローランドが2001年11月に発売したデジタル・ピアノ「FP-3」です。発売当初の本体価格は税抜148,000円(のちにオープンプライス)。前モデル「FP-9」から3年の歳月を経てリリースされた後継機ですね。
FPシリーズといえば脚部(スタンド)がオプションとなっているのが特徴で、本機FP-3では本体側にもスピーカーおよびアンプは内蔵されていません。その分価格は(当時としては)比較的抑えられており、家庭用としてはもちろん外での演奏(→ライブ)にも持っていける可搬性が売りでもありました。
内蔵音色について
音色は6つのグループに分けられ、それぞれToneボタンに割り当てられています。
Piano
E.Piano
Organ
Guitar/Bass
Strings/Pad
Voice/Winds
上記の各音色グループには6~8つの “バリエーション”があり、本機では全40種類の音色(※ドラムセット2音色含む)から演奏時の音を選ぶことができます。
FPシリーズとしては、オルガン音色とギター/ベース音色が搭載されたのは本機が初ですね。もちろん2つのボタンを同時押しすることで音色をミックスする「デュアル演奏」も可。
鍵盤タッチについて
低音域は重く高音域は軽くといったように、鍵域によってタッチ・ウェイトが異なる「プログレッシブ・ハンマー・アクション鍵盤」を採用。前モデルのFP-1ではただの「ハンマー・アクション鍵盤」だったので、よりリアルなタッチ感に近付いたといった感じでしょうか。また鍵盤タッチは、鍵盤を弾く強さと音量を「軽い」「標準」「重い」の3つの種類から選ぶことができます(加えてベロシティ固定のモードもある)
ちなみに本機リリースのほぼ同時期にヤマハからはP-120というデジタル・ピアノが発売されています。こちらも “高音域ほど軽く、低音域ほど重みを増す”鍵盤を採用していて、ヤマハさんの場合は「グレード・ハンマー鍵盤」と呼ばれていました。余談でした。
関連記事:「YAMAHA P-120/120S ~2000年代初頭の大ヒットデジタル・ピアノ」
スタンド(別売品)/エフェクトについて
専用スタンド(FPS-10A・定価17,000円)を取り付ければ、スタンドに内蔵されたスピーカーから音を出すこともできます。この辺りは先々代のFP-1と同様の仕様といったところですね。なお同時発音数は64音となっていて、FP-1の28音と比べると順当に基本性能がアップしていると見ることができます。
あと、当時このクラスのデジタルピアノとしては珍しい「ソステヌート・ペダル」に対応していました。Pedal Soft端子につないだペダルは、ソフト/ソステヌート/エクスプレッションの各ペダルに切り替えができるようになっています。
関連記事:「ピアノのソステヌートペダルについて」
内蔵のエフェクトは10段階の深さ調節が可能なコーラス、リバーブを内蔵。ちなみにオルガン音色選択時にコーラス・ボタンを押すと、オルガンのロータリー効果のうねりの速さを変えることができます。つまりはコーラス・ボタン一つでオルガンのSLOW/FAST切替ができるといった感じであり、これはややバンド向け仕様に寄せてきたなという印象です(ただしロータリー効果の深さを変えることはできない)
演奏モードについて
通常の演奏モードの他に、鍵盤のアッパー/ロワーに異なる音色を振り分けて演奏できる「スプリット機能」を装備。これ自体は目新しい機能ではないのですが、FP-3ではアッパー音色とロワー音色の音量(およびダンパーペダルの効き)を独立して調整可能だったり、ロワー音色の音の高さをオクターブ単位で変更することが可能となっています。もちろん前述した「デュアル機能」でも同様に調整可。
一昔前の高価なプロ向けマスターキーボードならまだしも、本機のような家庭向け電子ピアノでそこまでできるというのは特筆すべきポイントと言えるでしょう。ステージでの使用も想定して開発が進められていたことが推し量れます。
セッション・パートナー機能について
本機には、ドラム音とベース音を基本とした60種類の “リズム”が内蔵されており、そのリズムに合わせてセッション感覚でピアノを演奏するという楽しみ方もできました。“リズム”のコード・パート(主にベース)ではコード進行を自動的に演奏してくれますが、自分でコード進行を指定することも可能です。
7セグメントLED装備!
本機ではFPシリーズとして初めてセグメント表示のLEDを搭載。メトロノーム機能やトランスポーズ(移調)機能が半音単位で-6~+5の間で可能なところは先代のFPと同様なのですが、このLED表示により各段に使い勝手が良くなりました。
FP-3/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
個人的かんそう
21世紀に入っての新モデルということで、機能・操作性・軽量化などさすがに全体的に大幅バージョンアップを遂げているといったところです。デジタルピアノは各メーカーごとの “カラー”があり好みも人それぞれなので、音/タッチを客観的に評価するのは難しいのですが、ポップスなど明るめの音色を好むのであれば、本機FP-3のようなローランド・デジピはうってつけという印象です。
あと、本機のシャンパン・ゴールドのボディは都心のデザイナーズマンションとかにもマッチする、歴代FPの中でも最もオシャレかつ都会的なカラーリングだと個人的には思ったります(笑)。もちろんライブステージでも映えそうです。
余談ですが、FP-3はピアニストのまらしぃさん(→トヨタ“AQUA”のCMで使われた「千本桜」のピアノソロ・カバーなどで有名)がかつて愛用していたデジピでもあるそうですよ。
関連記事(ローランドFPシリーズ):
「Roland FP-8 ~ローランド・デジタルピアノ「FP」の元祖[1991年]」
「Roland FP-1 ~1994年発売の “2代目”FPデジタル・ピアノ」
「Roland FP-9 ~64ボイスに対応! 90年代末のFPデジタル・ピアノ [1998年]」
上記FP-8の記事では、これまでリリースされたFPシリーズの系譜みたいなものも簡単に記してあります。興味のある方は読んでみてください。
仕様
■鍵盤:88鍵(プログレッシブ・ハンマー・アクション鍵盤)
■最大同時発音数:64音
■内蔵音色:6グループ 40音色(※ドラムセット2含む)
■内蔵リズム:60種
■エフェクト:リバーブ(10段階)、コーラス(10段階)、シンパセティック・レゾナンス(10段階)、ロータリー
■レコーダー部:
記憶曲数1、トラック数3、記憶音数 約30,000音
■付属品:ACアダプター、ペダル(DP-6)、譜面立て、カバー、オーディオケーブル他
■オプション:専用スタンド FPS-10A(17,000円)
■外形寸法:
1291(W)×124(H)×302(D)mm
■重量:18.5kg
■発売当初の価格:148,000円(のちオープンプライス)
■発売開始年:2001年