1970~80年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】
【Vol.190】Roland MC-500 ~ソフトウェアで機能が変わるMIDIシーケンサー否、コンピューター[1986年]
2018/11/25
今回は1986年にローランドから発売されたシーケンサー・「MicroComposer MC-500」についてお話してみたいと思います。以前本ブログでも記事にした同社のシーケンサー・MC-4の、次世代を担う形で登場したMIDIシーケンサーですね。MC-4と比較するとダウンサイジングが進み、本体には3.5インチ・フロッピーディスク・ドライブも確認できます。
なおMC-4とMC-500の間には「MC-202」なる機種も発売されていたのですが、これはやや性格が異なる感じですね。ローランドのMCシリーズは本記事末尾にまとめてリンクを貼っておきましたので、興味があれば読んでみてください。
MC-500概要
MC-500は本体内にいわゆるROMを持たず、付属のソフト(フロッピー・ディスク)によってシステムを起動するという設計のハード・シーケンサー。本機の特徴的なポイントが、ソフトによって動きが変わるという点。別売りの様々なディスク(→後述します)によって、それぞれのディスク・ソフトに規定された機能を発揮するといった感じです。
ローランドでは本機を「ソフトの交換により進化するミュージック・コンピュータ」と位置付けており、単なるMC-4からの後継モデルではなく、MIDIシーケンサーの拡張性を提示したコンセプト・マシンと言えるでしょう。
MC-500仕様
本体にはいわゆるシステム・ディスクが付属しており、このソフトを起動することにより主にリアルタイム・レコーディングとして使用できるシーケンサーとして機能します(→逆にシステムをロードしなければ全く使用できない)
システム・ディスクには、レコーダー・ソフトの他、バックアップや編集のためのユーティリティ・ソフトも含まれています。とりあえず一通りの操作はこのシステム・ディスクのみでできるといった感じですね。以下、その付属システム・ディスクの機能で行えるMC-500の内容を簡単に記してみましょう。
数字的スペック
分解能は384分音符まで。メモリー容量は、本体内で約25,000ノート、最大8曲、1曲最大999小節。またフロッピー・ディスクだと約100,000ノート、100曲まで記憶が可能となっています。
リズム・トラックに関しては最大発音数32音、8段階のダイナミクス(強弱)情報を入力可。これらの数字だけでも当時としてはかなり優秀なスペックだったと言えると思います。演奏表現上の制約はほとんどなかったのではないでしょうか。
データ入力について
キーボードを演奏してリアルタイムで入力するのが基本ですが、ステップ入力やパンチイン/アウトにも対応しています。
リアルタイム・レコーディングの場合は、PLAYボタンを押すと、8カウントの後に録音が始まります。ステップ入力では、音符、キー・ナンバー、ダイナミクス、ゲート・タイムの順番に1音ずつ入力するといった感じですね。もちろんリアルタイム・レコーディングしたデータを、あとからトラックごとステップ入力でデータを追加(変更)することも可能です。
操作性について
テープレコーダー感覚の操作ボタン、独立したテンキー、α(アルファ)ダイヤル、バックライト付のディスプレイ(20文字×4行)と、シーケンサーのハード的な基本装備が一通り整ってるといった趣き。ボタンは大きく押し込みも深く、当時のパソコンのキーボードをお手本にしたかのようなデザインとなっています。
MC-500/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用
供給されたその他のソフトたち(オプション)
冒頭で述べたように、MC-500はロードするシステムによって動きが変わってきます。以下どのようなソフトがあったのかを列挙してみたいと思います。なお各ソフトの価格は10,000~15,000円くらいだったと記憶しています。
MRB-500 "BULK LIBRARIAN"
MC-500を使って、各種MIDI機器のバルク・データの保存、送信などを可能にするシステム・ソフト。他社のエクスクルーシブ・データにも対応していたため、さまざまな音色データやシーケンス・データをMC-500で集中管理することが可能になるというもの。
MRC-500
MC-500を起動するための基本ソフト。本体付属のソフトが確かこれだったと思われる。
MRD-500 "RHYTHM BANK"
MRC-500のリズム・パターンとリズム・トラックを使ったリズム・データ集。様々なパターンを約800種類収めている。
MRM-500 "STANDARD MIDI FILE CONVERTER"
ローランドMCシリーズのソング・ファイルと、MIDIファイルとをコンバートするためのもの。これによりMCシリーズとPC用シーケンス・ソフトなどの間でソング・データのやりとりができる。
MRP-500 "PERFORMANCE PACKAGE"
MC-500で作成した演奏データを、ステージなどで速やかに演奏できるように編集するためのパッケージ・ソフト。連続演奏させる曲の順序や曲間の待ち時間を設定したりといったことが行える。
つぶやき的な
本体起動にシステム・ディスクが必要なところとか、オプションのディスクとかもいちいち入れ替えて読み込ませなければいけないところとかは、いかにも当時の(FDD内蔵型の)パソコンに則った感じの仕様ですね。全体的な性能としては悪くなく、のちにMC-300やMC-50など後続機もリリースされたことから、商業的にもそこそこヒットしたのだと思います。
このような外部メディアの入れ替え(読み込ませ)作業は、今だとしち面倒臭いことこの上ないのですが、当時は意外と「楽しくやっていた」記憶があります。何というかマシンを育ててあげてるという親心的な感情だったのでしょうか(笑)
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仕様
■メモリー容量:本体約25,000音、ディスク約100,000音
■レコード・トラック:演奏トラック×4 + リズムトラック、テンポトラック
■ディスプレイ:20文字×4行
■外形寸法:305(W)×91(H)×285(D)mm
■重量:3.5kg
■発売当時の価格:155,000円
■発売開始年:1986年