1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.200】Roland SYSTEM-700 ~国産初の大型モジュラー・シンセサイザー[1976年]
2018/11/25
機材紹介200回目の今日は、1976年にローランドから発売された「SYSTEM-700」についてお話してみたいと思います。国産初にして唯一の大型モジュラー・シンセサイザーとして君臨しているモノフォニック・シンセといった感じですね。発売当初の価格はフルセットで240万円でした(→1981年の価格改定後は265万円)
当時考えうる音作りの機能の全てをパネル面に集約。1ボルトで1オクターブを変化させるといった音程の設定が、海外のモジュラー・シンセと同様の作りとなっていました。また高級部品をふんだんに搭載したぜいたくな仕様となっており、当時のMOOGやブックラなどの海外製品と肩を並べる世界レベルとも言える高級機でした。
SYSTEM-700の構成
標準的なフルセットで7つのブロック(キーボード・コントローラー含む)から成る大型モジュラー・シンセサイザー。「ブロック」はさらに計47のモジュールからなり、各モジュールは理論的に使いやすいよう配置されています。それでは各構成ごとに見てみましょう。
ブロック①:メイン・コンソール
※写真下のブロックがメイン・コンソール
3VCO、2VCF、2VCA、2ENV、GENERATOR、2LFOなどで構成されるメインブロック。さらにリバーブ、フェイズ・シフターなどの音響装置の機能も備えており、本コンソールのみでも幅広いサウンド・メイクが可能となっています。
推奨される構成モジュール
702A(VCO-1)、702B(VCO-2)、702C(VCO-3)、708A(NOISE GENERATOR/RING MODULATOR)、703A(VCF-1)、703B(VCF-2)、704A(VCA-1)、704B(VCA-2)、711A(REVERBERATOR/PANNING/PHASE SHIFTER)、712A(MONITOR/VOLTAGE PROCESSION/EXT. CONTROLLER)、706A(LFO-1)、706B(LFO-2)、709A(SAMPLE & HOLD)、707A(AMPLIFIER/ENVELOPE FOLLOWER/INTEGRATOR)、705A(DUAL ENVELOPE GENERATOR)、716A(MIXER)、710A(MULTIPLE JACK)、etc..
ちなみに本メイン・コンソール+キーボードのシステムは「MAIN CONSOLE SYSTEM」と呼ばれ、ライブ・パフォーマンスでも使える可搬性の高い仕様となっています。このシステムでの価格は86万円(のちに95万円)でした。
ブロック②:キーボード・コントローラー
レギュラースケールの61鍵仕様。ピッチ・コントロールつまみ、ポルタメント・コントロールつまみ、レバー式ベンダー(バネ入り)を備えています。
モジュール名:701A(KEYBOARD CONTROLLER)
ブロック③:アナログ・シーケンサー
※写真上のブロックがアナログ・シーケンサー
3チャンネル・各12ステップ・時間設定可能のアナログ・シーケンサー。
モジュール名:717A(ANALOG SEQUENCER)
ブロック④:VCOバンク
推奨される構成モジュール
702D×3、702E×3、716A(MIXER)、710A(MULTIPLE JACK)、706B(LFO-2)、709B(SAMPLE & HOLD)、705A(DUAL ENVELOPE GENERATOR)
ブロック⑤:VCF/VCAバンク
推奨される構成モジュール
703C×2(VCF)、704C×3(VCA)、713A(GATE DELAY)、705A×2(DUAL ENVELOPE GENERATOR)、710A(MULTIPLE JACK)
ブロック⑥:インターフェイス/ミキサー
推奨される構成モジュール
714A(INTERFACE)、704C(VCA)、715A(MULTIMODE FILTERS)
ブロック⑦:2chフェイズ・シフター/2chオーディオ・ディレイ
推奨される構成モジュール
710B(MULTIPLE JACK)、723A(ANALOG SWITCH)、720B(2CH PHASE SHIFTER)、721A(2CH AUDIO DELAY)
まとめ的な
開発においては、当時のローランドさんの企業規模からすると非常に大きな投資だったらしく、楽器そのもののセールスよりも同社の技術力を世界的にアピールするために作られたそうです。結果として日本のNHKやイギリスのBBCなどの放送局、大学の研究室、映画の効果音などで使用され、ローランドの名声を高めることに貢献した形となりました。
最終的には一定の成功を収めたと言われているSYSTEM-700ですが、このような大型のモジュラー・シンセの後続機が発売されることはありませんでした。当時のエンジニアの「作りたい」という強い思いと、ブランド売り込みの見込みが立った上で製作された、“奇跡のタイミング”で発売されたモデルと言えるのかもしれません。
ただしSYSTEM-700の回路設計や使用部品はのちのJupiter-8、SH-101などでも生かされていたそうで、同社のシンセ設計における影響は少なからず与えていたという感じでしょうか。ちなみに純粋に “楽器”として使われたケースとしては冨田勲氏の作品(ex.アルバム『惑星』)などが知られ、音色も、一般的な普及機とは一線を画す高品位なものであり、MOOGとも異なる独特の質感だったそうです。
おまけ
フルセット価格は240万円(後に265万円)となっていて、これは当時の海外大型モジュラー・シンセに比べれば安価だったと言われています。ちなみに1976~77年頃の大卒初任給は10万円前後だったので、現在の貨幣価値に換算すると約500万円といったところでしょうか。。
なお浜松市の楽器博物館には本機もフルセットで展示されているので(→音は出ませんが)、実物を見たい方は足を運んでみてください。大きさ的にはいわゆるタンスには及びませんが、結構な威圧感に度肝を抜かれると思いますよ(笑)。これなら数百万だったというのも思わず納得です。
関連記事:「浜松市楽器博物館に行って来たった!(2017年4月某日) ~電子楽器コーナー編」
仕様
■ブロック1:メイン・コンソール
外形寸法:840(W)×560(H)×300(D)mm 重量:35kg
発売当時の価格:780,000円(のち価格改定により860,000円)
■ブロック2:キーボード・コントローラー
外形寸法:1070(W)×120(H)×250(D)mm 重量:11kg
発売当時の価格:80,000円(のちに90,000円)
■ブロック3:アナログ・シーケンサー
外形寸法:840(W)×350(H)×300(D)mm 重量:17kg
発売当時の価格:280,000円(のちに310,000円)
■ブロック4:VCOバンク
外形寸法:440(W)×560(H)×300(D)mm 重量:17kg
発売当時の価格:450,000円(のちに500,000円)
■ブロック5:VCF/VCAバンク
外形寸法:440(W)×560(H)×300(D)mm 重量:16kg
発売当時の価格:350,000円(のちに390,000円)
■ブロック6:インターフェイス/ミキサー
外形寸法:440(W)×350(H)×300(D)mm 重量:10kg
発売当時の価格:230,000円(のちに250,000円)
■ブロック7:2chフェイズ・シフター/2chオーディオ・ディレイ
外形寸法:440(W)×350(H)×300(D)mm 重量:10kg
発売当時の価格:230,000円(のちに250,000円)
■発売開始年:1976年