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1990年代'' YAMAHA 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.382】YAMAHA VL1 ~【後半】新開発のバーチャル・アコースティック・シンセ[1993年]

2018/07/01

 前回の記事「YAMAHA VL1 ~【前半】世界初のVA音源を搭載した新世代シンセサイザー[1993年]」に引き続き、今回もYAMAHA VL1について記事を展開してみたいと思います。前回言及しなかった本機の音源構成(およびモディファイア)を中心に書いてみましょう。

 

YAMAHA VL1

 

 

VL1の音源構成

 VL1の音源構造は2つのエレメントから成っています。以下は本機におけるVA音源の概念を簡単に記したもの。
 

※参考文献・ヤマハ(株)VL1 Version1 取扱説明書
 
 
 
 VL1はこれらのエレメントを使って、キー・モードを「モノ・モード」「ポリ・モード」「ユニゾン・モード」から選択することができます。
 
 
 またボイス・モードは「シングル・モード」「デュアル・モード」から設定可能。上記モードの組み合わせにより、任意の音色をより分厚くさせたり、あるいは全く異なる音色(例:バイオリン+サックス)を同時に発音させることもできます。
 
 
 

モディファイアとは?

 ドライバーおよびパイプ/ストリングから出力された音声信号は、上図のように「モディファイア」に入っていきます。このモディファイアというセクションにより更に楽器らしい特性を加えて、エレメントの出力としてエフェクトに送り出します。
 

※参考文献・ヤマハ(株)VL1 Version1 取扱説明書
 
 
 
 モディファイアは、上図のように音を加工するための5つのブロックを直接につないだような構造になっていて、様々な倍音の加工に使われます。要するに音色エディットですね。各ブロックは簡単に言うと以下のようになります。
 

・ハーモニックエンハンサー:倍音を増やす装置
・ダイナミックフィルター :倍音を削る装置
・イコライザー      :倍音を整える装置
・インパルスエキスパンダー:金属質の響きを付ける装置
・レゾネーター      :木質の響きを付ける装置

どれも重要なのですが、音色作りに特に重要な上2つを補足してみましょう。
 
 
ハーモニックエンハンサー …ドライバーおよびパイプ/ストリングから送られた信号のうち、任意の2つを選んで合成し、人工的に倍音成分を増加させるもの。なおここでは、「キャリア」(→基となる信号)、「モジュレーター」(→キャリアの信号を変調させる)といったFM音源でよく出てくる概念が登場します。
 
 
ダイナミックフィルター …入ってきた音の任意の周波数の帯域をカットするもの。いわゆるシンセのフィルターに当たる部分ですね。本機ではローパス、バンドパス、ハイパス、バンドエリミネートの4種類の中から選択できます。

 

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内蔵エフェクトについて

 各エレメントから入ってきた音は、エフェクト・セクションにより各種効果を加えられ、最終的にアウトプットに向かいます。VL1には以下3種が直列に並んでいます。

・モジュレーションエフェクト
・フィードバックディレイ
・リバーブレーション

 
 モジュレーション(フランジャー、ピッチチェンジ、ディストーション)で揺らした音を、必要に応じてディレイを通し、最終的にリバーブレーション(リバーブ)にて残響を整えるといった感じですね。特に本機のリバーブは各ボイスとの相性は非常によいと思います。
 
 
 

別売りライブラリーについて

 VL1はその音源の性格上、基本となる音色の劇的なエディットはできませんでしたが、オプションのボイス・データ・ディスク「VLDシリーズ」として音色を追加することができました。確かVLD01~07までリリースされたと記憶しています。
 
 これら音色ライブラリーは、ラック版のVL1-mや後継機のVL7でも使用することができました。
 
 
 

まとめ

 楽曲内で一般にリード(ソロ)を演奏する楽器といえば、例えばサックスだったりエレキギターだったり、あるいはminimoogに代表されるアナログシンセだったりするですが、そこに来て本機VL1にて新たな選択肢が加えられた(かも)ということで当時は大いに注目されました。
 
 
 現代のシンセはリアルな音色が山のように入っていて、音作りなどをしなくても “即使える”ということでそのまま鳴らしている人も多いかと思います。本機が発売された当時(1993年)においても既に、そのような “シンセは内蔵の音をそのまま鳴らす”という風潮となりつつあり、それに対する問題提起?として当時の市場に一定の影響力は与えたのかな、という印象ですね。
 

YAMAHA VL1(advertisement)
VL1/ヤマハ(株) 雑誌広告より画像引用
 
 
 

個人的かんそう

 個人的にはあまり触る機会のなかった本機ですが、「尺八」の音色は非常に面白かったことを記憶しています。まあ尺八やサックスに限らず、本機を “ちゃんと鳴らす”にはそれなりに熟達していなければならなかったわけで、これを独立した楽器として徹底的に使いこなせる「VL1奏者」みたいな肩書の人も少なからず存在していたのではと思ったりします(笑)。CDクレジットに「Piano/Synthesizer/VL1:●●」(●●はアーティスト名)とか。。
 
 
 さてキーボーディストがVL1をどう使うか?については、やはりバンド内のソロ用途(リード音色)というのが王道でしょう。使いこなしには習熟が必要ですが、物理モデル音源ならではのリアルで存在感のある音は、他のPCMシンセでは代用の利かない唯一無二の表現力だと思います。
 
 
 
 関連記事(見ようによっては類似機種):
 「KORG Prophecy ~コントローラーが全てアサイナブルなモノ・シンセ[1995年]
 

仕様(Version1)
■鍵盤:49鍵(イニシャル/アフタータッチ対応)
■最大同時発音数:2音
■演奏モード:モノ、ポリ、ユニゾン
■音源:S/VA方式
■プリセット音色数:128インターナルボイス(16ボイス×8バンド)
■モディファイア:ハーモニクス・エンハンサー、インパルス・エキスパンダー、レゾネーター、5バンド・イコライザー、ダイナミック・フィルター
■エフェクト:モジュレーション・エフェクト(フランジャー、ピッチ・チェンジ、ディストーション、フィードバック・ディレイ、リバーブ)
■メモリー:3.5インチFDD(2HD/2DD)
■外形寸法:914(W)×105(H)×380(D)mm
■重量:12.5kg
■発売当時の価格:470,000円(税別)
■発売開始年:1993年

 

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