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ALESIS 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.253】ALESIS Micron ~Ion譲りの音源を搭載したコンパクト・シンセサイザー[2004年]

2018/11/26

 

 

 今回の注目シンセサイザーは、2004年にALESIS(アレシス)が発売した「Micron(マイクロン)」という名のバーチャル・アナログシンセです。鍵盤はレギュラースケール(ミニではない)37鍵仕様。以前本ブログでも紹介した「ALESIS Ion(イオン)」の翌年に発売された、いわばIonの弟分に当たるようなマイクロ・シンセサイザーといった感じですね。発売当初の定価は73,290円でした(現在は販売終了)

 

ALESIS Micron

イタリアの鍵盤専門店で撮影したALESIS Micron
 
 
 
 ボディ・デザインはIonと同様に赤とシルバーメタリックを基調としたポップなもので、カラフルな赤系統のLEDも相まって、女性ならずとも『かわいい』と思わせるルックスだと思います(笑)。でもこのMicron、中身はなかなかの実力を持っているのです。
 
 
 なお内部の基本仕様は先発のIonとかなり近い内容になっているので、気になる方はIonの記事も参考にしてみてください。
 
 関連記事:「ALESIS Ion ~アレシス初のバーチャル・アナログシンセ[2003年]
 
 
 

概要

 アレシスが独自に開発した、Ion直系のDSPエンジンを搭載し高速処理を実現。オシレーターは3基あって、連続可変するウェーブ・シェイプとFM音源から選択可能となっています。最大同時発音数は8ボイスで、4マルチティンバー発音可能。
 
 
 37鍵で、奥行わずか約20cmというコンパクト筐体であり、Ionで見られた多数のつまみ/スイッチ類は大胆にカットされています。
 

ALESIS Micron

 
 ここからは私見ですが、太く粘り気のあるリード音、ベース音などのヴィンテージ・アナログ音色は非常にいい音がしますね。決して多くはない操作子の割に全体的な操作性も悪くないと思いますよ。
 
 
 

パターン作成機能について

 Micronには、いわゆるワークステーションに内蔵されているシーケンサーとはちょっと考え方が異なる、感覚的な操作が手軽に行える「パターン作成機能」が搭載されています。
 
 
 「patterns」は、200種類以上ものアルペジオ・パターンが収められたいわゆるアルペジエーター。「rhythms」はドラム音色によるいわばリズム・シーケンサー。「setups」は上記2つを組み合わせたようなもので、複数のリズム・ループやシーケンスから新しいコンビネーション・パターンを創り出すというものです。
 
 
 他にも、ボタンを押している間、思いついたフレーズをメモ代わりに録音(メモリー)/再生することができる「phrase」機能というのもあります。いわゆる “リアルタイム・フレーズ・シーケンサー”であり、録音したフレーズはループ再生させたり移調させたりもできます。

 

 

 

操作性について

 ノブやスイッチなどの操作子は多くなく、操作には若干の不安を覚えるのが正直なところ。。でも大丈夫、本機の白鍵は、音色カテゴリーや各パートのカテゴリー、あるいはエディット用の各パラメーターを選択できる「スイッチ」にもなるのです。キー・スイッチに対応する項目については、各白鍵の奥に文字で印刷されています。
 
 
 この辺りは、少ない操作子で多くの機能を持たせようとした開発陣の工夫が見られますね。個人的には「カシオトーン CT-201」を思い出してしまいました(笑)
 
 
 関連記事:「CASIO カシオトーン CT-201 ~1980年発売のカシオトーン第1号機
 
 
 

リアルタイム・コントローラーについて

 本機には、パネル左から2本のスライダー、ピッチホイール、3つのノブが配置されています。
 
 
 スライダーはシンセとしては珍しい横方向への移動となっていますね。左手をパネル側面に添えつつ親指でリアルタイム操作、といきたいところですが、間にボリューム・ノブが位置しているのでちょっと使いにくいかなという個人的印象。一番左に設置して欲しかった。
 
 
 スライダーの右にはスケルトン仕様のピッチホイールがあって赤桃色に発光します。これもIon譲りですね。ただし配置場所がこれまた中途半端で、慣れるには多少時間がかかるかもしれません。まあ限られたスペースで必要最小限のコントローラーを配するとなると致し方ないところでしょう。。
 
 
 3つのノブは「X」「Y」「Z」と銘打たれています。これは360度回転するタイプであり、ユーザーがパラメーターの中から任意にアサインすることができます。なお各ノブの解像度はMIDIの32倍に相当するそうで、微妙な変化にも細かく対応してくれます。この辺りは高速DSPエンジンのもたらすパワーといったところでしょうか。
 

ALESIS Micron(advertisement)
ALESIS Micron,Ion/プロ・オーディオ・ジャパン(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

つぶやき的な

 定番の “いろんな音が入ってる系”のシンセ(あるいはデジタルピアノ)を中心に据えた場合、本機は手軽にアナログサウンドを加えられるということで、強力なセカンド・シンセと言うことができると思います。全体的な音もいいし、フィルター・カットオフの滑らかな音色変化は、このサイズ感からしたらかなり驚きです。
 
 
 鍵盤数は多くないですが(→3オクターブ)octaveボタンによって8オクターブをカバーするので、慣れればライブでの演奏性も結構高いと思うのです。そして3.5kgという超軽量もうれしい! さらに手軽なMIDIキーボードとして打ち込み用途としても使えそうですね。
 
 
 

補足

 後年には、本機の限定カラーバージョン「Micron SE(Special Edition)」もリリースされました。本体カラーが青になっているのですが、中身は同じだそうです。ちなみにホイールのLEDは青色ではなく赤桃色のままです。
 
 

仕様
■鍵盤:37鍵  ※ベロシティ対応(ノート・オン/オフ時)
■音源方式:DSPアナログ・モデリング
■同時発音数:8ボイス
■パート数:4マルチティンバー
■構成:3オシレーター、2フィルター、3エンベロープ・ジェネレーター、2LFO、アルペジエーター、フレーズ・シーケンサー、簡易MIDIレコーダー、ボコーダー
■エフェクト:4パート・ドライブ・エフェクト(1パートにつき1基)、マスター・エフェクト(共有)
■外形寸法:563.88(W)×69.85(H)×203.20(D)mm
■重量:3.5kg
■発売当初の価格:73,290円
■発売開始年:2004年

 

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