アコースティックピアノに最も近い電子ピアノは?
2018/11/23
今回はアコースティックピアノ(以下 "生ピアノ")と電子ピアノの違いについてのお話です。僕が先生だとして、こんなお便りを頂いたと仮定してみましょう。面倒くさい設定ですみません。。
「趣味で始めたくてピアノの購入を考えています。予算的・防音的な理由から10万円前後の電子ピアノに落ち着きそうです。一応カタログも各メーカー揃えました。
YAMAHAの●●というモデルがよさそうなんだけど、KAWAIの★★も悪くなさそう。CASIOの▲▲もデザインがおしゃれでよさげなのだけど。。どれを選ぶのが一番よいのでしょうか?」
みたいな。
10万円といえば、全くその楽器を始めたことがない人にとっては非常に大きな買い物ですよね! 購入にあたり慎重になるお気持ちは察します。
結局、「生ピアノに最も近い」電子ピアノはどれか?
こういった視点の論争?は昔からあって、某ネットの知恵袋な掲示板とかでは様々なアドバイスが寄せられていますね。
でもって僕個人の回答を先に言ってしまうと、10万円前後の電子ピアノと生ピアノでは根本的な違いがあり過ぎて、どの電子ピアノメーカーのどの機種でもそんなに大差ないというのが正直なところ。。「電子ピアノと生ピアノは全く違う楽器」と考えても極端ではないと思います。
何がそんなに違うの?
違いはやはりタッチと音です。タッチに関しては、生ピアノの鍵盤がハンマーを起こし弦を叩いている感覚は、電子ピアノでは中々再現できないものがあります。生ピアノは打鍵すると指にまでその振動が伝わってきます。
音に関しては、電子ピアノだとスピーカー(もしくはヘッドフォン)からの出力になってしまうので、箱全体で共鳴してしてくる生ピアノとは構造が全く異なります。また、弦をハンマーで叩いた時、叩いていない弦も共鳴(共振)することがあり、それにより響きをより複雑にしています。
カタログ上では、「コンサートで使われる高級グランドピアノの音色波形を贅沢にサンプリング!」、「コンサートグランドのタッチに迫る、本格ハンマーアクションを搭載!」などと華麗な言葉が並べられていますが、10万円前後の家庭用電子ピアノが生ピアノの壁を越えるにはまだまだ時間がかかるでしょう。
もちろん価格によって、“高品位な音”など違いはありますが、あくまで電子ピアノというカテゴリー内での差としてとらえた方がいいかもしれません。
ただし・・・
ただしこれはあくまで「生ピアノの代用品として電子ピアノを選ぶ」という観点です。電子ピアノは電子ピアノで、生ピアノにはない音色的なメリットも少なからずあります。プロのスタジオ録音とかでは、ある曲ではスタインウェイのフル・コンサート・グランドで録音して、別の曲ではあえてシンセ系ピアノ(例:KORG M1系)を選ぶこともあります。
関連記事:「KORG M1 ~【前編】世界中で記録的大ヒットしたワークステーションタイプ・シンセサイザー[1988年]」
電子ピアノのカタログの文字だけで悩んでいる人は、とりあえず楽器屋に行って、実物を見て、実際に触って、店員さんにも相談して決めてみることをお勧めします。せっかくの高い買い物なのだから、自分にぴったり合う一台が見つかるといいですね。
補足的な
なおタッチに関しては、本当にリアルな機構を備え、生ピアノと比べても全く遜色ない電子ピアノもあります。今回みたいに「10万円前後の比較的リーズナブルな電子ピアノ」と限定しなければ、タッチに関しては本当に素晴らしいものが見つかるかもしれません(お値段は多少張りますが)
余談ですが、“鍵盤を通じて指にも振動が伝わってくる”という疑似生ピアノ感を得るために、あえて古めの「スピーカー内蔵」ピアノ鍵盤(例:YAMAHA CP300【※2006年発売】)をライブで使用しているプロ・ミュージシャンもいますね。最大ボリュームでスピーカーを鳴らした時に “ビリビリ感”が指に伝わってくるみたいですよ(家庭でそれを行うのは難しいかもですが。。)