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1990年代' Roland 楽器・機材【Vol.〇〇】

【Vol.107】Roland D-70 ~「DLM」機能を搭載した76鍵ライブ・キーボード[1990年]

2018/11/25

 

 

 今回はローランドの「D-70」というシンセサイザーを取り上げてみたいと思います。発売されたのは1990年初頭で、同社の「Dシリーズ」としては最後のモデルとなっています。90年代の幕開け直後にリリースされたこのD-70、ちょっと色々書いてみましょう。

 

Roland D-70
 
 
 

D-70の概要

 名機D-50の後継機という位置付けになっており、鍵盤数は当時珍しかった76鍵。ベロシティはもちろんアフタータッチも対応しており、マスターキーボードとしての機能を高めた「ライブ向けキーボード」といえるでしょう。後述する音源部はD-50とも若干異なる構成で、新たな音作りの可能性も提示しています。
 

Roland D-70(advertisement)
D-70/ローランド(株) 雑誌広告より画像引用

 
 
 

音源部について

 D-50(LA音源)をさらに発展させたという音源方式・「Advanced LA音源」を採用しています。ただし、D-50のカタログやスペック表でよく目にした「パーシャル」、「ストラクチャー」といったキーワードは消えています。
 
 
 実際は、同社の「Uシリーズ」で採用されていたRS-PCM方式によるウェーブ・データ(サンプリング素材)を元に、フィルターで加工していくといったスタイルです。これにより、これまでのデジタル・シンセでは出せなかった音も創造可能、という触れ込みでした。
 
 
 つまりLA音源とは根本からしてちょっと違うのですね。。当時はよく分からなかったけど、LAシンセシス(Linear Artithmetic・線形演算)はあくまで考え方のベースとしたと捉えると割としっくりきます。ローランドは「スーパーLAシンセサイザー」と、LAの上位機種的なニュアンスを押し出していましたが。。
 
 
 なおこのサンプリング素材(PCM音源片)は、U-20用のRS-PCMカードを使ってPCM波形の追加が可能であり、D-70専用ライブラリー・カードでも供給されました。
 
 
 

新機能「DLM(Diggerential Loop Modulation)」について

 DLMはスーパーLAの中枢であり、「一つのPCMウェーブ・データの中から波形の一部を自由に切り取り、それをループさせる」というものです。このDLMによって全く新しい波形を作り出すことができ、さらに、強力なデジタル・フィルターで好みの音に加工できるというものでした。
 
 
 

コントローラー方面

リアルタイム・コントロール用スライダー(×4)を搭載

 レベル、パン、チューニング、カットオフ、レゾナンス、アタックタイム、リリースタイムの7種を任意に割り当て可能。プレイ中の音色変化をフレキシブルに行えます。
 
 

「C1スライダー」と「ブライトネス・スライダー」を搭載

 C1スライダーにはTVF、TVA、LFO、ポルタメント・タイムなどのパラメーターを自由にアサイン可能です。当時、PCM系のシンセでポルタメントに対応しているというのは珍しかったですね。ブライトネス・スライダーでは音の明るさを調節できます(→本体パラメーター内でのカットオフよりもゆるやかな変化)。
 
  外部4チャンネルの外部音源をコントロール可能。スプリットもでき、MIDIマスター・キーボードとしても使えます。

 

 

 

まとめ的な

 単なるD-50の76鍵版かと思いきや、実は中身は全くの別物といった感じですね。音源部は端的に言えば「U-20+デジタル・フィルター」と言えなくもないです。
 
 
 大容量PCM音源+デジタル・フィルターで一世を風靡した「KORG M1」(1988年)を意識しつつ、D-70は単なるPCM再生機(プレイバック・サンプラー)にとどまらない「DLM」によって、新たな個性を提示しようとしたのかもしれません。
 
 
 
 関連記事(ローランドDシリーズ):
 「Roland D-10 ~名機D-50譲りのLA音源搭載シンセ[1988年]
 「Roland D-110 ~D-10のラック版(1U音源モジュール)[1988年]
 「Roland D-20 ~オールインワン・シンセのはしりとなった、シーケンサー内蔵…
 
 
 

個人的かんそう

 個人的な本機の印象は、「軽くてちゃんとした音の出る76鍵」といったところでしょうか。ライブ大好きだった僕としては、“演奏性の高い76鍵”というだけで便利に使わせてもらいました(→買いはしなかったが、勤めていた楽器店からよく借りてスタジオ等で使用した)。
 
 
 本機のあとには、(概ね発展型という感じで)JV-80が続きますが、D-70の “軽くてきらびやかな音色群”は若干影を潜めましたね。Dシリーズのキラキラ系パッドは、今でもたまに欲しくなります。
 
 
 関連記事:「Roland JV-80 ~エキパン「SR-JV80シリーズ」搭載可能の初シンセ
 

仕様
■鍵盤:76鍵(ベロシティ、アフタータッチ対応)
■音源方式:アドバンストLA方式
■最大同時発音数:30音
■内蔵音色:114オリジナル・トーン
■インターナル・メモリー:トーン128、パッチ128、パフォーマンス64、ユーザー・セット10グループ(50パフォーマンス)、リズム・セットアップ1
■内蔵エフェクト:リバーブ(ルーム 1/2/3、ホール 1/2)、ゲート、ディレイ1/2、クロス・ディレイ、ショート・ディレイ、コーラス 1/2、フィードバック・コーラス、フランジャー
■ディスプレイ:260×64ドットLCD
■外形寸法:1196(W)×85(H)×310(D)mm
■重量:12.5kg
■発売当時の価格:250,000円
■発売年:1990年

 

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