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その他メーカー 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.281】Sherman FILTERBANK ~劇的な音変化が可能なフィルター専用機[1997年]

2018/11/26

 

 

 今回取り上げる機材は、ベルギーのSherman(シャーマン)というメーカーがリリースした「FILTERBANK」というモデルです。日本での発売は1997年頃。価格は118,000円でした。これは何かというと、入力した音(信号)を劇的に変化させることができるという音色改造(破壊!?)マシンといったところです。特に、当時流行っていたテクノ系クリエイターやDJらから支持されました。

 

Sherman FILTERBANK

 

 シンセサイザーにはフィルターという機能があり、それにより(シンセ内蔵の)音色を様々に変化させることができるのですが、本機はそのフィルター・セクションに着目し、フィルター部分だけを取り出して一台の製品に仕上げちゃったという感じですね。よって本機だけで音を出すことはできません。外部の音を入力させてナンボのマシンです。
 
 
 

概要

 多数の外部入出力端子を備えたアナログ・フィルター・マシン。基本構成は12dB/octのマルチモードVCFが2基、VCAも2基となっていて、これにモジュレーションソースとして、エンベロープ・ジェネレーター2基(ADSR/AR)、LFO1基、エンベロープ・フォロワー1基が装備されています。
 
 
 なお本機は豊富なMIDI端子(MIDI IN、OUT、THRU×3)を備えており、多くのパラメーターはMIDIでコントロールすることが可能です。
 
 
 何だか往年のアナログシンセの紹介をしているような錯覚を覚えますね。ただし本機にはシンセの心臓部であるオシレーター(VCO)は存在しないという不思議。。その代わり、ボーカルだろうが何だろうがあらゆる音を通過させることができます。
 
 
 

操作

 音声の入力はリアパネルにあるSIGNAL IN端子から。外部からの信号の入力を検知すると、ADSR/ARの各エンベロープがトリガーされ、2基のVCFとVCAをモジュレートするという流れ。入力レベルを上げていけばサウンドを過激に歪ませることができ、さらにフィルターのレゾナンスを上げて行くと耳を刺すほどに発振します(笑)。なおLFOは可聴帯域にも届く周波数で発振します。
 
 
 パネルには多くのツマミがありますが、音色変化の基本となるのはシンセでもおなじみのFREQUENCYツマミとRESO(レゾナンス)ツマミ。パネル下段は左側に①、右側に②と数字が書かれており2系統であることを意味しています。なおこの2系統のフィルターは、パラレルとシリアル(並列と直列)の接続を選ぶことができ、シリアル接続時には24dBのフィルターとして機能します。
 
 
 ①と②の間にはHARMONICSツマミというのが鎮座しており、このツマミによって2基のVCFのハーモニクスを、ユニゾンから4オクターブ下までのチューニング(→16種類)でシンク(同期)を掛けることができますね。
 
 
 

独特なエンベロープ・ジェネレーター

 本機のエンベロープ・ジェネレーターはいわゆるシンセのそれと同様にADSRで機能しますが、サステインをマイナス・レベルまで設定することもでき(→パネル上にもカーブが絵で描かれている)、一般的なシンセではちょっと考えにくいエンベロープ・カーブを作ることもできます。なおADSRツマミはパネル上段のやや左側にあります。
 
 
 

複数台のFILTERBANKとのリンク

 本機を2台つなぐと48dB/oct、3台つなぐと72dB/octの特性を持ったフィルターに拡張させることも可能だそうです。

 

 

 

まとめ的な

 元音の原型をとどめないほど過激に破壊するサウンドが本機の売りとも言えますが、アナログならではのなめらかなフィルターによる音色変化は、いわゆるライブ・キーボーディストが使っても面白いと思います。DJがフロアでのリアルタイムプレイで観客の度肝を抜く変化を仕掛けるもよし、ロック/ポップス系ミュージシャンがサンプリングした音の手弾き用コントローラーとして使うもよし、といった感じです。
 
 
 本機の内部構成は基本的にアナログですし、入出力もデジタルに対応しているわけでもなく、高音質を謳っていたわけではありません(実際S/N比はさほど高くなかったそう)。にも拘わらず多くのクリエイター/DJらに支持されているのは、そのノイズ成分(伝送時の雑音)ですら本機の味ということで受け入れられていた側面もあったらしく、“音楽的なサウンド”を求めるミュージシャンにとって長く愛用されている理由の一つにもなっていると思われます。
 
 
 

個人的つぶやき

 本機の登場は個人的には衝撃的でした。。シンセ専門店に勤めていた頃に中古として仕入れたことがあるのですが、こんなに破壊的・暴力的に(笑)、かつ劇的に音が変化するとは想像だにしませんでした。フィルターだけの製品で商売になるのかい? と当初は懐疑的な個人的印象でしたが、これは “アリ”な一台だと思います。
 
 『FILTERBANKは楽器である!』とか熱く語っていた人もいたなぁ。。
 
 
 さておき、本機には「FILTERBANK 2」という、様々な機能が追加された新バージョンが2001年頃に発売されたのですが、こちらはまだ現行品として流通されているそうですので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
 

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仕様
■構成:VCF×2、VCA×2
■フィルター特性:12dB/oct
■モジュレーション・ソース:エンベロープ・ジェネレーター(×2、ADSR/AR)、エンベロープ・フォロワー、LFO
■外形寸法:430(W)×80(H)×110(D)mm
■重量:およそ2kg
■発売当時の価格:118,000円
■発売開始年:1997年

 

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